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計算物質科学人材育成コンソーシアム

第1章 研究の現状と今後の計画(概要)

29. 計算物質科学人材育成コンソーシアム

コンソーシアム長・特任教授

毛利 哲夫

(2015.8~)

【構成員】

コンソーシアム長・特任教授:毛利 哲夫/特任准教授:寺田 弥生/特任助教:芝 隼人,山崎 馨/助教(兼務):

Pierre-Antoine Geslin/博士研究員[1 名]/事務補佐員[1 名]

【研究・事業成果】

計 算 物 質 科 学 人 材 育 成 コ ン ソ ー シ ア ム (Professional development Consortium for Computational Materials Scientists : 以下,PCoMS)は,2015 年 8 月に文部科学省「科学技術人材育成のコンソーシア ムの構築事業(次世代研究者育成プログラム)」の採択を受け,東北大学(主として金属材料研究所:

以下,東北大金研)を代表機関,東京大学(主として物性研究所:以下,東大物性研),自然科学研究 機構分子科学研究所(以下,分子研),大阪大学(主としてナノサイエンスデザイン教育研究センター:

以下,阪大)を共同実施機関として設立された.2015 年 9 月に毛利哲夫教授(2017 年度より,特任教 授)がコンソーシアム長に選任された.同月にコーディネーターとして寺田弥生特任准教授が加わっ た.

育成対象の次世代研究者として,金研に,2016 年 1 月に芝隼人特任助教が,2017 年 2 月に山崎馨特 任助教が着任した.さらに,2017 年 7 月に,東北大学学際科学フロンティア研究所(Frontier Research Institute for Interdisciplinary Sciences:以下,FRIS)兼金研Pierre-Antoine Geslin助教が加わった.

PCoMSは,材料科学,物性科学,分子科学,材料デザイン学を中核とする物質科学分野で世界をリ

ードする4機関が実施機関となり,広範な物質科学領域と基礎,応用,実用化の全段階を俯瞰しつつ,

ハイパフォーマンスコンピューティング技術を駆使して物質科学分野の課題発見と解決ができる人材 育成の環境を整備し,同時に,若手研究者の安定雇用につながる仕組みを構築することを目的として,

下記の 2 つのタイプの研究者を育成している.

1)先鋭化された材料科学・物性科学・分子科学の専門性に加え,コンソーシアム型研究(他機関への 長期滞在)によって物質科学全体の素養を涵養し,基礎から応用まで全体を俯瞰しつつ,ハイパフォ ーマンスコンピューティング技術を駆使した最先端の計算物質科学研究を進める次世代グローバルリ ーダーとなる若手研究者(次世代研究者).

2) 計算物質科学の幅広い素養とハイパフォーマンスコンピューティング技術を持ち,かつ,長期イン ターンシップ等による所属機関以外の異なる研究環境を経験し,企業のニーズや国際的な研究動向等 を理解したポスドク(以下,PD)や博士課程(後期)学生(以下,DC)(イノベーション創出人材).

東北大金研は本コンソーシアムの代表機関であり,金研の独自の活動に加えて,コンソーシアム全 体の事業の推進を図っている.

設立後 3 年目に入る 2017 年 10 月には,国立研究開発法人科学技術振興機構 科学技術人材育成の コンソーシアムの構築事業委員会による本事業の中間評価を受け,総合評価Aを得た.

これまでの活動成果は,以下の通りである.

1)次世代研究者育成事業

材料科学,物性科学,分子科学,材料デザイン学の複数分野を融合した計算物質科学分野の研究

(コンソーシアム型研究:主たる勤務先以外の東北大金研,東大物性研,分子研,阪大のいずれか

での長期滞在を必須とする)を行う助教相当以上の若手研究者(次世代研究者)を育成中である.

2017 年度に東北大FRIS兼金研のGeslin助教を採用し,2015-16 年度に雇用開始した 8 名(東北大 金研 2 名,東大物性研 2 名,分子研 2 名,阪大 2 名)とあわせ,合計 9 名の育成と支援を行った.

