Ⅵ‐1.中小繊維製造事業者自立事業の成果
(1)アンケート結果による成果の抽出
①実績・計画達成状況
◇自立事業売上実績(1社当たり平均)は、近年の事業ほど大きい。
・実施1年目の自立事業売上実績(1社平均)は、平成15年度採択事業で約2,100万円、平成16
年度で4,100万円、平成17年度で3,900万円、平成18年度で4,800万円と、多少の増減はある
ものの売上規模が回を重ねるごとに拡大している傾向が見られる。
・支援期間別で見ると、単年度事業よりも2年度事業の方が実績や達成率が大きい傾向がある。ま た、追加支援実施事業における達成率90%以上の比率が59.0%に達するなど、手厚い支援が実績 に大きく影響している様子が伺える。
◇全体売上に占める自立事業の売上割合は直近で18.3%。
・事業者の全体売上に占める自立事業の売上割合は年々拡大傾向にあり、平成18 年は15.3%、平
成19年は18.3%の見込みとなっている。
・繊維産業全体の市況が低迷する中で、自立事業者1社当たりの全体売上高は減少傾向にあるもの の、業界平均と比較して減少幅は小さい。計画当初の市況環境よりも厳しいものとなり、計画当 初の想定よりも障壁が高くなっているものと考えられるが、自立事業による成果が確認できる。
★ 自立事業の売上実績は、1年目⇒5年目にかけて年々拡大。
★ 1社平均の売上実績は、1年目3,600万円⇒5年目1億900万円。
★ 計画値に対する達成率の状況は、90%以上が25.4%、70%以上が11.7%、50%以上が10.5%、
50%未満が45.2%と分かれる。
★ 1年目⇒5年目にかけて達成率90%以上の案件の比率が減少傾向。
(関連設問2-1①、2-1②、3-1)
72.2 84.3
94.0
88.3 100.0
89.0 88.6 93.1 87.8
97.6
0 20 40 60 80 100 120
H14 H15 H16 H17 H18 H19
繊維産業全体 自立事業者全体
(%)
図表:1 社当たり全体売上と製造品出荷額などの比較(再掲)
②計画進捗状況・総合的な自己評価
◇計画通り(もしくは計画以上)の案件が25.7%。
・本事業の現在の進捗状況は、「計画以上」が7.3%、「計画通り」が18.4%。
・支援期間別に「計画を大幅に下回る」比率を見ると、単年度事業が47.1%、2年度事業が34.5%
と、単年度事業の方が苦戦している様子が伺える。
◇自己評価で、事業全体が「成功している」案件が40.8%。
・売上実績なども踏まえた総合的な自己評価は 40.8%が「成功している」、58.0%が「難航してい る」と回答。
・成功している案件の比率は、単年度事業が39.4%、2年度事業が45.2%と、ここでも2年度事業 の方が、自己評価が良い案件の比率が高い傾向にある。
◇自立事業が「大変良い効果があった」「良い効果があった」とする案件は85.7%。
・効果の内容としては、「販路が拡大・変化・多様化」、「新たなビジネスに取り組む意識の芽生え」、
「生産能力・商品企画力、開発力などの強化」、「他事業者とのネットワーク拡大」などが上位で あり、計画に対する達成率、売上規模だけでは計れない側面における成果を効果として捉えてい るケースが目立つ。
◇今後の見通しは、「計画以上」+「計画通り」=24.2%。
・今後の見通しとしては、「計画以上」が5.5%、「計画通り」が18.7%。
・現在、「計画以上」の案件の 8.0%、「計画通り」の案件の28.6%が、今後について「計画を少し 下回る」との見通しを示しており、最近の市況環境の悪化による影響などを踏まえた厳しい見通 しを示しているケースも多い状況である。
★ 計画の進捗状況は、「計画以上」と「計画通り」の合計で25.7%。
★ 但し、事業全体の自己評価としては、40.8%が「成功している」と評価。
特に、「計画を少し下回る」案件の50%近くは「成功している」と評価している。
★ 「本来の目的が達成された」+「ほぼ達成された」=35.3%。
