4.2 電流モニターの原理
4.3.4 計測アンプ設計
ラウンド起因の電流と暗電流値を表4.3に示す。また、前方エンドキャップ内 側は測定点1か所あたりの結晶の数が30本であり、外側は114本、バレルは 138本である。これより、前方エンドキャップとバレルの測定点1か所あたり の電流値の見積りは表4.4のようになった。
表4.3 前方エンドキャップとバレルの結晶1本あたりのビームバックグラウンド起因 の電流(ビームBG)と暗電流の値
実験初期 実験終盤
ビームBG(nA) 暗電流(nA) ビームBG(nA) 暗電流(nA) 前方エンドキャップ内側 0.3 100 3 200
前方エンドキャップ外側 0.04 40 0.4 50 バレル 0.04 10 0.4 20
表4.4 前方エンドキャップとバレルの測定点1か所あたりのビームバックグラウンド 起因の電流と暗電流の値
実験初期 実験終盤
ビームBG(nA) 暗電流(nA) ビームBG(nA) 暗電流(nA) 前方エンドキャップ内側 9 3000 90 6000
前方エンドキャップ外側 4.56 4600 45.6 5700 バレル 5.52 1400 55.2 2760
データロギングシステムとして用いるAgilent34980Aの測定分解能は、DC 電圧測定で0.00001×測定レンジ、5.5桁18ビットである。また、初段アン プの保護用ダイオードとして用いるシリコンダイオードの順方向降下電圧は 0.6∼0.7V である。これらの条件から、電圧降下ピックアップ用抵抗の値を
100kΩとした。ここで、実験終盤では電流値が増えるため、10kΩの予備の抵
抗も回路に組み込みジャンパーで切り替えを可能とする。表4.5に100kΩの 抵抗を用いた場合の前方エンドキャップとバレルの測定点1か所あたりの期待 される電圧降下の値を示す。
表4.5 100kΩの抵抗を用いた場合の前方エンドキャップとバレルの測定点1か所あ たりの期待される電圧降下
実験初期 実験終盤
ビームBG(mV) 暗電流(mV) ビームBG(mV) 暗電流(mV) 前方エンドキャップ内側 0.9 300 9 600
前方エンドキャップ外側 0.5 460 4.6 570 バレル 0.6 140 5.5 280
• 計測アンプ回路設計
電圧降下ピックアップ用抵抗を含めて設計した計測アンプの回路図を図4.11に示 す。この設計のポイントを以下にまとめる。
– LEMO端子を使用した入力部にはバイアス電源がつながり、同じくLEMO端 子を使用した出力部はPIN-PDへとつながる。
– 10kΩと100kΩの電圧降下ピックアップ用抵抗を使用し、ジャンパーを用い
て切り替えを可能とする。
– 電圧降下ピックアップ用抵抗を孤立させ、電圧降下を増幅させるためにフロー ティング測定に対応したGΩ以上の高い入力インピーダンスを持つオペアン プとしてテキサスインスツルメンツ社製OPA124を使用する。また、非反転 増幅回路を用いて電圧降下の増幅率を10倍とした。
– OPA124に電源供給する際フローティング測定を行うため、+-12Vを出力す
るベルニクス社製絶縁型DC-DCコンバータBLA12-12W06型を使用する。
– OPA124から出力される電圧の信号が差動型であるため、シングルエンド伝送
に変換するためにテキサスインスツルメンツ社製差動アンプINA117を使用 する。
– INA117の出力キャパシタンスの定格は1nF以内である。ここで、INA117の 出力側からエレキハット内にあるデータロギングシステムへつながるCat5e ケーブルの長さは約 20mであり、ケーブルのキャパシタンスが1nFを超え る。この問題を解決するためにボルテージフォロアをINA117の出力側に配 置する。このボルテージフォロアにテキサスインスツルメンツ社製OPA27を 使用する。
– 計測アンプの出力側のコネクタはRJ45とし、1∼4番ピンはアンプ用電源に、
5、6番ピンはAgilent34924Aマルチプレクサモジュールに接続する。
この回路設計により、出力電圧は電圧降下ピックアップ用抵抗での電圧降下の10 倍の値となる。
図4.11 計測アンプ回路図