2017 年度末までに,うち 7 名が前述のコンソーシアム型研究として他機関での研究(2 週間以上)

を 2 回実施した.また,東北大金研,東大物性研,分子研に設置されているスーパーコンピュータ を利用した計算物質科学スーパーコンピュータ共用事業と連携し,次世代研究者に計算機資源を提 供した.2017 年度は,次世代研究者 8 名(金研スパコン:3 名,物性研スパコン:5 名(前期)・3 名(後期),分子研スパコン:4 名 *複数機関への申請含む)が同事業に採用された.その他に,

イノベーション創出人材育成事業と合同でスキルアップ講習会,セミナー等を開催した.

2018 年 1 月には,2016 年度までに着任した次世代研究者 8 名の中間評価を行い,芝隼人特任助 教(東北大学),三澤貴宏特任研究員(東京大学)に「PCoMS次世代研究者奨励賞」を授与した.

また,Geslin助教が,2018 年 1 月よりMATEIS laboratory, Institute National des Sciences appliquées de Lyon(INSA-Lyon), FranceにResearch Scientist(助教,准教授相当職:任期無し)へ異動した.その ため,2017 年 12 月末でGeslin助教への支援を終了した。Geslin助教は,次の職へ移行を果たした 第 1 号となった.

東北大金研の芝特任助教,山崎特任助教,Geslin 助教の育成では,金研久保百司教授(PCoMS 次世代研究者育成委員会委員長)及び毛利特任教授がメンターとして定期的な打合せを行い,研究 活動などに対する助言を与えた.以下に金研PCoMS専任の研究者の主要な研究成果を記す.

芝:アルキル長鎖を伴う典型的な液体材料であるイミダゾリウム系イオン液体に対して,マイク ロ秒に及ぶ長時間の分子動力学シミュレーションを行った.液体状態から急冷により複数の種類の スメクティック液晶相が観察され,そのイオン輸送への動力学的影響を明らかにした.[H. Peng, M.

Kubo, and H. Shiba, Phys. Chem. Chem. Phys. Vol. 20, pp. 9796-9805 (2018).]

山崎:光スイッチ分子のひとつであるケイ皮酸メチル誘導体の無輻射経路について,広島大学の 江幡孝之教授らとの共同研究を行った.山崎特任助教は量子化学計算の大部分を担当した.その結 果,ヒドロキシケイ皮酸メチル誘導体は置換位置によって無輻射失活に関わる反応経路とその反応 速度が大きく変化することが明らかになった.[S. Kinoshita, K. Yamazaki, T. Ebata et al., Phys. Chem.

Chem. Phys. Vol. 20, pp. 17583-17598 (2018) 裏表紙に採用.関連招待講演 1 件]

寺田: ZrO2結晶での古典分子動力学シミュレーションを行い,cubic 相では有効電荷数がゼロ となるジルコニウム空孔 1 個と酸素空孔 2 個からなるSchottky欠陥が主要な欠陥であり,酸素原 子の拡散に影響を与えていることを明らかにした.[Y. Terada, T. Mohri, J. Phys. Soc. Jpn. 87, 054801 (8pages) (2018).](SIPプロジェクト革新的構造材料 D69)

2) イノベーション創出人材育成事業

長期インターンシップ派遣と,(1)計算物質科学の幅広い素養,(2)ハイパフォーマンスコン ピューティング技術,(3)ビジネス・リサーチャー・スキルの 3 つのカテゴリーの研修やセミナ ーを核とするPCoMSの共通プログラムを作成した.これをもとにした各機関のプログラムにより,

東北大学,東京大学,大阪大学のDCとPDを対象に育成活動を行った.分子研は教育機関として の博士課程を有していないため,セミナーなどでの協力を行っている.2017 年度,東北大,東大,

阪大の各機関での公募の結果,長期インターンシップ支援を伴うイノベーション創出人材育成対 象者(フェロー)[以下,IPD対象者(フェロー)]11 名,長期インターンシップを課さないイノ ベーション創出人材育成対象者(一般)[以下,IPD対象者(一般)]9 名の計 20 名を新規採用し,

2015 年度以降の継続育成者も含め 29 名のDC,PDを育成した.2017 年度採用のIPD対象者(フ ェロー)11 名のうち 10 名に長期インターンシップ(派遣先:国外大学 1,国内大学 2,国内研究 機関 2,国内企業 5)を実施した.その結果,2017 年度末までにのべ 24 件のインターンシップを 支援した.なお,東北大所属のフェロー3 名のインターンシップは,産業技術総合研究所(2 ヶ月:

D1),チューリッヒ工科大学(1.5 ヶ月:D1)、物質・材料研究機構(2 ヶ月:D2)で実施した.

