7-1eDIPS EC1.5 の SEM 像
Fig.7-1は、当研究室で撮影したeDIPS EC1.5のSEM像である。このeDIPS 1.5 は、比較法のように一直線になっているものを撮影した。
Fig.7-1 eDIPS EC1.5のSEM像 左)スケール100 µm 右)スケール20 µm
7-2 バルクでの SWCNT フィルムのパワーファクターの測定方法
試料長16mmのeDIPS EC1.5の測定は、パワーファクターPを求めているので、P測定 の測定方法について記述する。
Fig. 7-2-1 パワーファクターを測定する際の試料のセッティング図
ゼーベック係数𝑆と電気抵抗率ρが測定できるように、試料に対し、温度測定、電圧測定、
電流を流す銅線、温度勾配を付けるためのヒーターをセットする。
47 ゼーベック係数測定について
① ヒーターに電流を流し温度勾配を試料に付ける
② 熱電対を用いて試料の2点間の温度(𝑻𝒉𝒐𝒕,𝑻𝒄𝒐𝒍𝒅)から温度差∆𝑇を求める。
③ 同時に、電圧差𝛥Vを測定する
④ 測定誤差をなくすために、ヒーター電流を変えて、②と③の作業を複数回実行(※)
⑤ Fig. 7-2-1のように、温度差∆𝑇と電圧差𝛥Vのグラフの傾きと測定線のゼーベック係数
を足すことにより、試料のゼーベック係数𝑆が分かる。
式では、𝑆 =-∆𝑉∆𝑇+ 𝑆測定線と表せる(※1)
(※)最小2乗法により、誤差を減らす。
(※1) Fig. 7-1-3より、実際に熱電対を用いて測定される熱起電力は、熱電対の熱起電力も
含まれるので、
𝛥V = − ∫ 𝑆𝐴 𝑇𝐶
𝑇0 𝑑𝑇 − ∫ 𝑆𝑠𝑎𝑚𝑝𝑙𝑒 𝑇𝐻
𝑇𝐶 𝑑𝑇 − ∫ 𝑆𝐴 𝑇0 𝑇𝐻
𝑑𝑇
= ∫ (𝑆𝑇𝑇𝐻 𝐴− 𝑆𝑠𝑎𝑚𝑝𝑙𝑒)𝑑𝑇
𝐶
If 𝑇𝐻− 𝑇𝐶≈ 𝑠𝑚𝑎𝑙𝑙 ≈ (𝑆𝐴− 𝑆𝑠𝑎𝑚𝑝𝑙𝑒)(𝑇𝐻− 𝑇𝐶) ≡ ∆𝑇
⇒𝑆𝑠𝑎𝑚𝑝𝑙𝑒 = −∆𝑇 𝛥V+ 𝑆𝐴
Fig. 7-2-1 測定例 Fig. 7-2-2 熱電対と試料部の温度
48 電気抵抗率測定について
4端子法を用いる。
① 外側の線を用いて、試料に電流(正
𝐼 、負 −𝐼
)を流す。② 測定線Aを用いて、電圧(
𝛥𝑉
+、 𝛥𝑉
−)を測定する。③ ②の結果は、
𝛥𝑉
+= 𝑅𝐼 + 𝛥𝑉
𝑠𝛥𝑉
−= −𝑅𝐼 + 𝛥𝑉
𝑠測定回路に生じる熱起電力などの起電力𝛥𝑉𝑠を消すことにより、𝑅は 𝑅 = 1
2𝐼(𝛥𝑉+− 𝛥𝑉−) と表せる。
④ 電気抵抗率ρはρ = RS / d より求められる。
𝑆:試料の断面積 d:二つの熱電対の端子間距離
7-3 測定される電圧に電極幅が与える効果(クロメル線)
実験概要
クロメル線を設置した電極上で測定される電圧の確認を行った。
試料基板情報
SiO2基板(長さ30 mm 幅5 mm 厚み0.5 mm)をケニックス株式会社から購入した。
このSiO2基板上に、メタルマスクを設置し、電極の型を作成し、Niを0.5 nm、Au20 mm を連続で蒸着することでEタイプ回路を作成した。その後、Fig.7-2-1に示すように、未知 試料と参照試料ともにeDIPS EC1.5を設置した。また、両ギャップ部分の試料の温度勾配 を等しくするために、ヒーターと試料の距離を5 mm以上開け、ヒーターの下に銀板を設 置し、銀板と基板は熱伝導率が良い熱伝導グリース(ナノダイヤモンドグリース)を挿入 した。
測定条件
ヒーター電流を0,3,6,9,12,15 mAとし 𝛥𝑉sと𝛥𝑉rを測定した。
49
Fig.7-3-1 試料を設置したSiO2基板画像。未知試料と参照試料ともに、クロメル線(ϕ = 25 µm)を使用。
