第 5 章 砂場環境のためのホタテガイ検出手法
5.7 考察
られており,ホタテガイと同様に腕の一部分しか見えない.また砂でエゾスナヒトデの体 が覆われている割合は様々であり,図5.29(a), (b)では,各腕の縁を確認することができる
が,図5.29(c)では各腕の先端部のみが確認できるだけである.このように砂に潜る生物
については,生物学的な知見に基づき形状特徴やホタテガイの殻縁部のような空間分布な どをモデル化することで,さらなる応用が期待できる.
一方で砂場環境下において,5.5節で用いた海底動画中に含まれているマヒトデの例を図 5.30に示す.マヒトデは,海底画像に含まれているものと同種であり,礫場環境下と同様 に砂場環境下においても身体は砂に覆われておらず模様などを確認することができる.し かしマヒトデは遺伝的個体差が大きく,図5.30(a)のように体の模様が薄いもの,図5.30(b) のように青色と白色模様のもの,図5.30(c)のように模様は明瞭だが白色が多いものなど が混在する.ヒトデ類の計測について筆者らは,砂場環境下においてヒトデ類の形状特徴 と色彩特徴をモデル化した検出手法を提案し,その有効性を報告している[業績12].エ ゾスナヒトデとマヒトデの違いには,移動の頻度や腕の形状(細い・太い),身体の柔軟 性などが関係しているとされる.このように対象の特徴や環境を考慮することで,検出手 法を設計することが有効である.
5.6節では,海底動画を用いたホタテガイ自動計測システム(3.13節)のためのアプリ ケーションを紹介した.Dawkinsは,海底画像からのホタテガイ計測のためにCUIベース のアプリケーションScallop Detectorを報告している[9].しかし,アプリケーションで用 いられている検出手法ではユーザーが画像データを学習させる必要があり,操作もコマン ド入力を必要とする.本研究において対象となるユーザーは水産資源量調査を行う専門家 や水産業従事者などであり,ユーザーに対して自動計測のために専門的な知識や操作を要 求することは不適切であると考えられる.またScallop Detectorは自動計測のためにユー ザーが環境に合わせた学習をさせる必要があるのに対して,提案手法は海底環境に注目し 海底環境に適した検出アルゴリズムを用いるため,この必要がない.これは対象画像中の 特徴量だけではなく,ホタテガイなどの対象生物の特徴や専門家の経験的知見などを考慮 することで,異なる海域であっても対応することが可能であることを示している.
海底動画の応用例として,計測結果と位置情報を統合し資源量マップを図5.27に,パ ノラマ画像を図5.28に示した.資源量マップは,調査海域で多くの海底動画が撮影され,
自動計測の精度が向上することで,より詳細で高精度化が期待できる.またパノラマ画像 は,従来の標本採集や海底画像などの離散的なデータでは得ることができなかった連続的 なデータの表示方法の一つである.これにより自動計測手法と連続データを用いることで,
従来までは離散的なデータから統計学的に個体密度や個体間距離が算出されていたものに 対して,直接計測が可能となり,より詳細な観測が可能になることを示している.このた め,海底動画を利用した観測技術として海洋水産学や生物学に新たなデータを提供し,新 たな知見が得られることが期待される.
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Doctoral Thesis at Future University Hakodate, 2014
(a) (b) (c)
図5.29:海底動画におけるエゾスナヒトデ(サイズ:450×450).
Luidia yesoensis in seabed video.
(a) (b) (c)
図5.30: 海底動画におけるマヒトデ(サイズ:450×450).
Asterias amurensis in seabed video.