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表記の詳細

ドキュメント内 日本語話し言葉コーパスの構築法 (ページ 65-89)

2.3 基本形の表記法

2.3.2 表記の詳細

本節では,基本形の詳細について述べる。原則として品詞別に説明するが,必ずしも全ての品詞に触れる訳 ではなく,あくまで表記する上で注意が必要と判断されたものに絞る。なお,本節で述べる品詞は,CSJの形 態論情報付与で用いられている品詞(3.3節参照)とは必ずしも一致しない。あくまで,転記テキストにおける 基本形の表記方針を説明するために品詞の枠組みを導入しただけであり,厳密な体系とはなっていない点に注 意されたい。

2.3.2.1 名詞

【表記の方針】  

¦ 一般に表記が漢字と平仮名で揺れる場合,原則として使用可能な漢字の範囲内で漢字表記する。

¶ ³

噂(×うわさ),鞄(×かばん),言葉(×ことば)

µ ´

¦ 仮名書きする慣習の強いものは平仮名で表記する。

¶ ³

うち(×家),おかず(×お数),はがき(×葉書き),くじ(×籤),ごみ(×塵),おかみさん(×お上さん), あだ名(×仇名),うま煮(×旨煮),住まい(×住居),なま物(×生物)

µ ´

¦ 専門用語や俗語などで片仮名書きする慣習の強いものについては,片仮名で表記することもある。

¶ ³

フッ素(×弗素),ヒトゲノム計画(×人ゲノム計画),ト書き(×と書き),ノミ行為(×のみ行為), コンロ(×焜炉),コマ(×齣),ピンはね(×ぴんはね),学ラン(×学らん),カラオケ(×からおけ)

µ ´

その際,例えば専門用語では「ヒト ゲノム」のように「人」を片仮名で表記するが,それ以外では「人」

と漢字表記するといった具合に,使う文脈によって書き分けるものもある。

¦ 動植物名(魚介名,虫名を含む)については,原則として片仮名で表記する。

¶ ³

リス, イルカ, アサガオ

µ ´

ただし,「猫舌」や「猫に小判」のように,熟語や諺,慣用句の中で一般的に漢字表記されることが多いも のについては,表記の統一という観点から,単独に出現する場合も含めて例外的に漢字表記とする。この ように例外的に漢字表記するものについては,転記作業用の辞書(2.3.6節参照)に個別に登録し,揺れが 生じないよう努めた。

¦ 固有名詞については必ずしも本節の方針に従わない。詳細は2.3.2.2節を参照されたい。

【形式名詞と実質名詞】名詞には,「言われた通り作った」の「通り」のように,それ自身では実質的な意味を 表わさず,連体修飾語を受けて名詞として機能する形式名詞と,「大きな通りを渡る」の「通り」のように,

