第 4 章 直接打錠法によるゲル化ミニタブレットの調製と評価
第 2 節 ゲル化ミニタブレットの物性
2.5 薬物の溶出挙動
調製したミニタブレットからのAAの溶出挙動を高分子別にFig. 24に示す。
0%Tabでは10 分で40 %、30分で60 %の溶出率と緩やかな溶出挙動を示した。
CAR配合では、20%Tabが15分でほぼ100 %の溶出率となる速やかな溶出挙動 を示し、30%Tabでは 15分で60 %、30分で90 %程度の溶出率となり、配合比 率の増加に伴い溶出が遅延する傾向が認められた。配合比率40 %以上のミニタ ブレットでは0%Tabと同様の緩やかな溶出挙動を示した(Fig. 24-A)。
ι-CAR では 20%Tab が 5 分でほぼ 100 %の溶出率の速やかな溶出挙動であっ たが、配合比率の増加に伴って溶出が遅延し、配合比率40 %以上では0%Tabよ り遅く、30分で40 %程度の溶出挙動を示した(Fig. 24-B)。
HPMCでは配合比率50 %までのミニタブレットでは5分で溶出率100 %とな る溶出挙動を示した(Fig. 24-C)。
CMC では 20%Tab で、5 分で溶出率ほぼ 100 %となる速やかな溶出挙動を示
し、30%Tab では若干溶出が遅延し 5 分で溶出率 80 %程度となる溶出挙動であ
った。さらに配合比率が増加するとさらに溶出は遅延し50%Tab では 0%Tab と 類似した溶出挙動となった(Fig. 24-D)。
AG では 20%Tab および 30%Tab でほぼ同様の溶出挙動を示し、15 分でほぼ 80 %、30分でほぼ100 %の溶出率であったが、配合比率の増加に伴って溶出は 遅延し50%Tabでは0%Tabと同様な溶出挙動を示した(Fig. 24-E)。
PECでは配合比率50 %までで5分で100 %の溶出率とHPMCと同様な溶出挙 動であった(Fig. 24-F)。
0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0 45.0
CAR ι‐CAR HPMC CMC AG PEC
20%Gr 30%Gr 40%Gr 50%Gr
Adhesiveness (J/m3)
0.0 1.0 2.0 3.0
CAR ι‐CAR
20%Gr 30%Gr 40%Gr 50%Gr Adhesiveness (J/m3)
20%Tab 30%Tab 40%Tab 50%Tab
20%Tab 30%Tab 40%Tab 50%Tab
Fig. 23 Adhesiveness of mini-tablets
CAR: predominantly κ and lesser amounts of λ - carrageenan, ι-CAR: ι - carrageenan, HPMC: hydroxypropyl methylcellulose, CMC: carboxymethyl cellulose, AG: sodium alginate 80 – 120 cp, PEC: pectin
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0 20 40 60 80 100 120
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90
Dissolved AA (%)
Time (min)
0%Gr 20%Gr 30%Gr 40%Gr 50%Gr
0 20 40 60 80 100 120
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90
Dissolved AA (%)
Time (min)
0%Gr 20%Gr 30%Gr 40%Gr 50%Gr
0 20 40 60 80 100 120
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90
Dissolved AA (%)
Time (min)
0%Gr 20%Gr 30%Gr 40%Gr 50%Gr
0 20 40 60 80 100 120
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90
Dissolved AA (%)
Time (min)
0%Gr 20%Gr 30%Gr 40%Gr 50%Gr
A)
CARB)
ι-CARC)
HPMCD)
CMC0 20 40 60 80 100 120
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90
Dissolved AA (%)
Time (min)
0%Gr 20%Gr 30%Gr 40%Gr 50%Gr
E)
AG0 20 40 60 80 100 120
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90
Dissolved AA (%)
Time (min)
