第 5 章 Symphony の耐故障性向上手法 27
5.4 耐故障性向上手法の評価実験
5.4.3 耐故障性向上のまとめ
実験の結果から,従来の定期的な安定化プロトコルを実行することに加えて,新規ノードの参加 の直後に近隣のノードに安定化を行わせることで,より少ない安定化処理でネットワークを維持で きることが分かった.
しかしながら,安定化プロトコルを行っている状態においても,図5.3のように,サイクル経過 毎に探索成功率は徐々に減少している.安定化プロトコルの実行頻度を上げて実験を行ったが,通 信回数が大幅に増加する一方で,探索成功率は大きな向上は見られなかった.実験中のノードの動 作を確認したところ,ハッシュテーブルの管理ノードが他のノードのShort Link List に登録され ていないことによるネットワークからの孤立状態になっている探索失敗が多数を占めていた.安定 化プロトコルが行われる前にShort Link Listの周辺ノードが大きく変化してしまったことや,安 定化プロトコルによって修復された情報が間違ったまま周囲のノードに共有されてしまった可能性 が考えられる.そのような孤立状況やノードの正確な位置を判断できる機能の実装が今後の課題と なる.
おわりに
本研究では,分散ハッシュテーブルの一種である Symphony のコンテンツ探索を Symphony の経路表をハッシュ空間上近距離に密集化させる手法を用いて拡張する手法を提案した.さらに,
churn状態における耐故障性の向上手法として,ノードの参加時に周辺ノードに安定化プロトコル
を実行させる手法を提案した.提案手法の有用性を調べるため,シミュレーションによる評価実験 を行った.
高速化手法では,従来手法に比べ,10% の高速探索が可能となり,ネットワークトラフィック 低減にもつながった.耐故障性向上手法では,高速化手法で実装した経路表を応用することで安定 化プロトコルの機能を定義し,高速化手法で応用した経路表が近距離に密集化する特徴を用いて,
ハッシュ空間上に近距離に位置するノードの安定化プロトコルを重点的に行うことでより少ない ネットワーク負荷で探索成功率の維持が可能となった.
シミュレーションの結果から,穏やかな churn 状態においては高い探索成功率を長期間で維持 できることが示された.また,激しいchurn 状態では,従来手法に比べ探索成功率の減少を抑え ることは可能ではあったが,長期間で激しいchurn が起こった場合は探索成功率が著しく低下し てしまう状態が目立った.
今後の課題として,激しい churn 状態においても長期間で探索成功率を維持できるようにネッ トワークにおけるノードの正確な位置を補完できる手法の導入が求められる.
謝辞
日ごろから多くの御指導を頂きました太田義勝教授,鈴木秀智准教授,テープウィロージャナポ ン・二ワット助教に深く感謝いたします.そして,日頃何かとお世話になりました落合美子事務員 に感謝いたします.また,本論文作成にあたって特にお世話になりました太田義勝教授に深く感謝 いたします.最後に,日頃から熱心に討論して頂いた研究室の諸氏に感謝いたします.