第 3 章 概念設計法 15
3.5 設計ツールの妥当性検証
ここではコンコルド模擬形状およびオリンパス593模擬モデルを作成し,シミュレーション結果および実 機データと比較することで,各種評価ツールおよびモデルの妥当性を検証する.
3.5.1 空力性能評価ツールの妥当性
比較対象データはナセル無しのコンコルド模擬形状に対してEuler解析により圧力抵抗を,DATCOMに より粘性抵抗を評価を行なっている.[45] 図3.11に本評価ツールで使用したコンコルド模擬形状を示す.主 翼はダブルデルタ翼でオージー翼を近似した.式3.14に本評価で着目した抵抗係数の式を示す.表3.3には 圧力抵抗,表3.4には粘性抵抗の比較結果を示す.CL0について差が16%であったが,これは主翼ワープ形 状を厳密に一致させていないことから生じる誤差であると考えられる.Kについては差が3%で あったが,
これは主翼平面型がよく近似できているためであると考えられる.結果として,最大16%以下の差で評価 が行われたことが分かる.
CD=K(CL−CL0)2+ ∆CDi+CDw+CDf (3.14)
Where:
K : 誘導抵抗係数
CL0 : WARP効果にCL方向のずれ
∆CDi : WARP効果にCD方向のずれ CDw : 造波抵抗係数
CDf : 摩擦抵抗係数
図3.11 PANAIRで使用したコンコルド模擬形状
表3.3 空力性能評価ツールの検証,圧力抵抗について
Ref[45] NAL-CFD PANAIR 差
M ach 2.0 2.0
-K 0.5276 0.5095 3%
CL0 0.01959 0.01654 16%
∆CDi+CDw 0.00564 0.00524 7%
表3.4 空力性能評価ツールの検証,粘性抵抗について
Ref[45] DATCOM FRICT 差
Mach 2.0 2.0
-Altitude 50kft 50kft
-CDf fuselage 0.00157 0.00163 4%
CDf wing 0.00300 0.00286 5%
CDf tail 0.00031 0.00035 13%
3.5.2 エンジン性能評価ツールの妥当性
比較対象データはオリンパス593エンジンの文献値である.[46]本評価ではエンジンの主なパラメータを 文献値と一致させてサイクル計算を行い,その結果を表3.5に示す.エンジン長については44% と大きな差
表3.5 エンジン性能評価ツールの検証
Ref[46] GasTurb 差
Mach M 0 0
-Altitude ft 0 0
-mdot lb/s 410 410
-TIT R 2640 2640
-OPR - 15.5 15.5
-Length in 138.2 198.9 44%
Diameter in 47.9 49.3 3%
FN (dry) lb 31350 34153 9%
SFC (dry) /hr 0.70 0.82 17%
Vj ft/s - 1909
3.5.3 環境性能評価モデルの妥当性
ソニックブーム評価モデルの妥当性
比較対象データはコンコルドの実機による波形データである.[5]そのときの飛行条件はMach2.0/50kft
/CL = 0.10で,コンコルドの全長は212ft/最大離陸重量は400klbである.図3.13にソニックブーム波形 を,表3.6にソニックブームの先端圧力上昇量の比較結果を示す.ナセルの無いコンコルド模擬形状ではソ ニックブームがN型波形にはならなかったが,ナセルの代わりに等価衝撃波を有する軸対称物体を使用した 形状からはN型の波形が得られていることが分かる.コンコルドの波形データと比較して,最大で13% の 差が生じることが確認された.
(a) ナセル無 (b)ナセル有
図3.12 表面圧力分布の比較
(a) Ref[5] (b) First Cut法
(c) PANAIR+Thomasナセル無 (d) PANAIR+Thomasナセル有
図3.13 ソニックブーム波形の比較
表3.6 ソニックブーム評価モデルの検証
∆P 差
psf
-Ref[5] 2.00
-First Cut 2.26 13%
PANAIR+Thomas ナセル無 - -PANAIR+Thomas ナセル有 2.17 9%
空港側方騒音値評価モデルの妥当性
比較対象データはオリンパス593エンジンの文献値である.本検証では文献値の排気速度を評価モデルに 代入し,その結果を比較する.表3.7に示されるように差は1%程度であることが分かる.
表3.7 空港側方騒音値評価モデルの検証
Ref[13] Ref[47] 評価モデル 差
Vj (wet) ft/s 2952 - -
-Sideline Noise EPNdB - 119 120.1 1%
NOx排出量評価モデルの妥当性
比較対象データはコンコルド実機から観測された排気データである.本検証ではオリンパス593エンジン の模擬モデルを使用しその飛行条件でのオフデザインを行い,得られた状態変数の値を評価モデル(式3.11) に代入した.表3.8に比較結果示す.この結果からエンジン内部の状態変数について,P3で1% ,T3で3%の 差であり,エンジンサイクルを良く模擬できていることが分かる.排気データについてはその平均と比較 すると5%の差が生じることが分かる.
表3.8 NOx排出量評価モデルの検証
Ref[48] Ref[49] Ref[10] 評価モデル 差
MACH - 2.00
Cruise
1.97 2.00
-ALT ft 54000 52800 54000
-SFC 1.25 - - 1.23
-p3 psia - 142 - 140 1%
T3 R - 1512 - 1556 3%
T4 R - - - 2463
-EINOx g/kg - - 19.9-27.1 22.2 5%
3.5.4 妥当性検証のまとめ
コンコルドおよびオリンパス593エンジンの模擬形状を作成しシミュレーション結果および実機データと 比較することで,各評価ツールおよびモデルの妥当性を検証した.エンジン長については44%と比較的大 きな差が生じたが,それ以外では最大で17%,平均で8%の差で評価が行われたことが示された.各種評
価ツールおよびモデルは航空機設計の初期段階である概念設計での使用を念頭に入れており,この差は許 容できるレベルにあると考える.