0%Gr 20%Gr 30%Gr 40%Gr 50%Gr
F)
PEC0%Tab 20%Tab 30%Tab 40%Tab 50%Tab
0%Tab 20%Tab 30%Tab 40%Tab 50%Tab
0%Tab 20%Tab 30%Tab 40%Tab 50%Tab
0%Tab 20%Tab 30%Tab 40%Tab 50%Tab
0%Tab 20%Tab 30%Tab 40%Tab 50%Tab
0%Tab 20%Tab 30%Tab 40%Tab 50%Tab
Fig. 24 Influence of type and amount of polymer on AA dissolution profiles from mini-tablets
A) CAR, B) ι-CAR, C) HPMC, D) CMC, E) AG, F) PEC
CAR: predominantly κ and lesser amounts of λ - carrageenan, ι-CAR: ι - carrageenan, HPMC: hydroxypropyl methylcellulose, CMC: carboxymethyl cellulose, AG: sodium alginate 80 – 120 cp, PEC: pectin
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第3節 考察
服用しやすい経口製剤として保存時は固形で服用時に水分により膨潤し、ゲル化す るミニタブレットの調製について種々の水溶性高分子を用いて検討した。患者の状態 に合わせた用量調節が可能で、服用しやすいミニタブレットが調製できれば、嚥下困 難を伴う患者だけでなく、小児や高齢者などの薬物治療においても有用性は高いと考 えた。目的とするミニタブレットは、嚥下時の圧力に対して弾力性を示さず、容易に 変形し、口腔内や食道に付着せずに移送できる物性を目標とした。類似する既存の粒 状錠7)の調製はコーティングによる調製方法であるが、より単純な工程により調製が 可能であることが望ましいと考え、成形性と吸水性を有する FL と種々の水溶性高分 子との物理混合物の直接打錠法によりミニタブレットを調製し、比較検討を行った。
高分子無配合ミニタブレットでは、いずれの高分子配合ミニタブレットより小さな 製剤となり、200 N/cm2の強度で、吸水はほぼ認められなかった。FLは大きな細孔半 径と細孔容積を有し、高い吸水性を特徴とするが、優れた成形性とかさ密度の高さか ら、圧縮により密な構造をとり、吸水が進展しなかったと考えられた。そのため、水 分添加後の変位-荷重曲線においても急激に立ち上がる曲線を示し、柔軟性および付 着性が小さいことがわかった。溶出試験においても30分で60 %の溶出率という緩や かな溶出挙動であった。一方、高分子を配合したミニタブレットでは高分子の種類お よび配合比率により程度の差はあるものの、吸水量の増加と、柔軟性が認められたこ とから本製法によりゲル化ミニタブレットの調製が可能であることが示唆された。特 に CAR を配合したミニタブレットで最も速やかな吸水と大きな吸水量を示し、それ らは配合比率の増加に伴い増大した。また配合比率の異なるいずれのミニタブレット も、変位が大きく緩やかに立ち上がる変位-荷重曲線を示し、大きな柔軟性を示すこと がわかった。高分子の種類による吸水挙動および柔軟性の違いは、高分子の吸水性の 違いが大きく影響しており、高分子の配合比率の増加に伴いミニタブレットの厚さの 増大と強度の減少が認められたことから、圧縮性の低下によりミニタブレット内の空 隙が大きくなっていると考えられた。通常、空隙の増大は吸水速度および吸水量の増 大につながると考えられるが、HPMC とPEC では配合比率の増加に伴う大きな変化 はほとんど認められなかった。また、ι-CAR 、CMC および AG では配合比率の増大 に伴い吸水速度および吸水量が減少した。さらに水分添加後の変位-荷重曲線を見る と、初期には緩やかな傾きで、変位点で急激に立ち上がる曲線を示すミニタブレット があり、加圧初期には柔軟性を示すものの、その後柔軟性が減少していることがわか る。このような曲線を示す高分子では、吸水によりゲル化はしているが、ミニタブレ ット表面にゲル層が形成され、配合比率の増加に伴い、内部への水の浸透が阻害され ていると推測された。一方、CARではミニタブレットの厚さの変化が他に比べて小さ いにも関わらず、速やかな吸水と大きな吸水量、さらに大きな柔軟性が認められた。
このとき吸水量は、配合比率の増加に伴い増大した。このことから CAR の配合では CAR の持つ高い吸水性が影響し、ゲル化後もさらに内部へ水が浸透していくものと
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考えられた。そして、嚥下時の大きな問題となる付着性については、水分添加後の変 位-荷重曲線における付着力および粘着性の結果から CAR が比較的小さな値であり、