それ自身が実質的な意味を表わす実質名詞とがある。形式名詞と実質名詞の表記については,以下の3種類 に分けることができる。

2.3 基本形の表記法 47

形式名詞を平仮名で,実質名詞を漢字で表記するもの。例えば以下の語がこれに相当する。

¶ ³

形式名詞の例 実質名詞の例

うち 今週の うち に終える。遊んでる うち に雨はやんだ。 闘志を 内 に秘める。内 に篭もった性格。

くせ その くせ 成績は良い。 癖 はなかなか直らない。髪をいじる 癖 がある。

ふり 考える ふり をする。寝ている ふり をする。 踊りの 振り を教わる。身振り で相手に伝える。

わり おいしい わり には安い。口が悪い わり には優しい。 割り に合わない仕事をする。割り を食う。

µ ´

形式名詞,実質名詞のどちらであっても漢字で表記するもの。例えば以下の語がこれに相当する。

¶ ³

形式名詞の例 実質名詞の例

通り 言われた 通り 作った。この例に見られる 通り。 大きな 通り を渡る時は注意する必要がある。

訳 遊んでいる 訳 ではない。こんなに早く来る 訳 がない。 遅れてきた 訳 を説明しなさい。

µ ´

形式名詞,実質名詞のどちらであっても平仮名で表記するもの。例えば以下の語がこれに相当する。

¶ ³

形式名詞の例 実質名詞の例

こと 塾に行く こと にする。 始めない こと には仕方ない。 こと が こと だけに厄介だ。

もの 提出はした もの の自信はない。勉強とは難しい もの だ。 もの はいいが値段が高いのが難点だ。

ところ 実の ところ よく知らない。見た ところ で分からない。 そこはどんな ところ ですか。

やつ それはつまり忘れちゃったって やつ か。 遅くまで残ってた やつ は多めに払って。

µ ´

ただし,「こと」「もの」「ところ」については,複合語の場合に漢字表記することもある。

¶ ³

こと:物事,仕事,願い事,事納め, もの:物分かり,物静か,夏物, ところ:台所,居所,泣き所

µ ´

【送り仮名の付け方】送り仮名は以下の規則に従って付与する。

¦ 名詞の中には仮名を送るものがある。例えば以下の語がこれに相当する。

¶ ³

辺り,哀れ,勢い,後ろ,傍ら,幸い,幸せ,半ば,情け,斜め,誉れ

µ ´

¦ 活用語から転じた名詞,および活用語に「さ」「み」「げ」などの接尾語が付いて名詞になったものについ ては,元の語の送り仮名の付け方に従う。

¶ ³

動き,戦い,眺め,残り,暑さ,大きさ,明るみ,惜しげ

µ ´

¦ 送り仮名の有無に揺れがある場合は,原則として送り仮名を付ける方を採用する。

¶ ³

書き留め(×書留),待ち合い室(×待合室),小包み(×小包),買い値(×買値),踏み切り(×踏切),後ろ(×後)

µ ´

¦ 慣用的に送り仮名を付けないものについては,送り仮名は付けない。

¶ ³

関 取,頭 取,取締 役,取締 法 (地位・身分・役職・法令等の名) 博多 織,小倉 織,加賀 染,日光 塗,金剛 塗,越前 彫  (工芸品の名称)

氷,合 図,立 場,座 敷,建 物,物 置,番 組,乗組 員,役 割,葉 巻,物 語,植 木,並 木,浮 世絵 (その他)

µ ´

¦ また,送り仮名の有無に関し,使い分けが必要なものも幾つかある。典型的なものを以下に挙げる。

¶ ³

係/係り [無] 特定の仕事の役割名を表わす場合。「出納係」「給食係」など。

[有] それ以外の場合。「係り受け」など。

組/組み [無] 組織,グループに関する語の場合。「1年2組」「組合」「組頭」「組員」など。

[有] それ以外の場合。「組み合わせ」,「組み紐」など。

舞/舞い [無] 実際の踊りに関することを表わす場合。「舞を舞う」「獅子舞」「舞子」「舞扇」など。

[有] 動詞,および動詞が名詞化した語の場合。「舞う」,「振る舞う→振る舞い」など。

折/折り [無] 時を表わす語の場合。「折々」「折から」「折しも」「折節」「時折」など。

[有] それ以外の場合。「折り紙」「折り合い」「折り詰め」など。

巻/巻き [無] 「荒巻」「絵巻」「絵巻物」「竜巻」「虎の巻」「葉巻」「昆布巻」は送り仮名を付けない。

[有] それ以外の場合。「巻き舌」「巻き尺」「鉢巻き」「首巻き」など。

隣/隣り [無] 「隣組」「隣近所」は送り仮名を付けない。

[有] それ以外の場合。「隣り」「両隣り」「隣り合わせ」など。

話/話し [無] 下記以外の場合。「話がある」「面白い話だった」など。

[有] サ変動詞として用いられる場合:「お話しする」「お話ししていただく」など。

µ ´

なお,動詞の場合は送り仮名を付与するが,名詞の場合は一律送り仮名を付与しないものもある。

¶ ³

志/志す [無] 名詞の場合。「青雲の志」,「志の高い若者」など。

[有] 動詞の場合。「志す」。

煙/煙る [無] 名詞の場合。「煙」「湯煙」「水煙」など。

[有] 動詞の場合。「煙る」「煙たがる」。 印/印す [無] 名詞の場合。「印」「合い印」など。

[有] 動詞の場合。「印しておく」。

µ ´

【代名詞】漢字と平仮名で表記が揺れるものについては漢字で表記する,という表記の方針(2.3.1.2節参照)に 従い,代名詞も可能な範囲で漢字で表記する。

¶ ³

私(わたし,わたくし),僕,我々,我ら,誰,皆(みな),幾つ

µ ´

ただし,当て字に関する表記原則(2.3.1.2節参照)や慣習に従い,平仮名表記するものも少なくない。例え ば以下の語がこれに相当する。

¶ ³

あなた(×貴方,彼方,貴女),みんな(×皆,皆な)a,いつ(×何時),いずれ(×何れ・孰れ)

