岩崎 裕治
2) 腎症状(腎不全、腎のう胞など)
神田 祥一郎
【サマリー】
JSRD の腎障害として腎嚢胞、ネフロン癆が知られている。これらは早期には臨床症 状が明らかではなく、潜行性腎障害が進行し腎機能低下が高度になって初めて診断され る例もあり注意が必要である。
められていた(そのうち 2 例は剖検例)。それ以前の報告では、「JSRD」という病名は出 てこないものの、1971 年の Fried らによる腎に多発する嚢胞と小脳虫部形成異常を伴 う家族例の報告がある 2)。現在では JSRD に伴う腎疾患は前述の嚢胞腎に加えネフロン 癆が知られている。
② ネフロン癆と嚢胞腎
ネフロン癆は病理学的に①尿細管基底膜の破綻②尿細管の萎縮や嚢胞形成③間質の 慢性炎症、線維化を 3 主徴とする疾患である。臨床的には多尿、成長障害、進行性腎障 害を呈する。ネフロン癆は肉眼的に嚢胞を認めなくとも病理学的(顕微鏡的)には嚢胞 を認めることや進行と共に嚢胞を肉眼的に(超音波検査等画像検査によって)検出でき るようになることから、JSRD に伴う 2 種類の腎疾患、嚢胞腎とネフロン癆、は腎症状の 病期の違いであり両者を連続した疾患概念と捉える考え方もある。実際にはネフロン癆 の 70%に嚢胞を認め、嚢胞は皮髄境界を中心に 1~15mm 大のものが 5~50 個認められる ことが多い。腎臓が肥大し多発する微小嚢胞を認め、常染色体劣性多発性嚢胞腎と鑑別 を要する例も報告されている3)。
③ ネフロン癆の臨床症状
ネフロン癆は JSRD にのみ認められる腎疾患ではない。腎外症状を伴うネフロン癆は ネフロン癆患者の 10%強であり4)、JSRD はその一部である。一方、JSRD の中で腎疾患を 合併するのは 30%程度とされている5)。
ネフロン癆の臨床症状は典型的には 4-6 歳頃より尿濃縮障害(塩類喪失腎不全)を呈 し、多飲多尿を初発症状とすることが多い。進行すると貧血、成長障害など腎不全に伴 う症状を認める。ネフロン癆は末期腎不全に至ることが多く、小児末期腎不全の原因疾 患の 5%を占めるという報告や、30 歳以下の末期腎不全患者の原疾患の中で最も多いと いう報告がある4)。JSRD に伴うネフロン癆も同様に、最終的には思春期以降に末期腎不 全に至り、腎代替療法を要する例が多い。症状の重い場合は、出生前から嚢胞が確認さ れ嚢胞腎と診断されることがある。浮腫や高血圧、血尿、尿路感染症などの症状を呈す ることは少ないため、潜行性の腎不全が高度になってはじめて気づかれる場合があり注 意が必要である。
【参考文献】
1) King MD, et al. Joubert's syndrome with retinal dysplasia: neonatal tachypnoea as the clue to a genetic brain-eye malformation. Arch Dis Child 1984;43(4):726-31.
2) Fried K, et al. Polycystic kidneys associated with malformations of the brain,
polydactyly, and other birth defects in newborn sibs. A lethal syndrome showing the autosomal-recessive pattern of inheritance. J Med Genet 1971;8(3):285-90 3) Gunay-Aygun M, et al. MKS3-related ciliopathy with features of autosomal
recessive polycystic kidney disease, nephronophthisis, and Joubert Syndrome.
J Pediatr 2009;155(3):386-92.
4) Hildebrandt F, et al. Nephronophthisis: Disease Mechanisms of a Ciliopathy. J Am Soc Nephrol 2009;20(1):23–35.
5) Saraiva JM, et al. Joubert syndrome: a review. Am J Med Genet 1992;43(4):726-31.
【二次資料】
a) 日本腎臓学会. エビデンスに基づく CKD 診療ガイドライン 2013.
https://www.jsn.or.jp/guideline/ckdevidence2013.php b) 日本腎臓学会. CKD 診療ガイド 2012.
https://www.jsn.or.jp/guideline/ckd2012.php
c) 日本腎臓学会・腎病理診断標準化委員会 腎生検病理アトラス~「腎生検病理診断 標準化への指針」病理改訂版. 東京医学社 2010.
d) Liapis H, et al: Cystic Diseases and Developmental Kidney Defects. In Jennette JC, Olson JL, Silva FG, D’Agati VD (eds): Heptinstall’s Pathology of the Kidney, 7th ed. Wolters Kluwer 2015:119-171.