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3. 背理法

1.4 第1章の補足

1. 「対偶の真偽は保たれる」ことの証明

A. 「p⇒qは真である」の言い換え

「p⇒qが真である」は「条件p∪qは常に真である」と言い換えられる.

p q qが真のとき

これは,p.21で学んだベン図でも確認することが出来る.

むしろ逆に「p⇒qが真である」を「条件p∪qは常に真である」として定義することもある.

B. 「すべての命題は真か偽か定まる」ことの言い換え

p.16「数学とは何か?」にあるように,数学においては「真偽が定まる命題」しか考えない.

このことは,次のように表すことができる.

「どんな命題pについても,p∪pは必ず真である」

これを排中律 (law of excluded middle)といい,これを用いて,次が成立すると分かる.

「条件pの否定の否定は,条件pと同値である」

直感的に,これが正しいことは分かるだろうが,排中律を使って厳密に示すことは,かなり難しい*24C. 「対偶の真偽は保たれる」ことの証明

次の3つの事実から,命題p⇒qの真偽と命題q⇒ pの真偽は一致する.

(I) (上のA.より)p⇒qが真である」と「条件p∪qは常に真である」は同値である.

(II) (上のB.より)どんな命題pについても,同値関係p ⇐⇒ pが成り立つ (III) どんな命題p, qについても,p∪qq∪pの真偽は必ず一致する

対偶の真偽は保たれる どんな条件pqに関しても,命題「p⇒q」と,その対偶「q⇒ p」は真偽が一致する.

(証明)「命題p⇒qが真である」⇐⇒p∪qは常に正しい」(上の(I)より)

⇐⇒q∪pは常に正しい」(上の(III)より)

⇐⇒q∪pは常に正しい」(上の(II)より)

⇐⇒「命題q⇒ pは真である」(上の(I)より)

*24 「厳密に」とは,ベン図などを使わず,記号の定義のみ用いることを意味する.このp ⇐⇒ pを示すには,qrが真なら ば,pqprが真である · · · ·⃝」を認める必要がある.3

そのうえで,概略を示す.まず「排中律が等しい事」を言い換えて「pp」が示される.逆の「pp」を示すには「pp を示せばよい.それには,たった今示したpp⃝から3 ppppが正しいので,これに排中律などを用いればよい.

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2. 「または」 「かつ」の証明

「qかつr」を示す方が,「qまたはr」を示すよりも,分かりやすい.

A. 基本的な「qかつr」の証明

一般に,「qかつrを示す」ためには,qであること」rであること」をどちらも示せばよい.

B. x=aかつy=bの証明

p.29で学んだように,x=aかつy=b」と「(x−a)2+(y−b)2=0」は同値である.

そのため,「x=aかつy=b」を示すために,(x−a)2+(y−b)2 =0」を示してもよい.

特に,x=y=zを示すために,(x−y)2+(y−z)2+(z−x)2 =0」を示すこともある.

【練習58「かつ」の証明】

(1) kは自然数とする.n=2k+1のとき,n2−nは偶数であり,かつ,n2−18で割り切れることを 示せ.かつ,n4−116で割り切れることを示せ.

(2) x2+y2=x+y=2のとき,x=1かつy=1であることを示せ.

(3) x2+y2+z2=xy+yz+zxのとき,x=y=zであることを示せ.

【解答】

(1) まず,n2−nについて

n2−n=(2k+1)2−(2k+1)=4k2+2k=2k(2k+1)

であるから偶数になる.また,n2−1について n2n=n(n1)であり,nn1 は必ずどちらかが偶数であること からも示される.

n2−1=(2k+1)2−1=4k2+4k=4k(k+1)

である.kk+1は必ずどちらかが偶数であるから,k(k+1)は偶数 になる.よって,4k(k+1)=n2−18の倍数になる.

(2) (x−1)2+(y−1)2=0を示せばよい.

(x−1)2+(y−1)2=x2−2x+1+y2−2y+1

=(x2+y2)−2(x+y)+2=2−4+2=0

となって,示された.

【別解】y=2−xx2+y2=2に代入して

x2+(x−2)2=2⇔2x2−4x+2=0⇔(x−1)2=0

よって,x=1である.y=2−xに代入してy=1も成り立つ.

(3) (x−y)2+(y−z)2+(z−x)2=0を示せばよい.

(x−y)2+(y−z)2+(z−x)2=2(x2+y2+z2)−2xy−2yz−2zx

=2(xy+yz+zx)−2xy−2yz−2zx=0 となって,示された.

C. 基本的な「qまたはr」の証明

一般に,「qまたはrを示す」ためには,「条件qが成り立たないならばrである」ことを示せばよい*25

【練習59「または」の証明〜その1〜】

(1) ac=bcならば,c=0またはa=bを示せ.

(2) ab=0ならば,a=0またはb=0を示せ.

【解答】

(1) c,0ならばa=bを示せばよい.c,0のとき,ac=bcの両辺をcで 割ってa=bを得る.

(2) a,0ならばb=0を示せばよい.a,0のとき,ab=0の両辺をa 割ってb=0を得る.

D. x=aまたはy=bの証明

p.30で学んだように,x=aまたはy=b」と「(x−a)(y−b)=0」は同値である.

そのため,「x=aまたはy=b」を示すために「(x−a)(y−b)=0」を示してもよい.

【練習60「または」の証明〜その2〜】

ab+1=a+bのとき,a=1またはb=1を示せ.

【解答】 (a−1)(b−1)=ab−a−b+1=(ab+1)−a−b=a+b−a−b=0 であるから,a=1またはb=1が成り立つ.

61:「少なくとも1つは1」の証明】

a+b+c=abc, ab+bc+ca=−1のとき,a, b, cの少なくとも1つは1であることを示せ.

【解答】「a,b,cの少なくとも1つは1である」ことと,(a−1)(b−1)(c−1)= 0が成り立つ」ことは同値である.ここで

(a−1)(b−1)(c−1) =abc−ab−bc−ca+a+b+c−1

=abc−(ab+bc+ca)+(a+b+c)−1

=abc−(−1)+abc−1=0

よって,a, b, cの少なくとも1つは1であることが示された.

*25 もしくは「条件rが成り立たないならばqである」ことを示せばよい.

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