• 弦ごとに独立した出力チャネルを持つ (1弦=1ch,..., 6弦=6ch)
• 弦ごとに独立したベロシティを出力
• ブリッジ付近にある消音センサで鳴っている全弦のNote Offを出力(Note OffはVelocity = 0のNote Onメッセージを使用)
• 次の弾弦か弦スイッチや消音センサに触れないとNote Offが発行されない
• 指板上の弦スイッチを押すとVelocity = 16のNote Onを発行される.そ のときすでに弾弦中であれば先にその音を消音するためのNote Offが発行 される(今回は,歌唱中であれば指板上の弦スイッチを押したときのNote Offによる消音は行うが,Note Onは全く用いないので除去する).
• Note On/Offイベントの出力と同時にそれらのイベントがエクスクルーシ
ブイベントととしても出力される.
• カッティング奏法などによって短時間に大量のMIDIイベントを出力する と,イベントの出力順序が入れ替わることがある.
なおYAMAHAから過去市販されていたEZ-EG [100] とはトレモロアームの有
無,弦の共振の再現の有無などの点で違いがある.EZ-EGでは共振を再現した弾 弦情報が出力されるが,本システムではそれらを除去する処理は行っていないた
めEZ-EGには対応していない.
1. 課題メロディの単音入力(テンポ自由)
2. 課題メロディの単音入力(オルタネイトピッキングでテンポ自由)
3. 課題メロディの単音入力(BPM=120)
4. 被験者が用意したフレーズのパワーコード入力(テンポ自由)
単音入力時の課題メロディは,作曲は負荷が高く,また新たに曲を覚えるのは 負荷があるため,被験者にとって既知と思われる童謡「赤とんぼ」とした.パワー コード入力に用いたフレーズは,被験者が用意したLUNA SEA「ROSIER」の中 の冒頭などで聴くことのできる8小節程度のものである.
被験者は,主にビジュアル系ロックやUKロックを嗜好するギター上級者1名で ある.システムが本来想定している歌唱やリズムをとることはできるが,十分な ギター演奏はできない人である.しかし,ギターは自由度の高い楽器であり,弦 のマッピングなどシステム設計に無理がないかを調べ,また上級者ならではの工 夫やコツなどの点からアドバイスを得るため,ギター上級者に評価を依頼した.
Dell:Lattitude XTノートPC上でシステムを稼働し,MIDIインタフェイスを 介して接続したEZ-AGから弾弦情報を,マイク(バッファローコクヨサプライ:
USBヘッドセットマイクBMHUN01SVA)から歌唱を取得した.
実験前にEZ-AG自体の試奏時間を設けた.当初弾弦について弾きづらいとの意
見を得たが,しばらく後,慣れてきたとのことであったのでEZ-AGのインタフェ イス自体が実験に影響を及ぼすことはなかったと思われる.
評価はアンケートによって使用感などを訊いて行った.各条件に共通するアン ケートの項目を以下に示す.
(a) 精神的負荷について
(7 段階:非常に低い-低い-どちらかというと低い-普通- どちらかというと高い-高い-非常に高い)
(b) リズム通りに弾弦できたと思うかについて (6 段階:非常に思う-思う-どちらかというと思う- どちらかというと思わない-思わない-全く思わない)
(c) 歌唱について
(7段階:非常に歌いやすい-歌いやすい-どちらかというと歌いやすい-普通 - どちらかというと歌いづらい-歌いづらい-非常に歌いづらい)
(d) 意見や感想の自由記述
またパワーコード入力については,吟たぁの出力であるルート音に6弦の,5度 上の音に5弦の弾弦情報を用いて生成したフレーズ(最初のフレーズ)とルート音,
5度上の音とも6弦の弾弦情報を用いて著者が手動生成したフレーズ(後のフレー ズ)をブラインド試聴によって比較させ,以下の評価を行った.試聴に用いた音色 はDistortion Guitarである.
(e) 気に入った方を選択およびその理由を自由記述(2択:最初のフレーズ,後の フレーズ)
そして実験の最後に以下の2項目について自由に記述させた.
(f) 使用してみて満足な点 (g) 使用してみて不満な点
A.4.2 実験結果および考察
結果および考察について実験条件ごとに述べてゆく.
