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耐震診断の結果、既設構造物の耐震性能が不足することが明らかとなった場合は、耐震補 強等の対策を検討する。

[解 説]

(1) 耐震性能(補強)レベル

既設構造物の耐震性能は、新設構造物と同等の耐震性能を有するようにしなければならない。

この場合、補強の対象となる構造物の供用期間は原則として新設構造物と同等とする。これ は、新設構造物、既設構造物を問わず、大地震が発生すれば同程度の地震力を受けるため、対 象となる地震動を想定した場合、新設と既設の区別はないという考え方による。

補強すべきレベルとしての耐震性能レベルは、構造物の種類により、レベル 1、レベル 2 地震動を想定し、個々の構造物の位置付けや重要性から選定される。

図-7.4.1 は、補強による性能向上の概念とそれに対する耐震性能の目標を定めたものであ る。一般的に構造物は、経年変化と共に構造物耐力が低減していくため、現時点での耐力を正 しく評価し、将来的にも維持できるようにしなければならない。

このことは、建設当時と現在の要求性能が同一であったとしても、構造物の耐力が減少して いれば、それを向上させる必要があるということである。

図-7.4.1 補強による性能向上の概念

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(2) 耐震補強における留意点

1) 構造物の全体系のバランスの考慮

耐震補強後の性能バランスは、構造物全体として評価しなければならない。また、耐震補強 工法の耐震性能は、その性能が確立されたもの、又は検証されたものとする。

構造物の全体系としての性能とは、例えば、橋梁、基礎構造物の場合は、上部構造、支承、

橋脚、基礎が、全体としてバランスを保持するように考慮し、一部位の補強が他の部位の損傷 に大きな影響を与えることがないように、全体系として取り扱わなければならない。耐震補強 による全体系のバランスを考慮しなくてはならない事例として、図-7.4.2 に排水機場の耐震 補強の検討ケースを示す。また、頭首工堰柱の曲げ補強において、補強鉄筋による剛性増加と じん性低下のバランスの検討事例を図-7.4.3に示す。

したがって、補強された構造部位の耐震性能の評価にとどまらず、構造系としての耐震性能 及び他の荷重系に対する安全性も評価する必要がある。

図-7.4.2 排水機場における耐震補強の影響に関する事例

(土地改良施設機能更新等円滑化対策事業報告書より)(平成 20 年)

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図-7.4.3 頭首工における耐震補強の影響に関する検討事例

(土地改良施設総合対策支援事業 基幹的施設の耐震対策報告書 その 1 p.48 より)(平成 22 年)

2) 液状化地盤における留意点

液状化の可能性がある地盤における構造物については、対策工の検討や液状化を考慮した地 盤も含めた全体系での耐震性能の検討が必要である。

3) 補強された構造物の耐震性能の評価

補強された構造物の耐震性能は、定量的な方法によって評価しなければならない。そのため に、実物大の試験、数値解析、地震観測等を行って評価された方法を採用するものとする。特 に新工法や新材料を用いる場合には耐震性能の評価方法によって十分な検証がなされたもので なければならない。

引用・参考文献

ⅰ)土木学会:土木構造物の耐震基準等に関する「第二次提言」(1995)

ⅱ)土木学会:2001 年制定 コンクリート標準示方書(維持管理編)

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