5. ENSO 指標による GMSL データの補正
6.2 考察
「1 はじめに」で述べたように、衛星海面高度計によって得られたデータは、各データ センターで衛星軌道の決定や海洋潮汐の補正をはじめとする様々な処理を加えて海面高度 のデータとして公開される。このとき、データセンターごとに異なる軌道情報や潮汐モデル を用いて処理しているため、公開されるデータにも差異が生じる。その影響が現れやすいの は、衛星の高度の決定であろう。JASON 衛星等の軌道決定には、さらに高度の高いところ にあるGNSS 衛星や地上からのレーザ測距を用いるが、データセンターによってGNSSの 軌道情報が異なっている可能性も考えられる。衛星の軌道高度が異なると、それは直接推定 された海面高度に反映されてしまう。ほかにも、海洋潮汐のモデルによる補正が差異を生む 可能性が考えられる。海面の長周期の変動を観測するためには半日や 1 日ごとに起こる海 洋潮汐による海面高変化を取り除く必要がある。この時用いる潮汐モデルが各データセン ターによって異なっていると、最終的なデータに差異が生まれる。また、NOAAのデータ特 有の要因として、氷河性地殻均衡(GIA: Glacial Isostatic Adjustment)の補正が考えられる。
GIAとは、陸域の氷床の量の変化に伴い見かけ上海水面が低下する現象(図6-5)のことで ある。NOAAのデータのみGIAによる見かけ上の海水面低下の影響が除去されていない。
(D.P. Chambers et al. (2016))
図 6-5:気象庁 HP より、GIA の模式図。
このような様々なデータ処理の方法によって GMSL のデータの差異が生まれていることが 推察される。
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7 . まとめと今後の展望
計算の結果、全海面上昇量中の熱膨張による成分は約45%となった。これはYi et al. (2017) などの先行研究で報告されている割合に近い。さらに正確な計算を行うためには今回一定 であるとした塩分濃度についても各海域や各観測データに分けて計算を行う必要があると 考えられる。
また、海面上昇の大きな一因である陸水の流入量について、重力変化を計測する衛星シス テムであるGRACEを用いて陸域の重力変化から計算し、熱膨張、海面高度、重力の3つの 種類のデータがお互いに調和的であるかを比較検証していきたい。このとき、全球平均とし ての計算はもちろん、本研究で行ったような各海洋での個別の計算も行いたいと考えてい る。
ENSO指標によってGMSLデータを補正するという試みについては、過去25年のEl Niño 時についてはそれに伴う変動を取り除くことができた。一方、2010-2011年のLa Niñaにつ いては、それに伴う海面のグローバルな下降を取単なる ENSO 指数による補正では除くこ とができなかった。IODをはじめとする他の気候変動の要因を考慮する必要があるだろう。
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8. 謝辞
最後に、この論文を書くにあってご協力をいただいた方に感謝の意を伝えさせていただ きます。まず担当教官の日置幸介先生には、この非常に奥深く興味深いテーマを与えていた だき、データの解析方法などについても多くの助言をいただきました。先生がいなければこ の卒業論文が完成することはありませんでした。本当にありがとうございました。また海洋 気候研究室の見延庄士郎先生には海水の熱膨張量の計算について多大なご協力をいただき、
博士 2 年の寺田さんには海洋の熱膨張量の地図の考察についてのアドバイスをいただきま した。最後に、固体系ゼミの皆さんには発表の際に多くのご指摘をいただきました。特に同 じ宇宙測地学研究室の博士 3年の中島さん、博士 2年の姫松さんと修士2年の飯尾さんに はPCのセットアップからプログラミングなど研究の多くの場面でお世話になりました。こ の場を借りて御礼申し上げます。