実験結果
Fig.7-3-2ヒーター電においてを0,3,6,9,12,15 mAで測定された𝛥𝑉sと𝛥𝑉rのグラフを示す。
𝛥𝑉sは𝛥𝑉rで線形に変化することが分かった。3-7節と同様にして、クロメル線において測定 される電圧に電極幅が与える効果の確認をした。
したがって、𝑙𝑠 = 𝑑0+ ∆(2𝑤)を導入する。
ここで、𝑑0:電極の内側の距離、2𝑤:2つの電極幅の合計、∆:パラメータ 𝑆𝑠 = −𝛼𝑑𝛥𝑉𝑑𝛥𝑉𝑠
𝑟 𝑙𝑟
𝑙𝑠(𝑆𝐴𝑢− 𝑆𝑟) + 𝑆𝐴𝑢 に 、 𝑆𝑟= 𝑆𝑠 , 𝑆𝐴𝑢= 0(µV/K) , 𝛼 = 1 , 𝑙𝑟 = 1.1 (mm) と 𝑙𝑠(= 𝑑0+ ∆𝑤) = 0.19 + ∆0.26 (mm)、𝑑𝛥𝑉𝑑𝛥𝑉𝑠
𝑟= 0.27を代入。また、測定データに 5%の誤差が
あると考えると、
𝑆𝑠= 0.27 × (1.05~0.95) 1.1 0.18 + ∆0.23𝑆𝑠
∴ ∆= 0.51 ± 0.06
クロメル線においても、電極上で測定される起電力は試料の起電力の半分(∆= 0.5)となり、
試料長(測定間距離)を𝑙𝑠 = 𝑑0+ 𝑤と定義する。
50 -3.5
-3 -2.5 -2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5
-14 -12 -10 -8 -6 -4 -2 0 2
ΔVs(μV)
ΔVr(μV)
Fig.7-3-2 ヒーター電流において0,3,6,9,12,15 mAで測定された𝛥𝑉s対𝛥𝑉r。未知試料と参 照試料ともにクロメル線を使用。
7-4 カーボンナノチューブフィルムの測定間距離を短くした場合のモデル計
算 パターン 2
CNTフィルムをFig.7-4-1のようなモデル図と回路図とする。
Fig.7-4-1 CNTフィルムのモデル図と回路図。モデル図①:長さ𝑙0のバンドルが接触しあ
いフィルムを構成している図。モデル図②:モデル図①を簡略化した図。バンドルの長さ𝑙0 に対して接触点1つある。したがって、測定間距離𝐿(< 𝑙0)に対して、接触点がある確率は𝑙𝐿
0、 接触点がない確率は𝑙0𝑙−𝐿
0 となる。回路図:モデル図②の回路図。接触点ありの場合の電圧と
51
電気抵抗を𝑉1、𝑅1、接触点なしの場合の電圧と電気抵抗を𝑉2、𝑅2とまとめた。
測定間距離𝐿に対して、以下のように電圧と電気抵抗がまとめられる。
接触点ありの場合の電圧と電気抵抗 𝑉1= 𝑆𝑙𝐿
0(∆𝑇 − ∆𝑇𝐶) + 𝑆𝐶∆𝑇𝐶 , 𝑅1= 𝜌0𝐿 + 𝑟𝐶
接触点なしの場合の電圧と電気抵抗 𝑉2= 𝑆𝑙𝐿
0(∆𝑇 − ∆𝑇𝐶) , 𝑅2= 𝜌0𝐿
ここで、バンドルの長さ𝑙0に対する温度差:∆𝑇、接触点のゼーベック係数:𝑆𝐶、接触点の温 度差:∆𝑇𝐶、バンドルの接触点以外のゼーベック係数:S、バンドルの接触点以外の温 度::(∆𝑇 − ∆𝑇𝐶)𝑙𝐿
0、バンドルの電気抵抗率:𝜌0、コンタクトの電気抵抗:𝑟𝐶とする。
また、回路図のように、接触点ありの確率が𝑙𝐿
0、接触点なしの確率が𝑙0𝑙−𝐿
0 となるので、測定 される平均の電圧∆𝑉̅̅̅̅は、ミルマンの定理から、
∆𝑉̅̅̅̅ = 𝑙𝐿0
𝑉1
𝑅1+𝑙0− 𝐿 𝑙0
𝑉2 𝑅2
𝑙𝐿0 1
𝑅1+𝑙0− 𝐿 𝑙0 1
𝑅2
=𝐿𝑉1
𝑅1+ (𝑙0− 𝐿)𝑉2 𝑅2
𝐿 1
𝑅1+ (𝑙0− 𝐿) 1 𝑅2
=𝐿𝑅2𝑉1+ (𝑙0− 𝐿)𝑅1𝑉2
𝐿𝑅2+ (𝑙0− 𝐿)𝑅1
測定間距離𝐿に対してついている平均の温度差∆𝑇̅̅̅̅は、
∆𝑇̅̅̅̅ = 𝐿 𝑙0(𝐿
𝑙0(∆𝑇 − ∆𝑇𝐶) + ∆𝑇𝐶) +𝑙0− 𝐿 𝑙0 (𝐿
