第 4 章 傾斜地でのきめ細かい地盤調査
4.5 観測地点における斜面崩壊の斜面危険度
4.4で算出した地盤増幅率とJ-SHISが公表している地盤増幅率を使用して,観測地点 での計測震度の推定を行い,数値標高モデル(DEM)や表層地質図を利用して斜面の特 性を調べ,地震時斜面崩壊の斜面危険度を算出した.その結果を表4.3に示した.なお,
斜面崩壊は熊本地震(2016月4月14日)によって発生したものとした.
表4.3 観測地点における斜面崩壊の斜面危険度
観測点名 近傍の計測震度
(KiK-net 益城)
斜面被害の計測震度 基準要 素点
地 震 時 斜 面 崩 壊 の 斜 面 崩 壊 危 険 度
kumamoto1 6.5 6.2(微動観測) 5 A
6.5(J-SHIS) 5 A
kumamoto2 6.5 6.2(微動観測) 5 A
6.5(J-SHIS) 5 A
観測地点の計測震度を推定して,地震時斜面崩壊の斜面崩壊危険度を評価したが,
kumamoto1 および kumamoto2 の結果の変動は生じなかった.斜面の基準要素点は低い
が,斜面被害の計測震度の値が6強と非常に大きいため,斜面の特性に関わらず,斜面 崩壊確率の斜面危険度が高い結果となった.
34 第 5 章 結論
本研究では,地震による斜面崩壊が発生した場所の文献調査を行うとともに,地盤増 幅率の比を利用して斜面崩壊地の計測震度推定を行った.また,一般に入手可能なDEM や表層地質図を利用して,地形量演算を行い斜面の特性を調べた.
地盤増幅率の比を利用して,斜面崩壊地の計測震度を推定した結果,斜面崩壊地の計 測震度は近傍計測震度よりもやや小さくなる傾向を示した.
基準要素点と斜面崩壊が発生する計測震度は,計測震度の下限値付近で,基準要素点 が大きくなるほど計測震度が小さくなる相関がみられた.また,既往の地震時斜面崩壊 の斜面危険度基準では,斜面崩壊が発生しない区分で斜面崩壊が発生していたことが明 らかになり,従来の手法では,斜面の危険度を適切に評価できていないことが判明した.
熊本県益城町で極小微動アレイ観測を行い,位相速度解析を行って地盤増幅率を算出 した.その結果 J-SHIS が公表している地盤増幅率とは大きく異なる結果となった.斜 面崩壊の危険度評価を正確に行うには,きめ細かい微動観測を行い,地盤増幅率を算出 することが重要であることを示した.
今後は,個々の斜面に対して統計的手法による斜面の危険度判定基準と,計測震度の 関係を検討したい.斜面高は斜面崩壊地の大きさに応じて抽出するメッシュを変更する 必要がある可能性が高いため,熊本県阿蘇郡南阿蘇村立野地区で発生した大規模斜面崩 壊などは地形量演算結果が異なる可能性があるのが今後の課題である.
35 参考文献
1)一般社団法人斜面防災対策技術協会,地すべりと斜面崩壊の違い
2)社団法人日本道路協会震災対策委員会,道路震災対策便覧(震前対策編)
3)損害保険料率算出機構:全国を対象とした地震時の斜面崩壊危険度評価手法に関す る研究pp.21-64,2012
4)国立研究開発法人防災科学技術研究所:強震観測網(K-NET,KiK-net)
5)国立研究開発法人防災科学技術研究所:地震ハザードステーション(J-SHIS)
6) 国土地理院:基盤地図情報(数値標高モデル)
7)国土交通省:国土調査,20万分の1表層地質図
8)野上道男,1999.50m-DEMによる地形計測値と地質の関係,地理学評論,72A,
pp.23-29
9)田川佳典,神野達夫(2014):微動アレイ観測におけるCCA法とSPACによるRayleigh
波の位相速度の比較,No.26,pp.41~47,July.2014
10)長郁夫,多田卓,篠崎祐三:極小アレイによる新しい微動探査法:浅部地盤平均S
波速度の簡便推定,物理探査,Vol.61,No.6(2008)pp.457-468
11)長郁夫,先名重樹,藤原広行(2014):微動のH/Vスペクトルを用いたS波速度不
連続の概査法の提案,物理探査学会第129回学術講演会論文集 pp.264-267