8.1 実験概要
センサを取り付けた筆記具と7章で改良した提示部を評価したいと考え、評価 実験を行った。
今回は新しく提案した提示手法を用いて、ユーザは相手が学習している雰囲気 を感じられるか、また、ユーザ同士一緒に学習しているような感覚が得られるか の調査を目的とした。被験者は日本語を母国語をしている情報系の大学生・大学 院生4名である。被験者には2人ずつペアになってもらい、2組で実験を行った。
遠隔地のユーザ同士の利用を想定しているため、被験者2名にはそれぞれ離れた 位置に座ってもらい、お互いの学習内容は見えないようにした。LEDの提示の仕 組みについては事前に説明を行い、動作確認を兼ねて実験前にひらがな46文字を なぞってもらった。実験タスクとしては数学の簡単な計算問題と、短めの読解問 題を解いてもらった(図8.1)。実験終了後はアンケートに答えてもらった。
図 8.1: 利用した問題
実際の実験の様子を図8.2に示す。被験者Aが筆記用具を持つと被験者B側の LEDが青く光り、筆記を行うと緑色になる。手を止めると赤色に代わり、筆記具 を置くと光は消えるといったように、被験者Aの筆記具の状況に応じて、被験者 B側へ光の提示が行われる。被験者Bの筆記具の動作から被験者A側への光の提 示についても同様である。
図 8.2: 実験の様子
8.2 実験結果
実験後に行ったアンケートでは、「相手が筆記を行っている雰囲気を感じられた か」、「相手が学習を行っている雰囲気を感じられたか」、「相手と一緒に学習して いる感覚を感じられたか」の3つの問いに対し、「a. 感じられた」、「b. やや感じ られた」、「c. あまり感じられなかった」、「d. 感じられなかった」の4段階から選 択してもらった。問1の「相手が筆記を行っている雰囲気を感じられたか」につ いては、「a. 感じられた」と回答した人が2名、「b. やや感じられた」と回答した 人が2名であった。問2の「相手が学習を行っている雰囲気を感じられたか」につ いては、「a. 感じられた」と回答した人はおらず、「b. やや感じられた」と回答し た人が3名、「c. あまり感じられなかった」と回答した人が1名であった。問3の
「相手と一緒に学習している感覚を感じられたか」については、「a. 感じられた」
と回答した人が1名、「b. やや感じられた」と回答した人が2名、「c. あまり感じ られなかった」と回答した人が1名という結果であった。以上の結果をまとめた ものを図8.3に示す。
図 8.3: アンケート結果
また、提示方法全体に関して、気がついた点や気になった点を自由記述形式で コメントしてもらった。頂いたコメントは次の通りである。
提示方法に関するコメント
• 一緒に学習している雰囲気が感じられた。
• 色で相手の状況を表すのはわかりやすかった。
• 集中したい時にはやや邪魔に感じるかもしれない。
• LEDを見たのは主に手を動かしていない時だったので、筆記中でも伝わる もっとさりげない方法だと良いと思う。
筆記時間のゲージに関するコメント
• ゲージで競争心を煽られた。意欲が向上しそう。
• 筆記時間のゲージは、自分のものとの関係がわかる方が良いと思う。
• 相手の進捗と自分の進捗を比較できると良いと思う。
8.3 実験の考察
アンケートの結果から、「相手が筆記を行っている雰囲気が感じられたか」につ いては全員からポジティブな回答が得られた。また、「相手が学習を行っている雰 囲気を感じられたか」、「相手と一緒に学習している感覚を感じられたか」に関し てもやや感じられたという回答が多いという結果であった。このアンケート結果 から、LEDによる情報提示は学習している雰囲気を共有するのに比較的有効であ ると考えられる。しかし、提示手法自体は好意的に受け入れられていたが、邪魔 に感じるかもしれない、もっとさりげない方法が良いというコメントがあったこ とから、学習の妨げにならないような検討が必要である。また、コメントには無 かったが、LEDが光る様子を見て「眩しい」と言った被験者がいたため、もう少 し優しい光にて提示を行った方が良いかもしれない。学習時間ゲージに対するコ メントからは、お互いの学習進捗状況の共有は、競争心を生んだり、学習意欲を 向上させたりする可能性があると考えられる。