𝑙0(∆𝑇 − ∆𝑇𝐶)) = 𝐿
𝑙0∆𝑇𝐶+𝐿
𝑙0(∆𝑇 − ∆𝑇𝐶) = 𝐿 𝑙0∆𝑇 以上から、計算される平均のゼーベック係数𝑆̅は、
𝑆̅ =∆𝑉̅̅̅̅
∆𝑇̅̅̅̅
=
𝐿𝑅2𝑉1+ (𝑙0− 𝐿)𝑅1𝑉2 𝐿𝑅2+ (𝑙0− 𝐿)𝑅1
𝑙𝐿0∆𝑇
=𝐿(𝜌0𝐿) {𝑆𝐿
𝑙0(∆𝑇 − ∆𝑇𝐶) + 𝑆𝐶∆𝑇𝐶} + (𝑙0− 𝐿)(𝜌0𝐿 + 𝑟𝐶)𝑆𝐿
𝑙0(∆𝑇 − ∆𝑇𝐶) {𝜌0𝐿2+ (𝑙0− 𝐿)(𝜌0𝐿 + 𝑟𝐶)}𝐿
𝑙0∆𝑇
=𝜌0𝐿{𝐿𝑆(∆𝑇 − ∆𝑇𝐶) + 𝑙0𝑆𝐶∆𝑇𝐶} + (𝑙0− 𝐿)(𝜌0𝐿 + 𝑟𝐶)𝑆(∆𝑇 − ∆𝑇𝐶) {𝜌0𝐿2+ (𝑙0− 𝐿)(𝜌0𝐿 + 𝑟𝐶)} ∆𝑇
=𝑙0𝜌0𝐿{𝑆(∆𝑇 − ∆𝑇𝐶) + 𝑆𝐶∆𝑇𝐶} + (𝑙0− 𝐿)𝑟𝐶𝑆(∆𝑇 − ∆𝑇𝐶) {𝑙0𝜌0𝐿 + (𝑙0− 𝐿)𝑟𝐶} ∆𝑇
とまとめられ、
𝐿 = 𝑙0の時、𝑆̅ =𝜌0𝑙02{𝑆(∆𝑇−∆𝑇𝜌 𝐶)+𝑆𝐶∆𝑇𝐶}
0𝑙02∆𝑇 = 𝑆(∆𝑇−∆𝑇∆𝑇 𝐶)+ 𝑆𝐶∆𝑇𝐶
∆𝑇
52 𝐿 → 0の時、𝑆̅ =𝑙0𝑟𝐶𝑆(∆𝑇−∆𝑇𝑙 𝐶)
0𝑟𝐶∆𝑇 = 𝑆(∆𝑇−∆𝑇∆𝑇 𝐶) となる。
x軸を測定間距離𝐿、y軸を計算されるゼーベック係数とすると、Fig.7-4-2のように表せる。
Fig.7-4-2 測定間距離𝐿とゼーベック係数の関係
ミルマンの定理
Fig.7-4-3に示すように多数の並列つなぎがある場合測定される電圧𝑉𝑎𝑏は、
𝑉𝑎𝑏=
𝐸1𝑅1+𝐸2 𝑅2+・・・
1 𝑅1+1
𝑅2+・・・となる。
Fig.7-4-3 多数の並列つなぎがあるモデル図
53
参考文献
1. 独立行政法人物質・材料研究機構 調査分析レポート熱電
2. Hone, J. et al. Thermoelectric Power of Single-Walled Carbon Nanotubes. Phys. Rev.
Lett. 80, 1042 (1998).
3. Meijo Nano Carbon Co., Ltd. [http://www.meijo-nano.com/en/].
4. 粟野祐二 「カーボンナノチューブの電子デバイス応用」
5. 齋藤弥八 カーボンナノチューブの材料科学入門参考
6. T. Saito, S. Ohshima, T. Okazaki, S. Ohmori, M. Yumura, and S. Iijima, J. Nanosci.
Nanotechnol. 8, 6153 (2008).
7. Y. Nakai, et al., Appl. Phys. Express.7,025103(2014) 8. W. Zhou, et al., Small, 12. 3407-3414(2016)
9. D. Hayashi, et al., 2016 Appl. Phys. Express 9 025102 10. D. Hayashi, et al., 2019. Jpn. J. Appl. Phys. 58 075003.
11. D. Hayashi, et al., 2020. Appl. Phys. Express13 015001
12. J. Wu, H. Schmidt K. K. Amara, X. Xu, G. Eda, and B. Özyilmaz, Nano Lett. 14, 2730 (2014).
13. MMR Technologies、Inc [http://www.mmr-tech.com/seebeck.php]