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Q1の自然放射線に関する認識について、調査 1–1及び1–2の双方において、

約 6 割が正しい回答を選択していた。事故以前に行っている一般公衆を対象と した調査では、調査対象者の 5 割が自然放射線の存在を知っていると報告して いる 48)。また、福島原発事故後に関西地区に住む一般公衆を対象としたアンケ ート調査の結果においても、宇宙や大地、自然界から放射線を受けているとい う質問に関して調査対象者の 8割が正解であったとしている 49)。これらのこと から、一般公衆は福島原発事故以前から自然放射線の存在に対する認識はある 程度あり、さらに福島原発事故による健康影響に関する説明を行う上で、自然 放射線の情報について発信されていたためか、自然放射線の存在は公衆に徐々 に知れ渡ってきていると思われる。しかし、残り約 4 割の対象者に関しては年

間1 mSv 以上の被ばくをしているという認識を持っていないことが分かった。

UNSCEARの報告書によれば、自然界の放射線源から受ける年間実効線量の世界

平均は約2.4 mSvとされている30)。Q5の健康に影響が出る線量として、0 mSvや

1 mSvという回答もみられたことを併せて考察すると、自然放射線の存在につい

て知らない、もしくは知っていても、その実効線量の値までは明確に把握して いない可能性があると考えられる。また、自然界からの放射線による被ばく線 量は少ないと認識している可能性もあり、極低線量でも健康に影響が生じると 考えていることも推察される。職員は町民に比べて「いいえ」と回答した人の 割合が有意に多く、Q5の健康に影響が出る線量では100 mSvと回答している人 が多かった。このことから、職員においても自然放射線の年間の実効線量と健 康に影響が出る線量の関連については把握しておらず、断片的な知識として記 憶しているものと思われる。

Q2の人工放射線と自然放射線に関する認識について、調査 1–1及び1–2の結 果から、対象者全体では約 5 割の人が、人工と自然放射線では体に与える影響 は異なるとしていた。村井の調査49)においても、「人工放射線と自然放射線では 影響が異なる」という問いの正答率は 15%であったと報告している。一般に、

リスク認知の傾向として、人工物は天然由来のものに比べて危険であると認知

する傾向があると報告されている 50)。食品に関するリスク認知では、化学的に 合成された食品添加物は不安が高いとしているが、同じ食品添加物でも天然成 分由来では不安は低くなったとしている。食品添加物そのものがネガティブに 受けとめられているのではなく、成分が人工的に合成されているという認知が 不安感を規定している 51)としている。よって、放射線の影響に関しても福島原 発事故の人工由来の放射線に対し、負のイメージを抱いているのではないかと 考える。

また、辻ら 52)が行った一般公衆を対象とした調査では、事故以前にも対象者

の 40%近くが原子力施設からの放射線に日常的に被ばくしていると誤解してい

ることが明らかになったとしており、原子力発電所から出る人工の放射線は体 に与える影響が大きいと考えているのではないかと思われる。

調査 1–1 から、浪江町民は青森県民に比べて人工放射線と自然放射線では体 に与える影響は異なると認識している人が多かった。また、調査 1–2 では女性 や50歳以上の男女が、また、職員よりも町民の方が、人工放射線と自然放射線 による健康影響に違いがあると認識していた。受講経験の有無では有意差はみ られなかったが、受講回数 3 回以上の人では、人工放射線と自然放射線による 健康影響に違いがあると認識していた。福島原発事故により、環境中に放出し た人工の放射線物質により、浪江町民は生活場所や生活習慣、職業などあらゆ るものを変えなければならない状況となった。原発事故が原因で様々な困難を 強いられことで、浪江町民は青森県民に比べて人工の放射性物質に対しては負 のイメージを抱き、自然と人工の放射性物質では体に与える影響が異なるとい うイメージを強く抱いているものと思われる。また、一般にリスク認知は、年 齢差に関しては、若者よりも高齢者、男性よりも女性が大きく評価するとされ50)、 本研究においても浪江町民の中でも特に、女性や年齢層が高い人は、自然放射 線と人工放射線では影響が異なると認識したと思われる。また、職員と町民で は町民の方が人工放射線と自然放射線では影響が異なると回答していた。これ は、職員も町民の原発の被災者という立場であることは同様であるが、原発事 故後から職員は町の除染に関することや町民からの放射線に関する疑問等につ

