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第2章 近年に承認された抗てんかん薬における小児用法・用量の開発に関

4. 考察

4.1 小児用法・用量設定のための開発

小児用法・用量設定のための臨床試験は,成人用と同時期の開発,成人用か ら遅れての開発,PMDA からの製造販売後でのデータ集積の指導,医療上の必 要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議16の判断を受けての臨床開発や公知申 請など様々であるが,今回の調査結果より臨床試験データが重要であるとの PMDAの見解が示唆された.

また,小児用薬の開発には,用法・用量の設定の前に小児に適した剤型の開 発が必要であることが明らかになった.小児の用法・用量を有する抗てんかん 薬の剤型には,錠剤のみの品目,錠剤のほかに小児の服用に適する細粒やドラ イシロップを有する品目,一時的に経口投与ができない患者のため点滴静注を 有する品目があった.抗てんかん薬は継続的に服用する必要があるため,特に 小児に対しては,服薬アドヒアランスを向上でき,かつ,用量の調節が容易な 剤型が望まれる.レベチラセタム及びトピラマートは初回承認から小児の用 法・用量及び小児用剤型が承認されるまでそれぞれ3年及び6年のタイムラグが 認められた.いずれの品目も,医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討 会議の評価を受けて小児の用法・用量の開発が要請されたものであり,レベチ ラセタムについては海外では内服液剤が市販されていたものの,使用時の簡便 性等を考慮して本邦ではドライシロップ剤が新たに開発されていた19.世界保 健機関(WHO)は小児用製剤開発においてAcceptability(許容性)及びPalatability

(嗜好性)が重要としており20,EMAのReflection Paperにおいても経口固形製 剤の中では散剤やドライシロップに相当する剤型は比較的低年齢(2~5歳)か

しいと考えられる.てんかんの発症率は3歳以下が高いことも踏まえると21,よ り服用しやすい剤型とともに追加の臨床データが望まれる.しかしながら,一 般的に,化合物の物理的化学的性質によっては,製剤の安定性や薬物動態挙動 の観点から散剤やドライシロップでの製剤化が困難な場合や,成人用剤型から の剤型変更は生物学的同等性を保つことが難しい場合も考えられる.特に近年 は難溶性の薬物を固体分散体化等の特殊な技術により製剤化しているものもあ り,その場合は特にこれらの剤型を選択することは難しいと思われる.また,

小児用剤型は成人用剤型に比べると製造数量が大きくはないため,レベチラセ タムの事例のように本邦にのみ新たな剤型を開発・供給することは製造コスト の観点から容易ではない場合がある.この課題を解決するためには,本邦のみ 細粒を新たに開発するのではなく海外市場と共通の小児用剤型を選択すること や,錠剤に細粒や液剤を追加するような大幅な剤型変更ではなく,成人用錠剤 の製剤開発で得られた知見を活用でき,共通の添加剤を使用できるような剤型 を開発することが望ましい.例えば,近年,小児用剤型として開発されている ミニタブレット(直径が数ミリ程度の錠剤)のように22,海外市場にも適用で きる可能性があり,かつ,Acceptability及びPalatabilityを満たす小児用剤型を開 発の早期から模索することも有用であると考える.ICH E11(R1)8で推奨されて いるように開発早期の段階から小児用剤型の製剤開発に着手する観点からは,

欧米のように初回承認申請に向けた開発段階(欧州は成人での第 II相臨床試験 前,米国は成人での第 II相臨床試験後)において,小児用医薬品の開発計画を 検討し,規制当局に提出する機会は有用であると考える.成人用の開発過程で 小児用医薬品の開発の検討が義務づけられていない日本では,小児用の剤型及

4.2 小児用法・用量の審査,承認条件及び医薬品リスク管理計画

小児の用法・用量の審査においては,PMDA の判断又は専門協議での助言を 受け,初期用量,漸増方法,維持用量等がより明確となるように用法・用量の 記載変更を指示されていた.添付文書における用法・用量は,医療現場での投 薬又は服薬指導の際に参照される主な資料であり,誤解はあってはならないた め,より明確な記載とされることは望ましい.承認条件及び医薬品リスク管理 計画については,小児の用法・用量を含む初回承認時に適用された品目もあっ たが,小児の用法・用量の承認時ではなく,単剤療法や別の効能追加の承認時 に承認条件として提出されている事例が多かった.これは,医薬品リスク管理 計画指針が発出されたのは2012年4月であり17,ペランパネル水和物を除いて初 回承認時期がそれ以前であったためである.しかしながら,PMDA による審査 では,承認条件及び医薬品リスク管理計画の有無に関わらず,小児への限られ た投与経験を考慮し,製造販売後調査で適切に情報が蓄積されるように指示さ れていた.一般的に小児の用法・用量の開発においては開発時の治験での症例 数が特に限られてしまうため,製造販売後の安全監視及びエビデンス蓄積は重 要である.

4.3 小児用法・用量の開発促進のための方策

調査の結果から,小児用医薬品の開発を円滑に進めるため,いくつかの留意 すべき事項を明らかにすることができた.まず,臨床試験で確認される小児の 用法・用量は限られた経験に基づいたものになるが,小児の用法・用量を有す る医薬品を少しでも多くかつ早く医療現場に届けるための一つの方策として,

製造販売後の安全監視及びエビデンス蓄積を前提とし,国際共同治験を活用す

開発促進のための方策になりえると考える.

また,平成30年4月に施行された臨床研究法23及び臨床研究法施行規則24で 実施される特定臨床研究結果を,小児用法・用量の設定や既承認薬の効能追加 のための承認申請資料に使用できるかについては,未だ規制当局の結論は出て いないものの,エビデンスを積み重ねていくための手段として有望視できる.

てんかんは決してまれな疾病ではなく,小児期に発病したてんかんは,成長 の過程で抵抗性の難治性てんかんに約3割が移行し,患者の予後に影響するため

2526,小児用や難治性てんかんの薬剤開発が望まれる.

以上の留意点を小児用医薬品のライフサイクルに沿って図2-1にまとめた.製 薬企業が成人用医薬品の開発と併行して早期から小児用医薬品の開発計画の策 定と小児用剤型の開発を始めることが主軸となるものの,規制当局及び製薬企 業のそれぞれの立場から協働して様々な方策を試みていくことが,小児用法・

用量を有する医薬品が今後一層増えていくことにつながるのではないかと期待 される.

図 2-1 小児用法・用量の開発を促進するための留意点

(製薬企業・規制当局)

第3章 長期実務実習を終えた薬学部学生への小児用医薬品使用に関

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