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複数の高調波抑制アルゴリズム

第 2 章 矩形波減算方式アルゴリズム

2.5 複数の高調波抑制アルゴリズム

前項で説明したアルゴリズムは、1つのシフトパラメータ𝜏1を用いて1つの高調波を抑制する だけだった。ここで、シフトパラメータを追加し自由度を増やすことによって 2 種類の高調波を 同時に抑制するアルゴリズムを提案する。図 2.6 に 2 種類の高調波抑制アルゴリズムを示す。シ フトパラメータが増え、5 つの矩形波の加減算によるアルゴリズムである。

図 2.6. 2種類の高調波を抑制するアルゴリズム

本アルゴリズムについても数式で説明する。5 つの矩形波の加減算は式(2.7)で表される。

𝑓(𝑡) − {𝑓(𝑡 − 𝜏1} + 𝑓(𝑡 + 𝜏1)} − {𝑓(𝑡 − 𝜏2) + 𝑓(𝑡 + 𝜏2)}

= −3

2+ ∑ 2

𝑘𝜋{1 − 2 cos (2𝑘𝜋𝜏1

𝑁 ) − 2cos (2𝑘𝜋𝜏2

𝑁 ) } sin (2𝑘𝜋 𝑁 𝑡)

𝑚=1

. (2.7)

k 次高調波を抑制したいとき、式(2.7)の 1 − 2 cos (2𝑘𝜋𝜏1

𝑁 ) − 2cos (2𝑘𝜋𝜏2

𝑁 ) がゼロになれば良い。よ って式(2.8)を満たすN, τ1, τ2を選ぶ。

τ1= N

2kπ(cos−1{−1

2(1 + 2 cos (2kπ

N τ2))}) (2.8)

ただし、本アルゴリズムについても出力が多値になる組み合わせがある。まずはN, τ1, τ2の大小 による出力波形のパターンを示す。

41 (a) τ1, τ2< 𝑁/4

図 2.7 𝛕𝟏, 𝛕𝟐< 𝑵/𝟒における出力波形 (b) N/4 < τ2 かつ τ1+ τ2< 𝑁/2

図 2.8 𝐍/𝟒 < 𝛕𝟐 かつ 𝛕𝟏+ 𝛕𝟐< 𝑵/𝟐 における出力波形 (c) τ2< N/4 かつ 𝑁/2 < τ1+ τ2

図 2.9 𝛕𝟐< 𝐍/𝟒 かつ 𝑵/𝟐 < 𝛕𝟏+ 𝛕𝟐 における出力波形 (d) 𝑁/4 < τ1, τ2

図 2.10 𝑵/𝟒 < 𝛕𝟏, 𝛕𝟐 における出力波形 以上のパターンをまとめると表 2.2 のようになる。

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表 2.2. 𝝉𝟏, 𝝉𝟐, 𝑵の条件

𝜏1, 𝜏2, 𝑁の条件 取り得る値 二値波形として使えるか

τ12<N

4 −1,0,1,2 NG

τ1<N 4, τ2>N

4, τ12<N

2 1,0 Excellent τ1<N

4, τ2>N

4, τ12>N

2 −1,0,1,2 NG

τ12>N

4 0, ±1, ±2,3 NG

式(2.3)と表 2.2 を満たす𝜏1, 𝜏2の組み合わせを表 2.3 に示す。

表 2.3. 満たす𝝉𝟏, 𝝉𝟐の組み合わせ τ1

N 3k,2N

3k N 6k,5N

6k N 2k,3N

2k N 4k,3N

4k N 5k,3N

5k N 5k,4N

5k

+mN

k (𝑚 = 0,1,2, , , ) τ2 N

4k,3N 4k

N 2k,3N

2k N 6k,5N

6k N 3k,2N

3k N 5k,4N

5k N 5k,3N

5k

条件を満たす例として 3 次と 9 次高調波を抑制する矩形波を図 2.11 に示す(N = 𝟑𝟎, 𝝉𝟏=

𝟏, 𝝉𝟐= 𝟏𝟑)。加減算する信号の波数を増やしたことにより信号の 1 周期内の立ち上がりエッジ、

立ち下がりエッジの個数が増えるためより自由に任意の高調波を抑圧することが可能になって いる。

図 2.11. 3,9次高調波抑制パターンと周波数スペクトラム(𝐍 = 𝟑𝟎, 𝝉𝟏 = 𝟏, 𝝉𝟐= 𝟏𝟑)

式(2.8)を各高調波に対してプロットしたものを図 2.12 に示す。ただし図 2.12における位相 𝜑1および𝜑2は 1 周期 360°に対する角度なので、式(2.9)を使って𝜏1, 𝜏2に直す必要がある。

τ1,2= 𝑟𝑜𝑢𝑛𝑑 [𝜙1,2

360𝑁] (2.9)

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図 2.12複数高調波を抑制する位相シフト量の組み合わせ

図 2.12を用いて 3 次と 5 次高調波を抑制する𝜏1, 𝜏2を選ぶことを考える。3 次と 5 次の交点は (𝜑2, 𝜑1= 146.6°, 23.64°)である。この組み合わせに近いN, τ1, τ2の組み合わせは𝐍 = 𝟕𝟔, 𝝉𝟏=

𝟓, 𝝉𝟐= 𝟑𝟏である。図 2.13にこの組み合わせでの矩形波パターンとスペクトラムを示す。3 次と

5 次高調波は完全に抑制されていないことが分かる。サンプル点が少なく、図 2.12 の交点のシ フト量が完全に再現できていないためである。サンプル点を増やすことで、さらに抑制すること が可能である。本研究は少ないサンプル点で高調波の抑制が実現できる点が優れている。5 章 3 節でその理由を説明する。

図 2.13 3,5次高調波抑制パターンと周波数スペクトラム(𝐍 = 𝟕𝟔, 𝝉𝟏= 𝟓, 𝝉𝟐= 𝟑𝟏)

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