談 話 室
2 観光活性化ファンドの 個別事例
れぞれの子会社は,これに加え投融資先に 対するコンサルティングなどの支援(ハン ズオン支援)を行っている。
次節では,観光活性化ファンドの具体的 な取組みを紹介しながら,地域金融機関に よるファンドを通じた地域の観光振興への 支援についてみていきたい。
2 観光活性化ファンドの
ある。宿泊客の減少等により地域内の雇用 が減少し,地域外で就職する若者が多くな り,高齢化と人口減少が進行している。
c 加太まちづくりの設立経緯
加太における観光まちづくりは,和歌山 市加太地区連合自治会,加太観光協会およ び加太漁協が協力することで,若者が地元 で働けるような雇用機会の創出ができない か,という問題意識が加太の若手住民内で 高まっていたことから始まった。しかし,
当時は各組織の話がなかなかまとまらなか ったため,若手住民がコミュニティデザイ ンを手掛ける会社に意見調整役を依頼した。
同社は連合自治会や観光協会の会長,漁協 の組合長へのヒアリングを実施し,関係者 間の意見調整を進めていった。
こうした動きを受けて,10年12月には,
連合自治会,観光協会,漁協のメンバーが 参加する「加太地域活性化協議会」が設立 され,加太の地域活性化に向けての話合い が定期的に行われるようになった。その後 も,加太住民へのアンケート調査の実施や 住民参加型のワークショップを開催したこ とにより,加太住民自身が地域の魅力や課 題を再認識し,地域活性化のためのより具 体的な取組みを一緒になって考えるように なっていった。
紀陽銀行も途中から協議会に加わり,観 光活性化ファンドの投資先として加太地区 を検討するようになった。投資先は法人形 態をとることが必要なため,15年7月には 11地区で構成される連合自治会の会長の呼
(注8) 事例先等へのヒアリング調査は16年8月〜
11月に実施。
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) わかやま地域活性化ファンド a ファンド概要わかやま地域活性化ファンド(正式名:わ かやま地域活性化投資事業有限責任組合)は,
和歌山県や近隣地域の観光産業の活性化に 資する事業者を対象とし,成長資金の供給 や継続的な経営支援の実施を目的に(注9),紀陽 銀行の主導により14年1月に設立された。
紀陽銀行は12年4月からの第3次中期経 営計画の主要テーマの一つに,地域内での 存在感の向上や,営業基盤である地元経済 の成長の促進といった強力なリレーション シップバンキングの推進を掲げた(注10)。その一 つとして,観光分野への取組みを強化する ため,REVICのファンド事業を活用し,フ ァンド設立に至った。
同行は県内の他の金融機関にも声をかけ,
同行のほかに,きのくに信用金庫,新宮信用 金庫,紀陽リース・キャピタル(株),REVIC キャピタル(株)が出資を行っている。フ ァンド総額は10億円であり,投融資件数は,
今回紹介する和歌山市の加太まちづくり
(株)(以下「加太まちづくり」という)と白 浜町のホテル(株)三楽荘の2件である。
(注9) REVICのプレスリリース(14年1月24日付)
(注10) 紀陽銀行ディスクロージャー誌2013
b 和歌山市加太地区の概要
加太地区は,和歌山市の郊外にある人口 3,000人強の漁村である。昔から真鯛の一本 釣りが有名で,海水浴場や友ヶ島,人形供 養で有名な淡嶋神社などの観光スポットが
ントの企画・運営のサポートを行ったり,
県内の道の駅に手づくりの干物を卸してい る。今後は観光客への鮮魚の販売や,魚の 販売額を増加させるため,規格外の鮮魚の 加工販売を検討している。加太まちづくり は,同社自体の収益の増加ではなく,加太 の認知度を上げて多くの観光客を呼び込み,
地元の漁業者や観光関連事業者の利益を増 やしていくことを目標としている。漁業者 等の担い手づくりに貢献するとともに,加 太の魅力を発信することで,加太で新たに 起業する人を地域外から呼び込んでいきた いと考えている。
e 紀陽銀行の取組み
紀陽銀行は,13年から加太まちづくりの 関係者と接点を持ち,深く関わってきた。
協議会では魚の販売を考えるチームに加わ って,漁協の組合員と一緒になって意見交 換を行うなど,地域との関係づくりに励ん だ。ファンド設立前から継続的に加太を訪 れて,加太まちづくり関係者間の意見調整 を行い,会社設立に至った。
