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第 3 章 小規模セルによる構造不均一性の包括的検討 18

3.3 表面・粒界の解析結果および考察

3.3.1 表面の効果

単結晶ナノワイヤの引張応力−ひずみ曲線を図3.7にまとめて示す.図には先の単 結晶バルクで示した完全結晶での静力学解析結果,ならびに分子動力学結果を1例だ け併せて示した.{100}表面,{430}表面のナノワイヤいずれも静力学・完全結晶の応 力ひずみ曲線より高い応力を示しているが,これは表面原子の割合が高いナノワイヤ の効果と考えられる.{100}表面と{430}表面で応力急減を生じるひずみに差は生じ ているものの,バルクの1 Kの場合と同様に,初速度分布を変えても不安定開始ひず みに大きな違いは見られない.

Strain, εzz

Stress, σzz, GPa

Si wire 5x5x5 cubic cell (1000 atoms), T=1K

static analysis

bulk wire (100)-(010) surface

wire (430)-(340) surface

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

10 20 30 40

Fig.3.7 Stress–strain curves under tension (wire).

{100}表面のナノワイヤにおけるdetBijαの分布変化ならびにdetBijα <0原子数の変 化を図3.8に示す.detBijα のばらつきは,ナノワイヤでは表面原子と内部原子で異な る分布ピークを有すると予想されるので,標準偏差を用いるのは適切ではないが,こ れまでの統一した評価基準としてここでも採用した.引張によってエラーバーの幅が 著しく減少し,結晶内部と表面原子の力学状態の差が小さくなっていることが示唆さ

れる.後述の粒界を有する系を含め,その必然性は現時点では証明できないが,先の

T = 300 Kの時と同じく,標準偏差の下限が0に達したときにばらつきが再び大きく

なり始める.この変化は,図3.9に示したように{430}表面のナノワイヤではより顕著 である.図3.9の下のdetBijα <0の原子数変化を見ると,ひずみ0.15近傍から,引張 前に存在したdetBijα <0原子が減少し,それが底打ちになるのが図中1 で示したばら つきが最小となる点である.その後再び緩やかに増加するが,この12 間の原子配 置変化を見ても,図3.6で示したような結晶内部の乱れを見つけることは困難である.

唯一見つけた変化は,図3.10に示すように1つの表面の凹凸が強調されるような変形 をしている点である.これらから推測される{430}ナノワイヤの引張におけるメカニ ズムは,⃝1 までは引張を駆動力とした系の均一化ならびに表面原子の安定化,⃝1 以降 は表面部分の力学状態が,引張りに対して著しく変化する領域,と考えることができ る.一方,図3.8の{100}ナノワイヤの引張初期における,detBijα <0原子の複雑な 変化であるが,εzz <0.1の振動している領域では,図3.11(a)に示したように(010)お よび(0¯10)表面上でdetBijα <0原子の位置が変化している(赤く着色した原子).一方,

ひずみ0.1近傍でdetBijα < 0の原子が増加しているが,このとき図3.11(b)に示すよ うにdetBijα <0が存在する表面は(010)-(0¯10)から(100)-(¯100)にスイッチし,かつ一 様に分布して変化しなくなる(図3.8).ひずみ0.2近傍でdetBijα <0原子はわずかに 減少するが,図3.11(c)に示したように表面稜線上のdetBijα <0原子列が消滅してい る.8セット全てで同様の変化が見られたことから,(100)と(010)という同一指数面 ながら,ダイヤモンド構造からの切り出し方による表面・エッジ部構造に起因した挙 動と結論づけられる.

Strain, εzz

Number of detBij<0 atomsα

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

0 200 400

Si nanowire (100)-(010) surfaces

Average of 6x6 determinant, ΣdetBij/N, normalized by detBij at perfect lattice

α Stress, σzz, GPa

T=1K

α

Static analysis (perfect lattice)

Stress-strain curve

-0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0 10 20 30 40

Fig.3.8 Change in average, standard deviation of detBijα and number of detBijα <0 atoms ((100)-(010) surface wire).

α

Strain, εzz

Number of detBij<0 atoms

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

100 200 300 400 500

Si nanowire (430)-(340) surfaces

Average of 6x6 determinant, ΣdetBij/N, normalized by detBij at perfect lattice

α Stress, σzz, GPa

T=1K

α

Static analysis (perfect lattice)

Stress-strain curve

1

2

-0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0 10 20 30 40

Fig.3.9 Change in average, standard deviation of detBijα and number of detBijα <0 atoms ((430)-(¯340) surface wire).

x y z

L

(a) ε zz =0.27 (b) ε zz =0.40

Fig.3.10 Snapshots of side surface of (430)-(¯340) nanowire at Points 1 and

2 in Fig.9.

x y

z

L

(a) ε zz =0.05 (b) ε zz =0.15 (c) ε zz =0.25

Fig.3.11 Snapshots of side surface of (100)-(010) nanowire. Red circles indicate detBijα <0 atoms.

Strain, εzz

Stress, σzz, GPa

Si grain boundary 5x5x10 cell (2000 atoms) static analysis

bulk (case1)

bamboo wire GB laminate

T=1K

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

10 20 30 40

Fig.3.12 Stress–strain curves under tension (Σ5 twist grain boundary).

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