東北大学1名,東京大学3名,大阪大学2名の合計6名に修了証書を授与した.2017年度に修 了した者のうち3名が就職,もしくは就職内定(企業1名,国立大学2名)を果たした.企業1 名は,長期インターンシップを実施した企業への内定である.2016 年度に修了した 1 名も 2017 年度に私立大学に就職した.また、博士号を取得し帰国した東北大学1名の育成を終了した.

3) 次世代研究者育成及びイノベーション創出人材育成に共通する事業

PCoMSの全体活動として,「PCoMSシンポジウム&計算物質科学スパコン共用事業報告会 2017」

(東北大金研,2017 年 11 月 9-10 日)を開催した.さらに, IPDプログラムの 3 つの修得カテゴ リーを一度に履修可能な「PCoMS 合宿セミナー2017」(東北大川渡共同セミナーセンター,2017 年 9 月 25 日-27 日)を実施した.合宿セミナーでは、計算物質科学分野の研究者による基礎研究 の成果から,企業研究者による応用研究の成果まで,広範な研究分野と階層についての講演に加 えて,参加者自らが他の参加者と議論しつつ課題実習を行う参加型の研修やコンピュータ実習も 実施することで,参加者の自主性を育成するよう試みた.

PCoMS東北大を中心とした活動では,東北大金研PCoMS専任の芝特任助教と山崎特任助教を

講師とした「計算物質科学セミナー」(テレビ会議システムを利用した配信セミナー 配信元:東 北大理学研究科,同時受講会場:東北大金研,その他学外からの個人 PC による受講,2018 年 2 月 26,28 日)を実施した.また,阪大の配信講義「計算科学技術特論 A」(2017 年 4-7 月 15 回)

の受講会場として金研会場を提供した.

【研究・事業計画】

2018 年度は,上記の育成事業の更なる充実と,コンソーシアム事業の中間評価で受けた指摘事項の 改善を図る. 1)次世代研究者育成事業では,次世代研究者の中間評価結果を踏まえ,次世代研究者 の支援を行う.2)イノベーション創出人材育成事業では,計算物質科学の裾野を広げるために,計算 を主体とするDCやPDのみならず,実験を主体とするDCやPDも参加可能なセミナー等を実施し,

計算物質科学の意義を理解できる実験物質科学者の育成と,実験研究者との連携が可能な計算物質科 学者の育成を目指す.さらに,企業の材料開発技術者にアカデミアの知を還元するために,企業との 連携を強化する.

金研PCoMS専任の次世代研究者による研究については,以下のとおり,コンピュータを利用した大

規模計算による物質科学の研究を進める.

イオン液体を機能材料として利用するためには,内部の階層構造とゆらぎの活用が鍵となる.これ は,マイクロ秒スケールの動力学を直接分子レベルから記述することが要求される挑戦的な内容であ る.芝特任助教は,分極ゆらぎを取り入れた分子シミュレーションや,遅い動力学や異相界面,液晶 構造のゆらぎを定量的に明らかにすることを目指したシミュレーションを展開する.

山崎特任助教は,ケイ皮酸メチル誘導体の無輻射経路の理論研究に加えて,超短極端紫外・X 線パ ルスを用いた,ナノバイオ分子・固体材料の光化学反応動力学の理論研究と反応イメージングへの応 用を実験グループと緊密に連携しながら進める.また,ゼオライト・酸化セリウムを触媒とするメタ ン活性化機構を量子化学計算に基づいて解明し,より効率の良いメタン転換を行える触媒を設計する.

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