Ⅵ-1. 薬理学的に関連ある化 合物又は化合物群
本剤と薬理学的に関連すると考えられる化合物は存在しない。
Ⅵ-2. 薬理作用
(1)作用部位・作用機序 IgEはB細胞から分泌される免疫グロブリンのサブタイプのひとつであり、IgEが肥満 細胞や好塩基球上の高親和性IgE受容体であるFcεRIに結合し、抗原などによりIgE が架橋されると、受容体が凝集し細胞が活性化する。細胞が活性化することで、ヒス タミンやロイコトリエンなどの炎症性メディエーターが放出され、気管支喘息におい ては、気道の慢性炎症、気道狭窄、気道過敏性の亢進、気管支痙攣などの症状、慢性 蕁麻疹においてはそう痒、膨疹、血管性浮腫などの症状を起こす。
本剤は、マウス抗IgE抗体(MaE11)を親抗体としてヒト化した抗ヒトIgEモノクロー ナル抗体である。オマリズマブは、IgE上のFcεRI結合部位であるCε3領域を標的 とすることでIgEとFcεRIの結合を阻害する。その結果、好塩基球、肥満細胞などに よる脱顆粒及びこれに引き続く各種炎症性メディエーターの遊離が抑制される。さら に本剤の投与により、喀痰中の好酸球比率の低下と好塩基球上のFcεRIの発現抑制が 認められた。オマリズマブはアレルギーカスケードの初期反応を阻止するが、それ自 体はIgEを架橋しないためアナフィラキシーを惹起しにくい抗体製剤である。
(2)薬効を裏付ける試験成績 1.IgEに対する阻害作用
本剤はヒトIgEとFcεRⅠの結合を競合的に阻害し、血清中遊離 IgE濃度を減少させ た。なお、本剤はFcεRⅠに結合したIgEを架橋しない。
(1)血清中遊離IgE濃度の減少作用(臨床試験:1304試験)7)
中等症から重症のアレルギー性喘息患者315例(本剤群151例、プラセボ群164例)
を対象としたプラセボ対照二重盲検並行群間比較試験において、本剤が既治療に上乗 せで16週間投与された。投与開始後16週の血清中遊離IgE濃度は、投与量及び投与 間隔によらずほとんどの患者で 25ng/mL 以下まで低下した(投与開始前値に対する抑 制率の中央値:投与開始後16週89.8~99.0%抑制)。
(2)FcεRIへのIgEの結合に対する競合的阻害作用(in vitro)23)
FcεRI の細胞外ドメインであるαサブユニットと IL-2 受容体の膜貫通及び細胞内ド
メインのコンストラクトを構築し、これをチャイニーズハムスター卵巣細胞に導入し た。細胞表面のFcεRIとヒト125I-IgEの結合を種々の濃度のオマリズマブ存在下で測 定したところ、125I-IgEとFcεRIの最大結合量を変えることなく反応曲線を右方シフ トさせ、Lineweaver-Burke プロット解析より、その阻害様式は競合的阻害と考えられ た。
(3)FcεRⅠと結合したIgEに対する結合能(in vitro)24)
ヒト好塩基球とIgEをプレインキュベートし、FcεRⅠにヒトIgEを結合させた後、ビ オチン化オマリズマブもしくはビオチン化ヤギ抗ヒト IgE 抗体を添加して培養し、蛍 光標識細胞をフローサイトメトリー法で解析した。ヤギ抗ヒト IgE 抗体でみられたピ ークは(A)、ヤギ抗体がFcεRⅠに結合したIgEと結合することを意味する。一方、
オマリズマブの場合、そのようなピークはみられなかったことから(B)、本剤は Fc εRⅠと結合したIgEに対する結合能がない抗ヒトIgE抗体と考えられた。
<参考>
単回投与時の血清中遊離IgE濃度の減少作用(臨床薬理試験:2206試験)25)
白人及び日本人健康成人男性(投与前の遊離IgE濃度の平均値はそれぞれ86.8ng/mL
及び 119.2ng/mL)を対象に、本剤 150mg を単回皮下投与したところ、血清中遊離
IgE 濃度は投与後 24~48 時間(中央値)に最低濃度に達し、その後、血清中総オマ リズマブ濃度の低下に伴って緩徐に投与前の濃度に復する傾向にあった。
血清中総IgE濃度は緩やかに上昇し、投与後7日でCmaxに達し、その後減少する傾 向が認められた。
2.ヒスタミン遊離に対する効果(in vitro)26)
(1)ブタクサ特異的IgEでの感作時に本剤を添加することにより、ブタクサ抗原刺激に
よるヒト好塩基球からのヒスタミン遊離が抑制された。
健常人より調製した好塩基球をブタクサ特異的IgE及び0.01~2 μg/mLのオマリズマ ブを含むヒト血漿とともに2時間37℃でインキュベートした。ヒスタミン遊離反応を 終了させ、遠心後、上清に含まれるヒスタミン濃度をイムノアッセイ法により測定 し、遊離抑制率を算出した。
オマリズマブは、ヒト好塩基球からのブタクサ抗原誘発ヒスタミン遊離作用を濃度依 存的に抑制した。
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2
