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蒸気雲の比熱比 γ の選定

ドキュメント内 蒸気雲の固体壁への衝突による発光 (ページ 47-51)

第 5 章 蒸気雲の衝撃圧縮による発光 29

5.3 確率論に基づく発光の推定

5.3.3 蒸気雲の比熱比 γ の選定

ここではこれまで未知数であった蒸気雲の比熱比γの選定について述べる。前節までを まとめるとγとして取り得る適切な範囲はγ = 1.3〜1.5であると考えられる。また、こ れまでの議論から蒸気雲の固体壁への衝突による発光の要因としてC2のエネルギー準位 の遷移が関与している可能性が高いと言える。従ってC2の励起分子数が増大すれば発光 量が増すと推測されることから、C2の励起分布数比率は蒸気雲の固体壁への衝突による 発光の発光強度に比例すると考えられる。この考えに基づき、図4.1で示した蒸気雲の固 体壁への衝突による発光の発光強度の蒸気雲速度依存性と同等の依存性がC2の励起分布 数比率と蒸気雲速度の関係性グラフからも得られるはずである。そこでγを1.3〜1.5の範 囲で変化させた場合の蒸気雲の固体壁への衝突時の温度からC2の励起分布数比率を算出 し、蒸気雲速度との関係性を図5.9に示した。ここで発光強度による蒸気雲速度依存性が 11.7乗と非常に強いことから変化させる速度範囲によって依存性が変化する可能性を考慮 し、温度の算出に必要な蒸気雲速度の範囲は発光強度の蒸気雲速度依存性を示した図4.1 と同一となる4.05 〜6.07 km/sとした。

図5.9の近似線から蒸気雲の固体壁への衝突による発光の発光強度の蒸気雲速度依存性 11.7乗と同等の依存性を示す場合はγ = 1.3〜1.4の範囲に存在することが分かる。更に その範囲はγ = 1.4に近いことが推測できる。そこでγの範囲をγ = 1.38〜1.40として変 化させ、それ以外の条件は図5.9と同条件となるC2の励起分布数比率と蒸気雲速度の関 係性を図5.10に示した。

図 5.10: C2の励起分子数比率Ne/Noの蒸気雲速度依存性。γは1.3〜1.5の範囲で変化さ せた。蒸気雲速度の変化範囲は発光強度の蒸気雲速度依存性を示した図4.1と同一となる 4.05〜6.07 km/sとした。近似線から蒸気雲の固体壁への衝突による発光の発光強度の蒸 気雲速度依存性11.7乗と同等の依存性を示す場合はγ = 1.39であると分かる。γ = 1.39 における線形線の決定係数R2から相関係数R=0.99であることから高い相関である。

図5.10の近似線からγ = 1.39の場合においてC2の励起分子数比率Ne/Noの蒸気雲速 度依存性が11.8乗となることが分かる。決定係数R2から相関係数R =0.99であり、高い 相関であることからこの線形線の精度を保証する。以上をまとめると、蒸気雲の固体壁 への衝突による発光の発光強度の蒸気雲速度依存性11.7乗と同等の依存性を示す場合は

γ = 1.39であり、この値を用いて蒸気雲の固体壁への衝突時の温度を算出することが最適

だと言える。また、図5.10から本実験での蒸気雲速度の範囲における蒸気雲の熱エネル ギーは0.9〜1.8 eVであることが分かる。ここで図5.10に対して発光強度を加えてC2の 励起分子数比率と視覚的に比較することで適切であるのか確認する為にC2の励起分子数 比率と発光強度の蒸気雲速度との関係性を図5.11に示した。

図5.11: C2の励起分子数比率と発光強度の蒸気雲速度依存性。γ = 1.39によるC2の励起 分子数比率のプロットに対する近似線と発光強度のプロットに対する近似線が同等となる ことが分かる。蒸気雲の固体壁への衝突時の蒸気雲の比熱比はγ = 1.39である。

図5.11のγ = 1.39によるC2の励起分子数比率のプロットに対する近似線と発光強度 のプロットに対する近似線が同等となることからも、蒸気雲の固体壁への衝突時の蒸気雲 の比熱比はγ = 1.39が最適だと言える。

ここで本実験で使用した飛翔体とターゲットの材質である66ナイロンについて考える。

66ナイロンはアミド結合の繰り返しによって構成される線状の高分子化合物である。化 学式は以下の通りである。

る。この部分は正確なことは分かっていないが、66ナイロンによる飛翔体とターゲット を用いた高速度衝突によって発生する蒸気雲中にC2が存在する可能性は非常に高く、存 在比も高いことが考えられる。C2は二原子分子であり比熱比γ = 1.40となる。先に推定 した蒸気雲の比熱比はγ = 1.39であることからも蒸気雲中のC2の存在比が高い可能性を 示唆する。また、66ナイロンの分解によって発生する物質中においてエネルギー準位の 遷移の際に可視光波長での強い光を放射する物質は現状ではC2のみであることから、蒸 気雲の固体壁への衝突による発光の要因としてC2が関与していると推測することは論理 的に正しいと言える。以上の検討の結果より、γ = 1.39を用いて蒸気雲の固体壁への衝突 時の温度を算出し、それを基にC2の励起分布数比率を算出することでより精度が高いと 考えられる蒸気雲が固体壁に衝突した際に有する熱エネルギーとC2の励起分布数比率が 算出可能となる。従って本研究で導かれた蒸気雲の比熱比γは1.39と結論付ける。以降 の議論では蒸気雲の固体壁への衝突時の温度の算出に用いる蒸気雲の比熱比はγ = 1.39 とする。

最後に、蒸気雲速度が約4〜7 km/sの範囲におけるγ = 1.39を用いて算出した固体壁 へ衝突時の蒸気雲の有する熱エネルギーは0.9〜1.8 eVであり、図5.8からC2の励起分布 数比率は10−3.7〜10−1.4であることが分かる。よって、本実験で得られた蒸気雲の固体壁 への衝突による発光では、蒸気雲中のC2の0.1〜4%が励起されて引き起こされたと推測 する。発光モデルに基づくと、本実験で測定された程度の発光強度に要する励起分子数比 率は非常に低いと考えられる。

ドキュメント内 蒸気雲の固体壁への衝突による発光 (ページ 47-51)

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