• 検索結果がありません。

6.1 反応時間

 本実験では実験後のフィルタの変化が黒い生成物が付着,黄色く変化,変化なしの3つの状態 が観察できた.このようなサンプルの変化が電気炉内で反応する時間に関係あると考え,以下の ような解析を行った.

6.1.1 流速計算の考え方

 この実験系においてガラス管内の流速を求めるため,簡単なモデルを考え,計算した.

Manometer(Pin)

Pirani gauge

Pirani gauge(Pout)

A U Chamber

pomp Quartz tube

Qout Ethanol + Ar

Th Electric furnace

T l Manometer(Pin)

Pirani gauge

Pirani gauge(Pout)

A U Chamber

pomp Quartz tube

Qout Ethanol + Ar

Th Electric furnace

T l

TH : 電気炉温度(K) TL : 環境温度(室温) (K) Pin : ガラス管圧力 (Torr) Pout : ロータリーポンプ圧力(Torr) A : ガラス管断面積(m2)

Q : 単位時間あたりのポンプ排出量(m3/s) U : ガラス管内流速(m2/s)

Fig.6-1 実験のモデル

 このモデルでは気体を理想気体であると仮定する.単位時間にガラス管内に流入する気体の質 量Minは,

AU P M RT

in H

in

=

      R:気体定数 と表せる.

また同様に単位時間にロータリーポンプから排気される気体の質量Moutは,

Q P M RT

out L out

=

である.MinとMoutは等しくなるので

A P T

Q P U T

Q P

RT AU P

RT

in out H out

L out

H

L

=

=

となる.ここで環境温度TL=293(K),排出量Q=200(l/min),ガラス管断面積5.3(cm2)が与えられて いるのでガラス管内圧力,ロータリーポンプ圧力,電気炉温度を代入すればよい.ただしロータ リーポンプ圧力測定用のピラニ真空計は空気測定用であるためエタノール,Arの混合気に校正す る必要がある.

6.1.2 ピラニ真空計の校正

 ピラニ真空計の原理(19)をFig.6-2に示す.

測定子

フィラメント(白金細線)

電圧 Q(放射)

Q(接触部への熱伝導)

Q(気体への熱伝導)

測定子

フィラメント(白金細線)

電圧 測定子

フィラメント(白金細線)

電圧 Q(放射)

Q(接触部への熱伝導)

Q(気体への熱伝導)

Fig.6-2ピラニ真空計の測定子

ピラニ真空計の測定子には白金細線のフィラメントに電圧がかけてある.フィラメントからの 発熱は気体への熱伝導Qg,熱放射 Qr,接触部への熱伝導 Qsの総和と釣り合う.フィラメントに 流れる電流をI,抵抗をRとすると

R I Q Q Q

Q= g + r + s = 2         (1)

圧力が十分小さい領域では気体への熱伝導Qgは,圧力に比例する.

p T T S

Q

g

= α Λ ( −

0

)

        (2)

ここでTはフィラメントの温度,T0は環境温度,Sはフィラメントの表面積,αは適応係数と呼 ばれる係数である.Λは自由分子の熱伝導率と呼ばれ分子の質量m,比熱比γ,ボルツマン定数

kBを用いて,

mT k

B

π γ

γ

2 ) 1 ( 2

1

= +

Λ

        (3)

である.熱放射Qr,接触部への熱伝導Qsは圧力に依存せず一定値を示すので,(1)式は

)

( 0

0 2 2

T T S A

R I Ap R I

− Λ

=

+

=

α

        (4)

と書き換えられる.ここでR0は圧力が0のときの抵抗の値である.(4)式を変形して

A I I

p = R (

2

02

)

        (5)

となり,電流値から圧力を求めることができる.空気からエタノールへ校正を行う場合,気体の 種類によって異なるのはA内の自由分子の熱伝導率Λだけであり,この比を乗じればエタノール の圧力を求められる.空気の比熱比を1.4,エタノールの比熱比を1.1,空気とエタノールの質量

比を46:29とすれば,結果として

air

ethanol

p

p = 0 . 46 ×

        (6)

となる.

 ここでピラニーゲージが分子流と中間流の領域で使用ことから,エタノールのクヌッセン数Kn

を求める.気体の平均自由行程λは

b a b

b a a a

m +m +

=

1 2

1

ρ σ ρ σ

λ

        (7)

σ:気体分子の散乱断面積 ρ:気体の密度

m:気体分子の質量 添え字a,b:気体の種類

で求められる.気体の散乱断面積σはそれぞれ分子直径から求められ,エタノールの分子直径を 0.45nm,Arの分子直径を0.34nmとして計算するとエタノールの平均自由行程λethanolはおよそ2μ mとなる.代表長さとしてフィラメント直径25μmをとると,クヌッセン数Kn

08 . 25 0

2 =

=

= D