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第 6 章 評価実験 27

6.4 考察

読解の正確性,読解の所要時間,各表現の理解しやすさの観点から評価及び考察を行う.

各タスクにおける平均正答率の比較には,1対の標本に対する有意水準5%の両側t検定を 用いる.t検定における計算には,Microsoft Excel 2008 for Macに搭載されているTTEST関 数を用いる.なお,t検定の自由度はν= 6である.

6.4.1 描画領域の大きさとカテゴリ分割数の関係性

色付きMosaic Plotの各描画領域におけるタスクの正答率について,分割数の違いによる有

意差の有無を検定する.カテゴリ分割数がP(n)のタスクにおける平均正答率をµ(n)とおく.

カテゴリ分割数の各組み合わせに対して,以下の仮説を立てて検定する.



帰無仮説H0:µ(na)−µ(nb) = 0

対立仮説H1:µ(na)−µ(nb)'= 0 (6.1)

有意水準5%におけるt検定の検定結果を表6.1に示す.表中の数値は両側t検定のp値で

あり,p <0.05の場合は帰無仮説を棄却できる.

表6.1:各描画領域におけるCMPの平均正答率に関するt検定のp値 描画領域の1辺(pixel)及びArea Graphの有無

700 (with AG) 700 (without AG) 24 12 6

µ(16) 92.86% 92.86% 78.57% 88.10% 71.43%

µ(8) 80.95% 83.33% 73.81% 80.95% 66.67%

µ(4) 95.24% 85.71% 80.95% 76.19% 80.95%

H0 :µ(16)−µ(8) = 0 0.1824 0.2308 0.4571 0.2894 0.7030

H0 :µ(16)−µ(4) = 0 0.6036 0.0781 0.7358 0.0465 0.4571

H0:µ(8)−µ(4) = 0 0.1112 0.7358 0.1996 0.3559 0.0167

表6.1より,24ピクセル四方以上の描画領域において,カテゴリの分割数による有意差は 確認されなかった.12ピクセル四方および6ピクセル四方の描画領域では有意差が確認され,

前者ではµ(16)'=µ(4),後者ではµ(8) '=µ(4)となった.一方でいずれの描画領域において

も,他の組み合わせにおける有意差は確認されなかった.

6.4.2 Area Graphの影響

Area Graphの有無による正答率とアンケートで得られた意見を元に,Area Graphがデータ

分布の読み取りにどの程度効果的であるかを考察する.描画領域が700ピクセル四方の色付

きMosaic Plotに関する,Area Graphの有無におけるカテゴリ分割数毎の平均正答率及び両側 t検定のp値を表6.2に示す.

表6.2: Area Graphの有無におけるカテゴリ分割数毎の平均正答率及びt検定のp値

CMP (P(16)) CMP (P(8)) CMP (P(4))

with AG 92.86% 80.95% 95.24%

without AG 92.86% 83.33% 85.71%

p値 1.0000 0.8291 0.1030

表6.2より,カテゴリ分割数が8以上の色付きMosaic Plotについては,平均正答率に殆ど 差がなかった.一方で分割数が4の場合については,Area Graph有りのタスクに対する平均

正答率がArea Graph無しのタスクと比べて約10ポイント高かった.これは,4分割のカテゴ

リでは細かな分布の把握が比較的困難であるため,Area Graphから得られる情報をより重要 視した結果であると推測できる.

またカテゴリ分割数毎に,Area Graphの有無によって平均正答率に有意差が生じるか否かを 検定した.その結果,全てのカテゴリ分割数において平均正答率の有意差は確認されなかった.

次に,アンケートから得られた意見の概要を以下に示す.

• Area Graphが表現として最も理解しやすく,学習コストも低かった.

• Area Graph有りの場合,回答に対する確信をより高く持つことができた.

これらのArea Graphに関する意見から,Area Graphは理解しやすい表現手法であり,また

データの読解を容易にする効果があると推測できる.

6.4.3 色付け手法の比較

本実験では,被験者毎かつタスク毎に各色付け手法を利用していた時間を計測して,色付 け手法の利用率を計算した.各被験者における色付けの利用率および全被験者における平均 利用率を図6.6に示す.なお本節では,次元間の相関に着目した色付け手法をColor1,X軸 次元のカテゴリ分布に着目した色付け手法をColor2,Y軸次元のカテゴリ分布に着目した色 付け手法をColor3と略記する.図6.6についても同様の略記を用いる.