いて真摯に対応してきたと思われる。よって、人工放射線と自然放射線に関す る影響について特別視はしていないものと考える。受講回数が 3 回以上の人で 有意差がみられたことは、今回の福島原発事故後、様々な講演会に参加し、多 くの情報を得たものと推察される。しかしながらその情報を断片的に理解して いるため「自然放射線」と「人工放射線」の放射線が身体に与える影響が異な ると考えたと推察される。

Q3に関して、調査 1–1及び1–2の回答者の大多数が外部被ばくと内部被ばく では同じ線量の場合、体に与える影響は異なると認識していた。福島原発事故 後、環境中に放出された放射性ヨウ素は、呼吸や食物の摂取により血中に取り 込まれ甲状腺に蓄積し内部被ばくが起こり、甲状腺がんを引き起こす。1986 年 に起きたチェルノブイリ原子力発電所の事故では、一般公衆に対する甲状腺の 高い線量は、事故後数週間で放射性ヨウ素を含む牛乳を摂取したことが原因と されている6)。今回の福島原発事故後にも、ヨウ素の取り込みによる内部被ばく の影響について様々な情報が発信され 15)、福島県民健康調査でも常に取り上げ られている課題であることから、放射性ヨウ素による内部被ばくの影響を心配 しているものと思われる。また、放射性セシウム 134 及び放射性セシウム 137 の物理学的半減期がそれぞれ2年及び30年と比較的長い放射性物質であり、大 気中や海洋に放出後、土壌に沈着し、環境中から農作物へと移行し、食品を経 口摂取することで内部被ばくが生じる。Q6の自由記述の分析からも、多く挙げ られたキーワードは「水・食べ物」に関する内容であり、このワードから人々 は食物や水の摂取によって引き起こされる内部被ばくによる健康影響について 心配しているということが推察される。また、福島県民は東京都民と比べて食 べ物からの放射線について関心を持っている人が多いとの報告がある 53)。した がって、食物摂取を通じて起こる内部被ばくに対する健康影響を気にしている 人が多いと考えられる。福島市民を対象とした福島原発事故の約 1 年後の調査 では、外部被ばくの健康影響に対して大いに不安であるとした人は 37%、小さ くなったとしている人は9%であるのに対し、内部被ばくでは大いに不安として

いる人は45%、小さくなったとしている人は5%としており内部被ばくに対する

不安が深まっているとしている54)。身体の外側から受ける外部被ばくに比べて、

内部被ばくは放射性物質が一定期間体内に蓄積するため、一般公衆にとっては 内部被ばくと外部被ばくでは身体に与える影響が異なるものと感じており、内 部被ばくによる健康影響が外部被ばくよりも強いと感じていることが推察され る。日常生活において不安や疑問がある人ほどQ3で「はい」と回答している人 の割合が有意に多かった。内部被ばくと外部被ばくの体に与える影響について 正しく理解ができていないため、不安や疑問が生じていると思われる。

次に、上記の Q1~3の項目の正答率と属性の関連をみてみると、正答数が 0 の人は、Q6の日常生活において不安や疑問があると回答している人の割合が有 意に多かった。性別、年齢層、受講経験の有無、受講回数、町民と職員の違い では回答の傾向に有意差はみられなかった。また、正答数が 0 であった人の不 安や疑問の内容は、「テレビなどの報道が信じられないこと」、「漠然とした不安」

などが挙げられている。このことから、放射線の基礎知識に関しての理解が不 十分である人ほど、適切な情報の選択及び理解が難しく不信感を抱き、知識が 乏しい故に漠然とした不安を抱くものと思われる。放射線に関する基礎知識を 身に着けることで不安や疑問を軽減することにつながるのではないかというこ とが示唆された。また、質問毎の正答率をみると、1 問のみ正解している人は、

Q1の正答率が高かった。よって、自然放射線源からの年間実効線量に関する情 報は、他の2問に比べて認知度が高いと言える。2問正解している人はQ1及び Q2の正答率がQ3の正答率よりも高かったことから、Q3の内部被ばくと外部被 ばくの身体に与える影響についての知識は、一般公衆には浸透していない情報 であると言える。

Q4に関して、調査 1–1、1–2を通じて最も多くみられた回答は、「がん・発が ん」であった。人体における放射線の健康影響についての科学的知見は、これ までに広島・長崎の原爆被爆者の疫学調査のデータ、過去の放射線関連の事故 を元に整理されている 29)。原爆被爆者では「がん」のリスクが高いという情報 は、一般公衆にもよく知られている。原爆被爆者の症状は、高線量率の放射線 被ばくによるものであり、低線量・低線量率の放射線による健康影響とは異な

ドキュメント内 「自然放射線被ばく研究を活用した (ページ 37-47)

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