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ドキュメント内 問題 (ページ 99-104)

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■ 対 話 あ り 園 対 話 な し

4 歳 児 6 歳 児

Figure2年齢別群別の選択課題成績4)

3 ) 選 択 す べ き カ ー ド を 選 択 し た 場 合 に 加 え て デ ィ ス ト ラ ク タ を 選 択 し な か っ た 場 合 に も 点 を 与 え た の は , 例 え ば 子 ど も が す べ て の カ ー ド を 無 秩 序 に 選 択 し て し ま っ た 場 合 に , 満 点 に な ら な い よ

うにするためである。

4 歳 児 6 歳 児

Figure3年齢別,群別の再認課題成績4)

4)バーは標準誤差を示す。

考 察

対 話 の 効 果 に つ い て

本研究の結果より,エピソード記憶成績については,

対話あり群の成績が,対話なし群と比較して有意に高い ことがわかった。一方,選択課題および再認課題につい ては,対話の有無による効果はみられなかった。この結 果から,年齢による成績差はあるものの,年少・年長群 共 に , テ レ ビ や ビ デ オ の 中 の 登 場 人 物 と 対 話 を す る と いった,映像メディアとのインターラクション状況を導 入することにより,エピソード記'億が促進されることが 明らかとなった。ストーリーに出てくるエピソード自体 については,対話あり.なし群共に,新奇物命名の手続 きとは異なり,被験者にエピソードの内容を繰り返し言 わせたり何度も聞かせるような手続きはとっていなかっ た。したがって,エピソードの入力回数が対話あり群と なし群で異なったために,エピソード記憶成績に差が出 たとは考えにくい。むしろ,対話あり群はビデオ視聴中 に対話をすることで,対話なし群と比較して,子どもが 自発的に内的なリハーサルをするようになったか,もし くは,ビデオ登場人物をより現実的な存在として感じる ことでビデオの中の事象や場面に入り込みやすくなり,

能 動 的 な 処 理 が お こ な わ れ た の で は な い か と 考 え ら れ る。その結果として,ビデオ内で登場人物が繰り広げる エピソードをよく記憶できたのであろう。そもそも対話 をしない場合でも,ビデオのような動画による情報の呈 示は,紙芝居のような静止画による情報の呈示よりも,

ストーリーの文脈をとらえやすいという報告がなされて いる(北尾・岡本,1993)。本研究のように動画に対話 的要素を加えることで,より文脈や状況の理解は深まっ たと考えられる。

対話をするということは,人の知的な活動がその人の 頭の中だけでおこなわれるのではなく,そこにある社会 や文脈,空間や環境といった「状況」とのインターラク ションに基づき成立していることを前提としているとい う(南部,2002;茂呂,1997)。また,対話を伴うコミュ ニケーションの成立には,対面か遠隔かにかかわらず,

対話者同士の「対話の場」の共有が前提にあるという(南 部,2002)。この知見から言えば,本研究での対話あり 群は,両年齢群ともに,ビデオ登場人物との対話が成立 していた子どもを採用したため,子どもと登場人物との 間で「場」が共有されていたと解釈できる。そしてこの ような「場の共有」は,新奇物名の記憶には影響を与え ず,エピソード記憶に促進効果を持っていた。エピソー ド記'億だけに対話による促進効果がもたらされたのは,

新奇物名の記'億には,文脈や状況が必ずしも関係してい るわけではなく,文脈とは独立に名称を記憶することも 可能であるが,エピソードの記'億には,必ず「いつ」「ど

こで」「何が」あったかという文脈や状況に埋め込まれて いるため('Imving,1983/1985),「場を共有」すること,

すなわち,それらの文脈に入り込むことで,より現実的 なエピソードとして記憶されたのかもしれない。特に本 研究で用いたエピソードの状況は,ビデオ登場人物が何 らかの行動を起こし(例えば,転んでしまう),次に対 話あり群の被験児は,登場人物に対して対話を通して働 きかけるが(例えば,「痛いの痛いのとんでいけ」と言 う),一方,対話なし群の被験児は,登場人物がセリフ を言うのを聞いているだけであった。つまり対話あり群 では,対話を通して文脈や状況に参加することとなり,

このような参加的状況は文脈や状況をより印象付けやす くなったと考えられる。その結果,文脈や状況の影響を 受けるエピソード記'億は,対話があることで成績が促進 されたのではないだろうか。

加えて,′Iillving(1994)は記憶システムを分類する中 で,エピソード記'億を手続き記'億や意味記'億と比較し て,一番高次な記憶として位置づけており,太田ほか (1999)は,エピソード記'億の発達は,手続き記'億や意 味記憶などの発達と比較して,一番遅いとしている。す なわち,子どもが映像メディアと対話を通してインター ラクションをとることは,単なる項目や単語記'億ではな く,このような高次で発達の遅いとされるエピソード記 憶の発達促進に貢献すると思われる。