★ 「大変良い効果があった」+「良い効果があった」=85.7%。
★ 以上から、自己評価では、売上計画以外の側面の効果も大きく影響しているものと考えら れる。
★ 今後の見通しとしては、「計画以上」+「計画通り」=24.2%。
(関連設問11-1、11-3、2-1①、2-1②、2-1③)
③成功要因/苦労や工夫
◇事業者の状況に応じて注力点を見極める必要性
・自立事業の成功要因としては、「技術・商品開発力」、「企画提案力」、「販路開拓」、「社長のリーダ ーシップ」、「事業準備・計画」などが上位にあがっている。
・自立事業が、計画通り(もしくは計画以上)に進捗している要因としては、「販路拡大」、「展示会 への出展」、「自社ブランド製品(オリジナリティのある製品)の開発」、「消費者ニーズの把握」
などがあげられている。
・上記を要約すると、製品企画、開発、製造から販路開拓に至るすべてのプロセスが含まれるが、
中小繊維事業者が独自でこれらすべての課題に取り組むことは、人材面、資金面においても難し いものと考えられる。
・また、販路開拓で苦労した点としては、主に以下の点があげられる。
①「市場での認知度・存在感が高まらない」(42.0%)
②「従来の商慣習などが壁になる」(37.0%)
③「自社で営業社員を育成できない」(32.9%)
・難航している案件は、成功している案件と比較して、特に「市場での認知度・存在感が高まらな い」「自社で営業社員を育成できない」といった点で苦労しているケースが多い。
・このような中で、販路開拓を進める上で工夫した点としては、「展示会出展」、「取引先からの開拓」、
「通信販売」、「差別化商品の訴求」、「外部人材の起用」など様々な取り組みが成されている。
・すなわち、自社の強み・弱みを踏まえ、それぞれの状況に応じてどのような取り組みに注力すべ きかを見極めることが、成功の前提となるものと考えられる。
・例えば「市場での認知度が高まらない」要因が、オリジナリティのある商品が不足していること が問題なのか、販路・営業施策の側面が問題なのかなど、それぞれの状況に適した施策を講じる 必要があるといったことである。
★ 「販路開拓・拡大」が成功の要因、苦戦した点の双方で上位となっており、販路拡大が業 績に大きく影響するポイントである。
★ 「販路開拓・拡大」を図る上では、「優れた企画力」を持って、「オリジナリティのある差 別化された商品の開発」を行う必要がある。
★ 「優れた企画力」「差別化された商品の開発」には、「人材育成」や「外部人材の起用」、「他 者との協業」が重要であるといった構図が見られる。
(関連設問1-3、2-2、2-3、11-1①、5-3、5-4)
アンケート調査結果から各社の取り組み状況を踏まえ、製品開発、販路開拓など、各施策におけ る成功のポイントを整理すると以下の通りとなるものと推察される。
◇商品開発・生産体制の整備
・品質とコストのバランス、商品製造の効率化、差別化した商品の開発に配慮する。
・そのために必要であれば、適切なデザイナーやコンサルタントなどの外部の人材や、他事業者の 力を活用する。(外部人材を活用するケースにおいて、現在も継続して起用しているケースでは、
デザイナーが最も多くデザイナーの効果性が伺える)
・また、店舗や展示会などから得られる消費者ニーズに耳を傾け、顧客視点に立った商品開発を推 進する。
◇販路開拓
<展示会>
・出展商品の商品力が前提であるが、展示会出展に係わる費用を考慮し、予算の範囲内で、展示方 法、展示方法やパンフレットなどのツールを工夫する。
・また、準備期間〜出展後のアフターフォローまでを考慮した社内体制の整備が重要。
<店舗>
・店舗出店によって、立地条件、店舗の人材の量と質の確保・育成、運営コストの負担、売上不振 などで苦戦するケースが目立つ。
