ア 請負代金の個人受領(行為Ⅲ-1)
クワザワにおいては、作業を行うにあたっては原則として契約書等を取 り交わす必要があるが、請負代金が 100 万円未満の工事については、契約 書の作成は必須ではなく支店長の個別判断に委ねられていた。
本事案では、A が、比較的少額である付随工事の際に、書類作成が億劫 になり書類を作成しなかったことが背景にある。
A は、得意先において追加工事・付随工事が必要となったときに、支店 長の判断を仰ぐことなく、かつ、注文請書・契約書等の書類を作成せず、
クワザワとして追加工事・付随工事を実施した。その後、当該工事の請負 代金をクワザワとしてではなく、A 個人が受領した。
このうち証憑が発見されたものの合計額は、下表Ⅲ-1 のとおり 88 万 2300 円である(クワザワが本件発覚後、調査をしていたところ発見され た A 名義領収書綴り)。
表Ⅲ-1
(単位:円)
領収書日付 領収書宛先 領収書金額
H23.5.1 B 546,000 H23.6.3 C 25,000 H23.8.22 D 132,500 H23.8.23 E 17,850 H24.1.27 F 148,470 H24.11.7 G 5,000 H26.3.6 H 2,980 H26.9.17 I 4,500 合計 882,300
②追加工事請負代金 請負契約
①追加工事 ク ワ ザ ワ
A
得意先 B など 図Ⅲ-1
イ クワザワを介さない施工業者選定行為(行為Ⅲ-2)
A は、長年にわたる個人的付き合いのある K 邸の新築工事に際して、ク ワザワの見積額 1400 万円よりも予算が少ない K のために、K の予算内に 収めようとした。
このため、A が施工業者を探し、K と当該施工業者との取引を仲介する ことで、上記の工事代金を K の予算内に収めた。
A は、クワザワに対し、「現在、スケジュールの面で受注してくれる業者 がなく、K が大工を探すと言っている」旨を報告していた。
上記施工業者の請負報酬は、A が K から預かり支払った(K から施工業 者に直接支払われたものもある。)。A の認識によると、K が施工業者に支 払った代金の合計額は約 1200 万円であり、A は何らの利益を得ていない。
①1400 万円の見積 得意先
③下請業者選定 ク ワ ザ ワ
A
K 図Ⅲ-2
外 注 先 業 者
④請負契約 1200 万円
②予算内に収めるよう依頼
ウ 回収売掛金の代払い(行為Ⅲ-3)
クワザワの債権管理担当部署(業務管理部)による債権管理の状況が厳 しく、同部からは頻繁に滞留債権の状況聴取が行われ、債権回収を早急に 行うよう促され続けていた。
また、債権の回収不能については人事考課上の個人評価に影響する可能 性もあるため、プレッシャーに耐えかねて実施した側面がある。
K 邸新築工事にあたり、クワザワから K に対し建築資材の販売が行われ た。
A は、販売代金を K から直接現金で回収した。
この回収代金を、他の回収が遅延していた工事の請負代金を回収したと して処理をした(いわゆる代払い)。このことにより、代金回収が遅延して いることを隠し、あたかも正常の代金回収が行われたかのように装った。
請負代金 売買契約
①売買代金
ク ワ ザ ワ K
図Ⅲ-3
(未回収)
発注者 請負契約 ②代払い
③代金回収遅延把握できず