これ(×此,是など),ここ(×此所,此処),こちら(×此方),それ(×其れ),あれ(×彼),どれ(×何れ)b

a 読みが「みんな」の場合は平仮名表記,「みな」の場合は漢字表記とし,書き分ける。

b「こそあど系」の代名詞は,一律平仮名表記とする。

µ ´

2.3.2.2 固有名詞

【表記の方針】基本形は原則として,2.3.1節で述べた方針(以下「基本形の表記方針」)に従って書き記し,表 記の統一を図るが,固有名詞については,以下の方針に従って表記する(以下「固有名詞の表記方針」)。

¦ 使用可能な文字(2.3.1.1節参照)のみを使用し,それ以外のものは一切用いない。

¦ 当該の固有名詞本来の表記,あるいは一般的に認知されている表記を,把握できる範囲で採用する。

¦ 一般に複数の表記が用いられている場合には,できるだけ基本形の表記方針に沿うものを用いる。ただ し,使用頻度や認知度に明確な差がある場合については,頻度が高く広く認知されている表記を採用する。

¦ 外国の人名や地名の場合,「ベートーベン/ベートーヴェン」のように,表記に揺れが見られることも少 なくない。このような場合には,2.3.3節に示す基準に従って表記する。

2.3 基本形の表記法 49

【人名】 

¦ 日本人名(芸名やペンネームなどを含む)は,原則として,2.3.1.1節に記した字種の範囲で,一般に用い られている表記を使用する。

¶ ³

椎名林檎, いソノてルヲ,つのだひろ(×つのだ ☆ ひろ),藤岡弘(×藤岡弘 、)

µ ´

¦ 外国人名は原則として片仮名を用いて表記する(実際の表記法については2.3.3節参照)。

¶ ³

ブッシュ大統領,ジャッキー・チェン,(Aオージェー;O・J)・シンプソン

µ ´

ただし,中国人名,韓国人名のうち,著名な人名で,漢字表記が可能なものは,漢字を用いて表記する。

¶ ³

毛沢東,魯迅,李登輝,金大中,金日成

µ ´

¦ 漢字表記する人名(日本,中国,韓国の人名)のうち,知名度の高い政治家(総理大臣など)や著名な作家,

芸術家,芸能人などについては,2.3.1.8節に挙げた「JIS第1水準/第2水準」に関する規定にかかわら ず,固有名詞本来の表記を採用する(以下「漢字の使用範囲の拡張」)*4

¶ ³

小 渕 元首相(本来の規則ではJIS第1水準「淵」を使用)

µ ´

ただし,「新字/旧字」の別については,一律新字を採用する。

¶ ³

万屋錦之助(×萬屋錦之助)

µ ´

JIS第1水準・JIS第2水準に存在しない漢字については,その部分のみ仮名で表記する。

¶ ³

久野 すすむ 先生 (「すすむ」は「日」に「章」),  トウ 小平(「トウ」は「登」におおざと)

µ ´

【地名(場所名・地形名等含む)】 

¦ 日本の地名は,2.3.1.1節に記した字種の範囲で,一般に用いられている表記を使用する。

¶ ³

東京,北海道,埼玉県さいたま市,たまプラーザ

µ ´

¦ 外国の地名は片仮名で表記する(実際の表記法については2.3.3節も参照されたい)。

¶ ³

ニューヨーク,ソウル,ピョンヤン,チベット,チョモランマ,マカオ

µ ´

ただし,中国の地名で漢字表記が可能なものは,漢字で表記する。

¶ ³

香港,上海,北京

µ ´

¦ 漢字表記する地名のうち,固有名詞の同定に支障があるものについては,前項「人名」で述べた範囲で漢 字の使用範囲を拡張し,一般に用いられている表記を採用する。

*4 上記に該当する人名全てが,必ず当該語本来の表記で記されるという訳ではなく,冒頭の固有名詞の表記方針で述べたように,あ くまでその表記が把握できた範囲に限る。逆に,上記に該当しない人名であっても,知名度が高く,基本形の表記方針に従って表 記すると,個人の同定に支障が生じる可能性があるものについては,適宜,当該語本来の表記を採用する。ただし,CSJには学会 発表が含まれているため,研究者の氏名が非常に多く見られるが,これについては,知名度にかかわらず一律基本形の表記方針に 従って表記する。

ドキュメント内 日本語話し言葉コーパスの構築法 (ページ 65-89)