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角度微分散乱断面積のフィッティング

ドキュメント内 Ne 17M / 02/ 08 (ページ 50-55)

4.4 非弾性散乱における角度微分散乱断面積

4.4.4 角度微分散乱断面積のフィッティング

30Neの角度微分散乱断面積をフィッティングしたものを図4.43に示す。実験結果を再現する変形長はδ= 1.62(2) fmで あった。30Neのδについては、S. Michimasaらによる先行研究[14]ではδ= 1.59+0.080.09±0.07 fm、P. Doornenbalらに よる先行研究[25]ではδ= 1.98(11) fmが報告されている。 本研究の結果は前者の先行研究の結果と一致している一方で 後者の結果とは一致していない。後者の研究において非弾性散乱における2+状態への励起断面積(角度微分散乱断面積を 積分したもの)はσ(2+1)=14.4(14) mbであり、本研究の断面積12.7(3) mbと誤差の範囲で一致している。

図4.43 30Ne角度分布

32Neの角度微分散乱断面積をフィッティングしたものを図4.44に示す。実験結果を再現する変形長はδ= 1.77(7) fmで あった。

第 5

議論

32Neのエネルギースペクトルにおける2つのピーク(676,1401 keV)のコインシデンスが確認できたため、32Neは図5.1 の左図のような準位図になっていると推測できる。ただし数字の単位はkeVである。またスピン・パリティーについては 確定できていないため括弧付きになっている。図5.1の中図と右図はそれぞれEKK法[11]とSDPF-M[13]のシェルモデ ル計算による32Neの準位図の予測である。実験で観測された676 keV,2077 keVの状態は、2つの理論計算のいずれでも 予想されており、どちらもスピン・パリティーは2+,4+である。したがって、676 keVと2077 keVの状態のスピン・パリ ティーはそれぞれ2+,4+であると推定される。

図5.1 32Neの準位図。数字の単位はkeV。左図は本実験の結果、中図と右図はそれぞれEKK[11]SDPF-M[13]

のシェルモデル計算による予測。実験結果のスピン・パリティーは確定できていないため括弧付き。

 676 keVと2077 keVの状態がそれぞれ2+,4+であるとすると、2+1 と4+1 の励起エネルギーの比の値はR4/2= 3.07 となる。図5.2にネオン同位体の偶々核における2+1,4+1 の励起エネルギーとR4/2の系統性を示す。ただし点が実験結果 を、点線がEKK法による計算結果を示す。32Ne (N=22)に対応するデータが今回の実験結果である。26Ne (N=16)から

30Ne (N=20)にかけて2+,4+の状態の励起エネルギーは減少し、R4/2の値が上昇している。30Ne (N=20)においても第 一励起状態の励起エネルギーが減少し変形が進むことは、Z=20の魔法数が消失する逆転の島の特徴を示している。32Neに おいては30Neよりもさらに低い励起エネルギー、大きいR4/2の値を示すことから、より変形が進んでいることが考えら れる。EKK法を用いた理論計算はこれらの傾向、値をよく再現しており、中性子過剰なネオン同位体において、中性子数 の増加とともに変形が進んでいることがわかる。

図5.2 2+1,4+1 の励起エネルギーとR4/2の系統性。横軸は中性子数、縦軸は上図が2+1(青線)4+1(赤線)の励起エネ ルギー(keV)、下図がR4/2。点が実験結果、点線がEKK法による計算結果。32Ne (N=22)に対応するデータが今回 の実験結果。

ネオン同位体における、中性子数の増加に伴う四重極変形長δの変化を図5.3に示す。32Neのデータが本実験の結果で ある。変形度の実験値はN= 1822の範囲で中性子数の増加とともに大きくなっており、32Neでは変形長が最も大きく なっている。理論計算はその傾向をよく再現している。28Neと比較して30Neのδが大きくなっているのは、第一励起状態 の励起エネルギーとR4/2の系統性の部分と同様、N=20の魔法数が破れ変形する逆転の島の特徴であると言える。32Neに ついてもδの増加は継続しており、中性子過剰なネオン同位体において、中性子数の増加に伴って変形が進む様子がわかる。

 2つの理論計算はN = 18から22にかけてδが増大している実験の結果をよく再現している。またこれらの理論計算に よって、δ32Neにおいて極大値をとり、34Neで減少することが予想されており、今後の実験が待たれる。

図5.3 ネオン同位体における四重極変形長δの系統性。横軸は中性子数、縦軸はδ(fm)。黒点が実験結果、赤線と青線 はそれぞれSDPF-M[13], AMPGCM[15]による計算結果。32Ne (N=22)に対応するデータが今回の実験結果。

第 6

まとめと今後の展望

 本研究では32Neの励起状態の励起エネルギーの決定および四重極変形長δの導出を目的として、33Naの1陽子剥離反 応及び32Neの非弾性散乱を用いた32Neのインビームγ線分光実験を理化学研究所のRIビームファクトリーにおいて行っ た。核子当たり240 MeVの32Neとその近傍核を含む二次ビームを入射核破砕反応によって生成し、反応標的である炭素 に入射した。反応後の出射粒子は超伝導大口径スペクトロメータSAMURAIを用いて測定し反応チャンネルの同定を行っ た。また脱励起γ線のエネルギーはCsI(Na)シンチレータアレーCATANAを用いて測定した。

33Naの1陽子剥離反応を用いて得られたγ線エネルギースペクトルから、2つのピーク(676(3) keV, 1401(13) keV)を 観測した。この2つのピークのコインシデンスが確認できたことと、理論計算による準位図との比較により、2つのピーク はそれぞれ2+1 0+1,4+1 2+1 の遷移に対応していると推定した。原子核の変形を反映するエネルギー比R4/2は3.07で あり、強く四重極変形している場合の値3.33に近い値であることが分かった。また、32Neの非弾性散乱における2+励起 の角度微分断面積を歪曲波ボルン近似を用いた計算と比較することにより、32Neの変形長δが1.77(7) fmと導出された。

これらの結果から32Neでは、すでに大きな変形が示されていた30Ne(R4/2= 2.82, δ= 1.59+0.080.09±0.07 fm)以上に変形 していることが示唆された。これにより中性子過剰なネオン同位体において、中性子数の増加に伴って変形が進むことが明 らかになった。

 今後の課題として、系統誤差を見積もる。また応答関数を得るために行ったシミュレーションの精度を向上させる。にシ ミュレーションの精度を向上させる方法として例えば、入射粒子の入射角度を実際の分布を再現するように与える(現在は ビーム軸方向に固定)などが挙げられる。これにより断面積や変形長の誤差を減少させることができると期待される。

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