1. 課題メロディの単音入力(テンポ自由)
(a) 負荷は[非常に低い]
(b) リズム通りに弾弦できたと[思う]
(c) [非常に歌いやすい]
(d) 「鍵盤を使ったときよりもスイッチ的感覚がなかった.」2
被験者自身に合ったテンポであり,また普段から弾弦には慣れている部分も あるのか,歌唱と弾弦を同時に行っても余裕があると思われる.
2. 課題メロディの単音入力(オルタネイトピッキングでテンポ自由)
(a) 負荷は[どちらかというと低い]
2被験者はタップ併用型Voice-to-MIDIシステムを使用して「赤とんぼ」を歌唱したことがあり,
弾弦という動作をタップの代わりに音符を区切る手段として捉えている.
(b) リズム通りに弾弦できたと[非常に思う] (c) [歌いやすい]
(d) 「どこをアップにするか考えてしまうときがある→精神的負荷となる.」 オルタネイトピッキング(ダウンピッキングだけでなくアップピッキングも 用いる奏法)による弾弦では,設問(a)の結果より,条件「課題メロディの 単音入力」と比べて負荷が上がっている.この理由については設問(d)で述 べられている通りであるが,更に被験者は「ダウンピッキングは表拍,アッ プピッキングは裏拍のように決めている」と回答している.よってメロディ のような音価がばらつきやすいフレーズの場合,ギタリストにとっては多少 混乱を起こすことがあると考えられる.
3. 課題メロディの単音入力(BPM=120) (a) 負荷は[非常に低い]
(b) リズム通りに弾弦できたと[非常に思う]
(c) [歌いやすい] (d) 特になし
メトロノームに合わせて入力したが,テンポが速くなっても条件「課題メロ ディの単音入力」と比べて大きく悪くなることはなく,設問(b)ではよりよ い評価を得た.ただし更にテンポが速くなるか,短い音価のフレーズでは負 荷が増すことが考えられるため,アンケート結果は変わると思われる.
4. 被験者が用意したフレーズのパワーコード入力(テンポ自由)
(a) 負荷は[非常に低い]
(b) リズム通りに弾弦できたと[非常に思う]
(c) [非常に歌いやすい]
(d) 「入力できたのかちょっと不安である」
(e) 気に入ったのは[最初のフレーズ] 理由: 「雰囲気が入力しようと していたものに近かったから.」
テンポは原曲より遅めで入力され,フレーズに細かなノートが少なかったこ ともあり,条件「課題メロディの単音入力」と同じように良好な評価を得た.
しかし入力できたのか不安を感じている.その理由を尋ねたところ,「口ずさ んだフレーズの調が正しかったか,不安だったから」とのことであった.こ れは直接的に「吟たぁ」の仕様などが影響したものではないと考えられる.
しかしこのような不安を解消するために伴奏,CDなどに合わせて弾くこと はありうる.この点については,スロートマイクを使用するか伴奏をヘッド ホンで聴くことで解決しうると思われる.
被験者は,気に入ったのは吟たぁの出力したフレーズであると回答した.タイ ミングとベロシティが独立していることがフレーズに表情を与え,また聴感 上でも知覚できたと思われる.また,音の区切りの入力をギターインタフェ イスに変えた結果,出力されたMIDIシーケンスデータにその楽器らしさが 反映できたと思われる.
最後に全体的なシステムへの意見や感想について示す(原文のまま記載).
• (f) 使用してみて満足な点
「速い旋律の入力にアップピッキングが使えるのは良い.」
実験条件「課題メロディの単音入力(BPM=120)」において,アップピッキ ングも用いることに若干の負荷を感じているが,同時に利点でもあると考え ていると察せられる.ギターにそれほどなじみがない人は,拍の表裏を気に しないと思われるためアップピッキングの使用についての評価は異なる可能 性がある.
• (g) 使用してみて不満な点
「左手を動かしたくなるときがある.パワーコード入力はベースラインを口 ずさんでもらうのを限定した方がよいかも.」
実は,被験者はルート音ではなく5度上にあたる音を歌唱していた.著者 は必ずルート音の歌唱であると仮定していたが,選択できるような仕組みが 必要であろう.
全体として,おおむね良好な評価を得たと言える.また,ギター上級者ならで は意見やアドバイスも得ることもできた.