0 20 40 60 80 100 120
E25濃度(µg/mL)
抑制率 (%)
(2)気管支喘息患者の好塩基球からのヒスタミン遊離抑制作用(臨床試験)27)
CFC 注)-ベクロメタゾン 500~1000μg/日相当の吸入ステロイドを必要とする中等度か
ら重度の気管支喘息患者35例を対象とし、オマリズマブ又はプラセボを皮下投与し、
好塩基球からのヒスタミン遊離量を測定した。投与量は患者の体重及び血清中 IgE 濃 度により決定し、2又は4週毎に1回、52週間皮下投与した。投与開始後16週間は吸 入ステロイド薬の投与量は一定とし、続く12週間で漸減し、その後は適切な用量で管 理した。本剤投与開始後16週において、抗原刺激による好塩基球からのヒスタミン遊 離量は低下し、プラセボとの間に有意差が認められた(p<0.01)。治療終了 3 ヵ月後に 測定した好塩基球からのヒスタミン遊離量については、ベースライン値と同程度であ った。
注)CFC(クロロフルオロカーボン):骨格に塩素原子を含み、オゾン層特定破壊物質として知ら れている。世界的に規制された結果、現在ではHFA(ヒドロフルオロアルカン)ガスを用いた 加圧式定量噴霧式吸入器が使われている。
<参考>
ヒト肺組織切片のヒスタミン遊離及び収縮抑制作用(in vitro)28)
ヒト肺組織切片をブタクサ過敏症患者血清と培養して受動感作させた後、ブタクサ抗原を 添加するとヒスタミン遊離と収縮反応が誘発される。オマリズマブ存在下で肺組織を感作さ せたところ、抗原によるヒスタミン遊離と収縮反応は完全に抑制された。一方、MaE1 抗体 存在下で感作させたときの抑制作用は部分的であった。
3. 気道収縮に対する効果(気管支喘息患者を対象とした臨床試験)28,29)
気管支喘息患者において、抗原吸入による即時型喘息反応及び遅発型喘息反応が 抑制された。
吸入β2刺激薬のみを使用している軽症アレルギー性喘息患者19例に対してオマリ ズマブ0.5㎎/㎏又はプラセボを週1回9週間静脈内投与し、抗原吸入によりアレ ルギー反応を誘発させ、1 時間後における FEV1.0 の低下を即時型喘息反応、2~7 時間後における低下を遅発型喘息反応として観察した。その結果、プラセボ群で は即時型及び遅発型喘息反応とも認められたが、オマリズマブ群ではベースライ ンにおいて認められた即時型及び遅発型喘息反応はいずれも抑制された。また、
FEV1.0の最大低下率は、即時型及び遅発型喘息反応のいずれにおいてもプラセボ群 と比較してオマリズマブ群で有意に小さかった。
*本剤の投与は投与開始56日後まで行い、その1週間後に抗原吸入後のFEV1.0を
測定した。
注)本剤の承認されている用法・用量は「通常、オマリズマブ(遺伝子組換え)として1回75~
600㎎を2又は4週毎に皮下に注射する。1回あたりの投与量並びに投与間隔は、初回投 与前の血清中総IgE濃度及び体重に基づき設定する」である。
4. 気道過敏性に対する効果(気管支喘息患者を対象とした臨床試験)30)
気管支喘息患者において、メサコリンに対する気道過敏性が改善した。
吸入β2刺激薬のみを使用している軽症アレルギー性喘息患者20例に、オマリズマ ブ又はプラセボを静脈内投与し、FEV1.0を20%以上降下させるのに必要な吸入メサ コリン濃度(PC20)を指標とし、オマリズマブが気道過敏性を減少させるかどう かを確認した。投与開始後76日において、ゾレア投与によりPC20は有意に増加し た。
注)本剤の気管支喘息に対して承認されている用法・用量は「通常、オマリズマブ(遺伝子組 換え)として1回150~600㎎を2又は4週毎に皮下に注射する。1回あたりの投与量並び に投与間隔は、初回投与前の血清中総IgE濃度及び体重に基づき設定する」である。
5. 高親和性IgE受容体(FcεRⅠ)発現に対する作用
通年性アレルギー性鼻炎患者注)を対象とした試験(臨床薬理試験)31)
中等症から重症のアレルギー性喘息オマリズマブ投与前には好塩基球細胞膜上の
FcεRⅠ数は約 220,000(中央値)であったのに対し、投与開始 3 ヵ月後には約
8,300(中央値)となり、約97%の減少がみられた。
注)本剤の効能又は効果は以下である。
「1.気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る) 2.特発性の慢性蕁麻疹(既存治療で効果不十分な患者に限る)」
6.気管支喘息患者を対象とした臨床試験 32)
オマリズマブ又はプラセボを、2%以上の喀痰好酸球増多を伴う軽度から中等度の 持続性喘息患者45例(オマリズマブ群22例、プラセボ群23例)に、2又は4週 に 1 回 16 週間皮下投与した(投与量は患者の体重及び血清中 IgE 濃度により決