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4 常時の斜面の安定性評価への信頼性手法の適用

4.4 解析モデルの性に関する検討

ここまで示した項目ごとの検討とは別に, 自己相関距離と要素サイズの関係性,単位体 積重量の不均質性が解析値の不確実性に与える影響について検討を実施する。以下に概要 を示す。

4.4.1 自己相関距離と要素サイズについての検討

自己相関距離に対する適切な要素サイズを決定するため,基本ケース(要素サイズ 1.0m

×1.0m)を標準とし,自己相関距離はLx=10m,Ly=0.1mのまま変化させず,要素サイズのみ

を 0.5m×0.5m,1.5m×1.5m(以後それぞれを基本(要素サイズ)のように示す)と変化さ

せ,解析を実施した。発生させた確率場の例を図4.23に示す。基本(0.5m)の例では要素 の重心間の距離が短く,かつ要素離散化の際に値が平滑化される面積が小さいため,基本ケ ースに比べ物性値の変化がより連続的であり,隣接する要素間の相関性が高いことが分か る。特に鉛直方向に関しては,自己相関距離が短く,距離に応じて相関性が失われやすいた め,要素サイズの影響をより強く受ける。基本(0.5m)では鉛直方向に対する物性値の変化 が,基本(1.0m)と比較して連続的であり,精度よく相関性を反映している。一方基本(1.5m)

の例では鉛直方向に対して,緑系色の要素と赤系色の要素が隣接しているなど,実質的に相 関性が0に近い状態になっている部分が多く見られる。解像度が粗くなった影響により,本 来設定した相関性が損なわれているためである。

次にMCSより得られたFsのヒストグラムを図4.24に,結果の平均値および変動係数を 表4.10に示す。図4.24より,0.5m,1.5mケースの分布形状は左側の裾が長い形状を呈して おり,基本ケースと同様の傾向を示している。また,変動係数の値からも分かるように,分 布のばらつきの程度は 3 ケースとも大きな違いは見られない。一方平均値は要素サイズが 大きくなるに伴い増加する傾向が示唆される。基本(0.5m)ケースと基本(1.0m)の差は微 小なものの,基本(1.5m)ケースが他の2ケースより0.1程度大きい値を示しており,要素 サイズが大きくなるとFsが過大評価される可能性が示唆された。これらの傾向は上記の確 率場の再現性の問題であると考えられる。基本(0.5m)は確率場の再現性が基本(1.0m)よ り高く,弱部の影響をより精度よく解析に反映していると考えられる。一方基本(1.0m),基 本(1.5m)ケースでは弱部の再現性が0.5mケースよりも低下するため,弱部の影響が弱ま っていると考えられ,結果として平均値の増加につながったものと思われる。これらの傾向 を踏まえると,本検討で用いた自己相関距離(Lx=10m,Ly=1m)においては,要素の幅がLy

より小さく,弱部の再現性が高い基本(0.5m)が最も精度の高い解析結果であると考えられ る。一方で,基本(1.0m)ケースに関して,基本(0.5m)とのFs,vFsの差は微小であり,

分布の定性的な傾向は変わらないことから,要素の幅を1.0mとしても,MCSから得られる Fsの確率分布への影響は比較的小さいと判断できる。

以上の結果から要素サイズを,設定した自己相関距離の内,より値が小さいもの(本検討 ではLy)と同等以下にすることで,要素サイズの違いが,MCSにより得られるFsの確率分

布の統計的性質に与える影響をある程度小さくできると推察される。なお上記の傾向は自 己相関特性に影響されると考えられ,本項での検討はあくまで一例であり,継続的な検討を 要する。

図4.23 要素サイズの変化が確率場に与える影響(粘着力c(kN/m2))

図4.24 Fsのヒストグラム(自己相関距離と要素サイズ)

0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

基本(1.0m) 均質(1.0m) 基本(0.5m) 均質(0.5m) 基本(1.5m) 均質(1.5m)

確率

Fs

表平均値と変動係数(自己相関距離と要素サイズ)

Case 要素幅

(m) Fs vFs

基本(0.5m) 0.5 1.181 0.084 基本(1.0m) 1.0 1.217 0.075 基本(1.5m) 1.5m 1.310 0.079

4.4.2 単位体積重量の不均質性が解析値の不確実性に与える影響

単位体積重量の不均質性が解析値へ与える影響を評価するため,c,に加え単位体積重量 gを確率変数とした解析を実施し,基本ケースと比較した。結果の平均値および変動係数を 表4.11に,MCSより得られたFsのヒストグラムを図4.25に示す。分布の形状は,右側と 比較して左側の裾が長い形状であり,基本ケースと同様の傾向である。両ケースを比較する と,結果の平均値Fsの差は0.021,結果の変動係数vFsの差は0.001であり,FsvFsともに gケースの方が小さいが,その差は微小であるといえる。この結果は既往の報告とも整合性 があり,単位体積重量が解析値の不確実性に与える影響の程度は低いと判断している。

表平均値と変動係数(単位体積重量の考慮の有無による影響)

Case Vg Fs vFs

g 0.1 1.196 0.074 基本 0 1.217 0.075

図4.25 Fsのヒストグラム(単位体積重量の影響)

0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

基本 g 均質

確率

F

s