第 8 章 積分 51
12.4 解答例
1. まずsinx , cosx の n回微分を求める.
d
dxsinx= cosx , d2
dx2 sinx=−sinx , · · · , dn
dxnsinx=
{ (−1)msinx (n = 2m のとき) (−1)mcosx (n = 2m+ 1 のとき) d
dxcosx=−sinx , d2
dx2 cosx=−cosx , · · · , dn
dxncosx=
{ (−1)m+1cosx (n= 2m のとき) (−1)m+1sinx (n= 2m+ 1 のとき)
ここで m は0以上の整数である.ここでx= 0 として f(n)(0)を求めてテーラー展開の公式 に代入して,
sinx=
∑∞ m=0
(−1)m
(2m+ 1)! x2m+1 , cosx=
∑∞ m=0
(−1)m (2m)! x2m 2.
cosπ
3 ≃1−1 2
(π 3
)2
+ 1 4!
(π 3
)4
= 1−π2
18 + π4
1944 = 0.501796. . . 真の値 0.5 との差は 0.001796. . ..これは真の値の約0.36%になる.次の項は −1
6!
(π 3
)6
=
− π6
524880 =−0.00183. . .なので,小数点以下第二位までの精度を求めるなら,1 4!
(π 3
)4
まで の展開で十分である.
3. 1
√1−x = (1−x)−1/2 =f(x)とおくと,f′(x) = (1/2) (1−x)−3/2,f′′(x) = (3/4) (1−x)−5/2. よって
√ 1
1−z =f(0) +f′(0)x+ 1
2!f′′(0)x2+O(x3) = 1 +1 2x+3
8x2+O(z3)
4. 1
√a2 +r2−2arcosθ = 1 a
√ 1
1−[(2a/r) cosθ−(r/a)2] [(2a/r) cosθ−(r/a)2] =xとおいて,前問の結果より
√ 1
a2+r2−2arcosθ = 1 a
[
1 + 1 2x+3
8x2+O(x3)
]
= 1 a
[
1 + 1
2[(2a/r) cosθ−(r/a)2] +3
8[(2a/r) cosθ−(r/a)2]2+O(x3)
]
= 1 a
[
1 + r
acosθ− r2
2a2 +3r2cos2θ
2a2 +O(r3)
]
= 1 a + r
a2cosθ+r2 a3
(3 cos2θ−1 2
)
+O(r3)
5. オイラーの公式より eiθ = cosθ+isinθ,e−iθ = cos(−θ) +isin(−θ) = cosθ−isinθ .よって sinθ = 1
2i(eiθ −e−iθ) , cosθ = 1
2(eiθ +e−iθ) 6. A=
N∑−1 k=0
e2ikxとおくと,等比級数の和を求める要領で,
A = 1 +e2ix+e4ix +· · ·e2i(N−1)x = 1−(e2ix)N
1−e2ix = 1−e2iN x 1−e2ix
= eiN x(e−iN x−e2iN x)
eix(e−ix−eix) = eiN x2isin(N x)
eix2isinx = eiN xsin(N x) eixsinx 任意のθに対して |eiθ|=|cosθ+isinθ|=√
cos2θ+ sin2θ= 1なので,
|A|2 =
eiN xsin(N x) eixsinx
2
= sin2(N x) sin2x
注)これは回折格子を通ってやってくる波の強さを表している.N = 5の場合のグラフを以下 に示しておく.
-6 -4 -2 2 4 6
5 10 15 20 25
第 13 章 物理に現われる微分方程式
13.1 常微分方程式
1変数関数 f(x) とその微分 (f′(x), f′′(x), f′′′(x) . . .,)の間に成立する方程式を常微分方程式と いう.
F(x, f, f′, f′′, . . .) = 0
この関係式を満たす関数fを求めることを微分方程式を解くという.微分方程式に現れるf のn回 微分で,最高のnの値を階数という.
1階常微分方程式の例: d
dxf(x) =kf(x) (k は定数) 2階常微分方程式の例: md2
dt2x(t) = −mω2x(t)−ηd
dtx(t) (m, ω, η は定数)
n階常微分方程式の解はn個の初期条件 (f(x0) = f0,f′(x1) =f1,f′′(x2) =f2, . . .)を与えれば一意 的に決まることが数学的に証明されている.
例1: 放射性物質の崩壊
元素の中には時間とともに自然と放射線を出して,その種類を変えるものがある(放射性同位 元素).例えば23892U(ウラン)はα線を放出して23490Th(トリウム)になる.この反応は確率的に
起こり(量子論的現象),ある一つのウラン原子核がいつトリウムになるかは原理的に予測で
きない.予測できるのは,数多くの回数の観測を行うとどれくらいの割合で反応が起こるか という確率だけである.ウラン原子核を多数準備して観測を続けると,約45億年でウランの 半分がトリウムに変化する.
ある放射性同位元素が単位時間に変化する確率をpとし,時刻tでのその放射性同位元素の数 をN(t)とする.時刻がtからt+ ∆tまでの間にpN(t)∆t個の元素が反応を起こすので,N(t) の変化は以下で与えられる.
N(t+ ∆t)−N(t) = ∆N(t) = −pN(t)∆t
この両辺を∆tで割って,∆t →0の極限をとると次の微分方程式が得られる.
d
dtN(t) =−pN(t)
この微分方程式を解くには変数分離法という技術を用いる.両辺を N(t)で割ると 1
N dN
dt =−p
この両辺をtで不定積分する.
∫ 1 N
dN dt dt =
∫
(−p)dt
∫ 1
NdN =
∫
(−p)dt
lnN(t) = −pt+C (Cは初期条件で決める積分定数) N(t) = N(t0)e−p(t−t0)
ここで積分定数Cはt =t0で元素の個数がN(t0)であるという初期条件を満たすようにとっ た.得られた解N(t) =N(t0)e−p(t−t0)を元の微分方程式に代入すれば,方程式が満たされてい ることがわかる.元素の個数が元の半分になる時間(半減期)をτ1/2と記すと,e−pτ1/2 = 1/2.
よって半減期と単位時間に変化する確率pの間には p = ln 2/τ1/2 の関係がある.ウランの 場合,半減期が約45億年なので,一つのウラン元素が1年のうちに反応を起こす確率は約 1.5×10−10,1秒間に反応を起こす確率は約5×10−18になる.アボガドロ数は約6×1023な ので,1モルのウランがあれば,毎秒あたり6×1023×(5×10−18) = 3×106個のウラン元素 が反応を起こすことになる.
例2: 単振動
なめらかな面の上にあり,バネ定数kのバネでつながれ た物体の運動を考える.バネの自然長の位置からxだけ ずれた位置に物体があると,バネから−kxの力を受け
る(力の向きに注意せよ).
0 x kx
このときの運動方程式は,物体の質量をmとして以下で与えられる.
md2
dt2x(t) =−kx(t)
これは2階常微分方程式であるので,初期条件を2つ与えれば解は一意的に決まる.この方 程式を変数分離法のように解くことは困難であるが,2回微分すると元の関数に比例すると いう点から,x(t) =Asin(ωt+B) (ω,A,Bは定数)と置いて代入してみると
−mω2Asin(ωt+B) =−kAsin(ωt+B) これから ω =
√
k/mが得られる.後は2つの初期条件に合うようにA, Bを選べばよい.