図6.6より,全ての被験者において色付けの利用率がColor1<Color2<Color3となった.ま た被験者4については,Color1は殆ど利用せず,Color2及びColor3のみを用いてタスクに回 答していた.

タスク終了後のアンケートにおいて,各色付け手法に対する利用頻度と貢献度を5段階の リッカート尺度を用いて回答してもらった.各色付け手法における利用頻度の集計結果を図

6.7,貢献度の集計結果を図6.8に示す.

図6.6:各被験者における色付けの利用率および全被験者における平均利用率

図6.7: 5段階リッカート尺度による各色付け手法の利用頻度

図6.8: 5段階リッカート尺度による各色付け手法の貢献度

図6.7の利用頻度について,平均値はColor1は他の2色より低い値となり,Color2及び

Color3については殆ど差が見られなかった.一方で被験者毎に比較すると,5名の被験者が

Color1に対して他色と同等かそれ以上の評価を付けており,これは実際に計測した利用率(図

6.6)とは異なる結果となった.図6.8の貢献度についても,利用頻度とおおよそ同様の結果と なった.

実際に計測した利用率とアンケート結果が異なった原因としては,Color1に利用している 色の種類が少なかったことが推測される.Color2及びColor3では色相の分布を細かく見る必 要があるため,色相が2種類のみのColor1と比べて読解に時間がかかる.よって実際に計測 した利用率ではColor1の割合が低くなったと考えられる.アンケートにおけるColor1の利 用頻度及び貢献度における評価の高さから,Color1は他の色付け手法と同様に,判断材料と して有用な手法であると判断できる.

また,各色付け手法に対するアンケートの意見の概要を以下に記す.

1. 次元間の相関に着目した色付け手法(Color1)について.

• 全体的な形状をイメージするのに役立った.

• 色(明度及び彩度)と傾き具合の関係性がわかり辛い.

2. X軸次元のカテゴリ分布に着目した色付け手法(Color2)について.

• X軸のデータ分布に偏りがある場合は色相で判別可能であり,見やすかった.

• 均等に近い分布の場合は判断が難しい.

• 全体像を想像することができた.

• 矩形の分割順序がX軸カテゴリ→Y軸カテゴリであったため,Color2と比べると 読解が難しかった.

Color1は全体像の把握に関して有用であるという意見が得られたが,一方で読み取りの難

しさが欠点としてあげられた.Color2及びColor3はデータを正確に読み取ることができ,ま た理解しやすいという意見を得られた.

6.4.4 Scatterplotとの比較

色付きMosaic Plot及びScatterplotについて,4種類の描画領域における平均正答率に対し

て検定を行う.検定に使用する色付きMosaic Plotのカテゴリ分割数は各描画領域で平均正答 率が最大となった分割数とし,いずれもArea Graphは非表示とする.

描画領域の1辺のピクセル数がnのタスクにおける平均正答率について,色付きMosaic Plot の平均正答率をµC(n),色付きMosaic Plotの平均正答率をµS(n)とおく.各描画領域に対し て,以下の仮説を立てて検定する.



帰無仮説H0C(n)−µS(n) = 0

対立仮説H1C(n)−µS(n)'= 0 (6.2) 各描画領域における表現手法毎の平均正答率及び,両側t検定のp値を表6.3に示す.

表6.3:各描画領域における表現手法毎の平均正答率及び両側t検定の結果

n 700 24 12 6

µC(n) 92.86% 80.95% 88.10% 80.95%

µS(n) 95.24% 83.33% 54.76% 38.10%

p値 0.6036 0.8588 0.0177 0.0057

表6.3より,n= 700及びn= 24においては有意水準5%で有意差が確認できなかった.一 方で,n= 12及びn= 6においては有意差を確認することができ,µC(n)'=µS(n)となった.

表6.3における各表現手法の平均正答率から,µC(n)> µS(n)であると判断できる.

色付きMosaic Plot及びScatterplotを用いたデータ分布の読解に関して,ある程度大きな描

画領域においては有意差はなかった.一方で,12ピクセル四方以下の非常に狭い描画領域に おいては,色付きMosaic Plotの方が高い正答率となり,読解における正確性の高さが確認で きた.また色付きMosaic Plotは,全ての描画領域において高い可読性を維持することが可能 であった.これは,色付きMosaic Matrixが高次元データの概観を得るための手法として有用 であることを示している.

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