年 齢 の 効 果 に つ い て

本研究では,4歳児と6歳児が対象とされた。年齢の 効果は,課題によって異なった。エピソード記'億と選択 課題については,いずれも6歳児の方が4歳児よりも有 意に成績が高かった。一方,再認課題では,年齢によっ て成績に差は見られず,成績は両年齢ともに低かった。

このような違いが見られた理由のひとつとして,課題の 難易度の違いがあげられよう。すなわち再認課題では,

被験者は10種類の新奇物名を再認し,さらに名称と視 覚的な記憶との一対一対応が同時に求められた。記憶す るために被験児に与えられていた機会は,新奇物が視覚 的に呈示されると同時に,その名称を1回聞き直後に被 験者自身で1回発音する(対話あり群)か,もしくは自 身の発音はなく,2回新奇物名を聞く(対話なし群)とい うことだけであった。このような短時間,しかも少数回 のリハーサルしか与えられないという条件下で,初めて 見聞きする語を再認し,さらにそれを視覚的刺激と一対 一対応をさせるということは,本研究対象の年齢にとっ て難しい課題であったのであろう。

それに比べて選択課題は,単に視覚的に記憶した新奇 物を再認するだけの課題であった。そのために,再認記 憶成績よりも選択課題成績の方が両年齢群ともに全体的 に高成績であったのだろう。このように2つの課題間を

対話を伴うビデオ映像を幼児はよく憶えるか? 381

比較すれば選択課題は両年齢群ともに高成績ではある が,選択課題内では年齢に有意差が見られた。これは,

再認課題同様,記憶するために与えられた機会が少な かったため,年少児は年長児よりも視覚的な記憶が劣っ たことによるのかもしれない。

エピソード記憶にも年齢に有意差が見られたが,これ は,エピソード記憶が加齢とともに発達する('Iillving,

1994;太田ほか,1999)との知見を反映していると考えら

れる。

今 後 の 課 題

本研究では,子どもが映像メディアと対話を通したイ ンターラクションをおこなうことでエピソード記'億が促 進され,幼児の認知能力の一部が向上することがわかっ た。この結果を踏まえれば,乳幼児期のテレビやビデオ 視聴は,保護者や他者と一緒に視聴することも大切であ ろうが,それができない場合,インターラクションを組 み 込 ん だ 形 で の テ レ ビ や ビ デ オ 視 聴 一 特 に 本 研 究 で 効 果が見られた「対話」を通したインターラクション形態 でのそれらの視聴が望まれよう。

原田(1997)や南部(2002)は,成人におけるテレビ電 話やビデオ会議などのビデオ対話システムの利用は,映 像のない電話や電子メールなどに比べて,主観的・感性 的評価が低く,嫌われがちであることを報告している。

一方本研究では,実験終了後対話あり群の子どもに,1)

お も し ろ か っ た か ? 2 ) テ レ ビ の 中 の 人 と 本 当 に し や くったと思ったか?と質問したところ,1)は95%がお もしろい,2)は95%が本当にしやくった,と答えた(有 効回答20人;年長9人,年少11人)。すなわち,本研究 で対象とした年齢では,成人の映像メディアに対する反 応 と は 異 な り , 映 像 メ デ ィ ア と の 対 話 に 抵 抗 感 を 感 じ ず,楽しんでいることがうかがえ,利用可能であること が示唆される。

現在では,双方向通信システムは実現しつつある。双 方向の通信が可能な放送(例えば,BSデジタルなど)で は,すでに視聴者側がリモコンのボタンなどで文字情報 を送信することができる。このような技術を応用し,環 境が整えられれば,幼児でもより能動的に映像メディア と イ ン タ ー ラ ク シ ョ ン を と る こ と が で き る と 考 え ら れ る 。 と こ ろ で 本 研 究 で は , 対 話 あ り 群 の う ち で 答 え る こ とが遅い子どもには,ビデオテープを一時停止にして子 どもが答えるのを待つ場合もあった。近い将来,子ども が実際に単独視聴をする場面を考えた場合には,例えば マウスやタッチパネルを通して信号入力をすることでイ

ンターラクションをとることが可能なDVDなどの映像 媒体を用いることにより,子どもが個々人のペースで信 号を入力できるような方法を用いることが考えられる。

また,子どもの音声入力とマウスなどによる信号入力を

組み合わせることで,よりよいタイミングで映像メディ アとインターラクションをとることができると考えられ る。今後は,映像メディアの子どもへの影響に関する科 学的データのさらなる収集が必要であろう。また,来る べき本格的な双方向通信時代をふまえ,メディアのイン ターフェイスの技術開発といったハード面と,番組作り といったソフト面の両面からの理解,協力の上で,映像 メディアと子どものインターラクション状況の実現化が 望まれる。

文 献

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