投資後は,会社の事業計画や財務書類の 作成,組織体制の整備,鮮魚・干物の販路 拡大などの支援を行っている。干物販売に ついては,同行が別の地域の商工会から道 の駅での販売品の品ぞろえについて相談を 受けた際に,加太の干物を紹介したことで 事業に結び付いた。
今後も同行は,ファンドを通じて地域に 新たな人の流れや持続的な収益を生み出せ る事業を起こしていくことを目指している。
びかけにより,連合自治会の全額出資で加 太まちづくりを設立した。15年10月には,
わかやま地域活性化ファンドが加太まちづ くりからの第三者割当増資を引き受けた。
なお,協議会は現在も定期的に開催され,
地域活性化のための様々なアイディアを出 し合い,加太まちづくりの事業につなげて いる。
d 加太まちづくりの体制と業務
加太まちづくりの社長は連合自治会会長 が務め,観光協会や漁協の会員,事業者等 9名が役員に就いている。主な事業収入は,
加太海水浴場(写真1)の駐車場の管理と 海の家の営業から得ている。加太まちづく りの設立以前は,駐車場の管理は漁協が,
海の家の運営は観光協会が行っていたが,
16年4月からは,駐車場と海の家の県の指 定管理者に加太まちづくりが認定された。
海の家は,以前は7〜8月にしか運営して いなかったが,16年からは加太まちづくりで 正社員を1名雇用し,通年で運営している。
このほか,加太で開催される様々なイベ
写真1 加太海水浴場
(加太まちづくり(株)提供)
いう)に対して投融資を実行した。
(注11) 敦賀市,美浜町,若狭町,小浜市,おおい町,
高浜町。
b 小浜市の概要
小浜市は福井県の南西部に位置し,若狭 湾に面した人口3万人の市である。若狭湾 でとれる豊富な水産物のほかに,名産品に は鯖へしこや小鯛の笹漬けなど伝統的水産 加工品,若狭塗に代表される伝統工芸品が ある。都や大陸文化が往来した歴史から,
130もの寺社仏閣が点在するなど,様々な観 光資源を有している。15年には日本遺産第 1号の一つとして「海と都をつなぐ若狭の 往来文化遺産群〜御食国(みけつくに)若狭 と鯖街道〜」として認定された。
07年にはテレビドラマのロケ地となった ことで全国的な認知度が上がり,観光客が 急増した。さらに14年7月の敦賀〜小浜間 をつなぐ舞鶴若狭自動車道の全線開通によ り再び観光客数は増加した。ただし,北陸 新幹線開業や京都縦貫道の全通の影響等も あり,15年には近隣地域へ観光客が流れた ため,減少に転じた。
c まちづくり小浜の設立と3駅周遊に ついて
現小浜市長は,道の駅,海の駅,まちの 駅の3駅周遊や観光まちづくり会社による 市の観光活性化を施策の一つとして掲げ,
10年4月には小浜市の過半出資と,観光協 会,商工会議所,農協,森林組合,漁協等 10団体の出資により,まちづくり小浜が設 立された。
f REVICの支援
現在,REVICキャピタル(株)からは職 員が2名,加太まちづくりの事業のサポー トを兼任で行っている。REVICからは,鮮 魚販売事業の検討の際には,魚の仲卸のプ ロが派遣されたり,観光事業のサポートの ために,リゾートホテル経営の経験がある 職員が派遣されたりした。
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) ふくい観光活性化ファンド a ファンド概要ふくい観光活性化ファンド(正式名:ふく い観光活性化投資事業有限責任組合)は,魅 力あふれる周遊観光地域づくりを通して,
県内の観光消費額の増大を図ることを目指 し,福井銀行が主導して15年8月に設立さ れた。組合員は,福井銀行,REVIC,(株)福 井キャピタル&コンサルティング,REVIC キャピタル(株)であり,ファンド総額は 3億円である。
東日本大震災の影響による原発の稼働停 止に伴い,嶺南地区(注11)の経済が停滞したため,
福井銀行は,観光客に県内を周遊してもら えるような観光地の拠点を複数つくり,観 光によって地域を活気づけたいと考えるよ うになった。同行はこれまで,どちらかと いえば県の主要産業である製造業等への金 融支援に重きを置いてきたが,ファンドを きっかけに観光といったサービス業へのハ ンズオン支援にも力を入れていきたいと考 えている。小浜市を周遊型観光地の強化に おける一つ目の拠点とし,16年2月に(株)
まちづくり小浜(以下「まちづくり小浜」と