・店舗開設によって、消費者の声など今後の開発に役立つ情報を得たり、認知度・知名度が向上し たり、社内の意識・モチベーションが向上したりするなどの効果が得られるケースが多いが、最 低限の売上確保が継続するために必要不可欠であり、上記の課題に向けた緻密な計画・取り組み が重要となる。
<通信販売>
・HP作成・運営、在庫管理、顧客管理、顧客対応など、運営面で経験・ノウハウが必要であり、
社内体制の整備や外部人材の効果的な活用が重要。
<海外への輸出>
・商品が輸出先のニーズに合致しているのかを見極め、エージェントや商社の機能を有効に活用す ることが重要。
・その際、輸送費、旅費、出展費用、エージェント費用など出展に係わる全体の費用に留意すると ともに、現地でのコミュニケーション、代金回収、キャンセル、為替リスクなど、国内とは異な る商慣習や留意点に配慮する。
<外部人材の活用>
・商品開発、販路開拓など様々なシーンで、事業者にないノウハウ・専門性を持った外部の人材を 活用することは成功に向けたポイント。
・但し、「期待した結果が得られない」、「費用対効果に疑問」など、人材のアンマッチが生じるケー スも見られる。また、「意思疎通」「考え方・方向性の相違」といったコミュニケーション面で苦 労・時間を要するケースも多い。
・すなわち、外部の人材が本当に自社の求める人材なのか、適正があるのかといった見極めや、意 思疎通を図り考え方・方向性を共有することが重要な要素となる。
(2)自立事業事例集(ヒアリング調査レポート)に基づく成功と苦戦要因の深堀
本項では自立事業事例集によって得られた情報により、アンケート結果から導き出された成功要 因と苦戦要因の深堀を行う。
<成功要因の深堀>
◇商品開発・生産体制の整備
①商品製造の効率化
外部コンサルタントの指導のもと、生産管理をすることで小売の求める短納期生産に対応
・生産体制の面では小売が求める短納期生産に対応するために、徹底的に見える化を図り、無駄な時 間や作業を排除することで短納期生産を可能にした。外部コンサルタントの指導のもと見える化を 行い、生産計画や人員配置を組み立てている。(コボラリンチェ)
自社工場を保有している利点を活かし、サンプル品を効率的に製造、小売との交渉を優位に進めた
・自社工場を持っていることも重要な要素であった。優れたパタンナーがデザインした商品を当社は 自社工場を保有していることによって、1 日程度でサンプル品を製造できた。これを「小売店の店 舗の店長から直に評価してもらい、その評価を踏まえてまたすぐに作り直す」といった活動が可能 であった。これが工場を持っていない企業であると、サンプルができるまで最低でも3日は掛かる であろう。このようなスピーディなサンプル品の生産活動で話し合いがスムーズに進んだことも成 功した理由である。(平和台ドレス)
新規設備を導入することで、小ロット対応が可能となった
・スクリーン印刷の場合、従来はオートスクリーン印刷方式を採用していた。しかし、この方式であ ると製品を製造するにあたって必要な「型」のコストが非常に高い。ひとつの製品を生産するにも 型が必要になるため、小口の注文に対する生産コストは非常に高く採算が合わないものであった。
また、装置の特性上、対象とする素材に制約があった。
・しかし、自立事業によってデジタル技術を用いたインクジェット印刷機を導入し、それらを解消す ることができた。(丸枡染色)
②差別化した商品の開発
導入数が少ない特殊な機器を購入することや多様な加工技術を持つことで製品を差別化
・導入したWカバーリング機は特殊なものであり、同業者で導入しているケースは少なく、製品の差 別化が図れ、新規開拓の材料となった(カツミ産業)
・自立事業の成功のためには、自社でしか生産できないオリジナリティのある製品を展開する必要が あると考えている。当社は、2次加工で長年培ってきた加工技術が51種と、固有コア技術が3種あ り、サンプルも1万点以上に上っている。これら技術を組み合わせることによって、デザインのイ ンスピレーションが無限に広がり、様々なデザインの実現化が可能である。(狭山ホームワーキング)