これもゲル化後の内部への吸水の進展が影響しているものと考えられた。直接の比較 は困難だが、嚥下障害者用の臨床的接着基準65)4 × 102 J/m3よりもCARミニタブレッ トの方が1.19 J/m3 ~ 2.54 J/m3と小さい値を示した。
さらに高分子を配合したミニタブレットからのAAの溶出挙動については、高分子 の種類および配合比率による変化が認められ、HPMC および PEC の場合はミニタブ レットの崩壊により速やかな溶出挙動を示し、CAR、ι-CAR、CMCおよびAGでは配 合比率の増加に伴い溶出が遅延したことから、これらの高分子ではゲル化が影響し、
ゲル層の溶解とともに徐々に AAが溶出するものと考えた。日本薬局方における AA 錠規格基準、溶出挙動15分で80 %(回転数50 rpm)を参考に、ゲル化することを考 慮しても、30 分で 80 %以上の溶出率が望ましいと考えられた。CAR では配合比率
30 %までであれば、30分で80 %以上の溶出率が保たれた。
口腔内崩壊錠では、ハンドリングや調剤時の負荷に耐えられる強度として50 N/cm2 以上が求められる66)。今回のミニタブレットの強度は高分子の配合比率の増加により 低下したものの、吸水性、柔軟性および付着性に関して優れていたCARの配合では、
50%Tab でも 150 N/cm2程度であり、他の高分子と比べても十分な強度を有すること
がわかった。
以上のように、目的とするミニタブレットの調製には強度、吸水後の柔軟性および 付着性の観点から、FLと、配合比率20 % ~ 30 %のCARの混合物が有用であること が示唆された。しかし直接打錠法による調製であることから、共存する主薬も物性に 影響を与える可能性がある。適切な配合比率は、主薬の特性も考慮し決定する必要が ある。
本ミニタブレットは、調製方法が簡便で、服用時に水分で速やかに膨潤し嚥下しや すくなる可能性があり、嚥下障害患者だけでなく、小児、高齢者などの薬物治療にお いても用量調節が可能で有用な経口製剤になりうると考えられた。
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総括
経口製剤による薬物治療の中でも、錠剤やカプセルなどの固形剤が大半を占める臨 床現場において、嚥下障害や嚥下機能の低下によって引き起こされる服薬困難は、患 者の心身に負担が生じ服薬アドヒアランスを低下させる可能性がある。それは介助者 の負担増や治療効果の低下だけでなく、医療コストの増大を招くことが懸念される。
代替として用いられる散剤や顆粒剤、口腔内崩壊錠も、嚥下障害患者では水分誤嚥の 惹起、義歯への付着、口腔内や咽頭内での残存が課題とされている。
今回、錠剤やカプセルなどの固形剤の利点をそのままに、保存時は固形で、服用時 の少量の水で製剤表面が膨潤し、口腔内や咽頭内に付着、残留することなく食道に移 送できる飲み込み易さに着目した新たな機能を有した経口製剤として、「セルロース 系水溶性高分子を基材としたフィルム製剤」「アルギン酸ナトリウムを基材としたゲ ル化錠剤」「キセロゲル顆粒」「ゲル化ミニタブレット」の調製を試みた。
1. セルロース系水溶性高分子を基材としたフィルム製剤の調製と評価
高用量の薬物を含有し、崩壊せずに飲み込めるフィルム製剤という点が既存のフィ ルム製剤にない特徴であり、表面がゲル化して滑り感を有し、口腔内・ 咽頭内に残存 しない製剤を目標とした。目的とするフィルム製剤の調製には、優れた造膜性と保水 性を有する CMC を基材とし、柔軟性付与の観点から可塑剤にGL を用いることが有 効であることが示唆された。さらに、フィルム表面のざらつきに対してPVPの配合効 果が認められ、CMCを基材としてGLおよび PVPを用いることで、目的とするより 良いフィルム製剤が調製できることわかった。しかし、嚥下性を考慮したフィルム製 剤としてはゲル化の速度や程度、それに付随した付着性、製剤の大きさなど課題は多 く、更なる検討が必要であると思われた。
2. アルギン酸ナトリウムを基材としたゲル化錠剤の調製と評価
臨床で好まれ頻用される錠剤の利点をそのままに、服用時に共存する水分で製剤表 面にゲル化層を形成し抵抗なく嚥下できる製剤を目指し、形状を保ったままでの速や かな吸水膨潤、吸水後の小さな付着性、そしてゲル化後であっても速やかな薬物の溶 出性を示すことを目標とした。本検討では、水および温水に速やかに溶け、なめらか なゲルを形成する AGを用いた。AAを内核錠とし、造粒した AGを外層として、外
層重量100 mgを4 kNで圧縮コーティング錠とすることで目的とする錠剤の調製が可
能であることが示唆された。一方で、口腔内での崩壊を避けるためには、適度な時間 ゲル化層が保持されることが望ましく、このことも考慮し錠剤の直径や厚さに合わせ 外層重量を調節する必要があると考えられた。また、錠剤の硬度が市販されている口 腔内崩壊錠と比較しても著しく小さくなったことから、ハンドリングの観点から硬度 の増大が課題となった。