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することでβ-FeSeの層間にアンモニアとCsがコインターカレートされ,(NH3)yCs0.4FeSeが合成さ れる.図4.3(c)のように,β-FeSe粉末とCsを入れたあと,アンモニアを入れると図4.3(d)のように 青みがかる.これはCsがアンモニアに溶ける事でアンモニア分子に電子を渡し,アンモニア分子の電 子軌道の遷移幅が変わるためである.反応が進むとアンモニアに溶けていたCsが全てFeSeの層間に 入ることでアンモニアに電子を供給できなくなるため,図4.3(e)のように透明になる.これが反応の目 安となる.(NH3)yCs0.4FeSeの試料自体は図4.3(f)に示すように,FeSeと同様に黒い粉末である.作 成方法からも分かる通り,この試料では,光電子分光測定ができるほどの大きな単結晶はできない.

図4.3 試料作成の様子.(a)概要図.(b)β-FeSeの層間にCsとNH3が入る.(c)ガラスチュー ブにFeSe粉末とCsを入れた様子.(d)その後,液体アンモニアを入れた様子.アンモニアとCs は反応して青色になる. (e) 6–12日間の反応後の様子.全てのCsがFeSeと反応し透明になる.

(f) (NH3)yCs0.4FeSeの試料の様子.

4.4 実験条件

4.4.1 高圧下粉末 X 線回折測定

光学系

低温(8 K)と室温の高圧下粉末X線回折測定は,それぞれSPring-8のBL10XUとBL12B2で行っ

た.BL10XUはアンジュレーターのビームラインで,図4.4のような光学系を使用する.このビーム

ラインでは,∆E/E 104のエネルギー分解能で14–61 keVのエネルギー範囲をカバーできる.今

回は約30 keVのエネルギーを用いた.アンジュレーターから放出されたX線を二結晶分光器(Double

Crystal Monochromator; DCM)を用いて単色化し,X線集光用屈折レンズ(CRL)を用いてサンプ ル位置でコリメートしておおよそ40×40µm2のビームサイズにしている.サンプル位置にはDACを 設置し,Diamond-in-Diamond-outのDebye-Scherrer光学系を用いた.メンブレンDACを用いてい るため,冷凍機に設置し,冷却した状態であっても加圧する事が可能である.DAC内部の圧力をモニ

ターするためのルビー蛍光測定時には,DACを冷凍機ごと動かして,ラマン分光装置と接続できるよ うになっている.また,BL12B2での室温のXRD測定では,前章とほぼ同じで,約18 KeVのX線を 用いて行った.

図4.4 BL10XUの(a)概要図と(b)試料部分の写真.アンジュレーターから放出された放射光を DCMとミラーで単色化し,CRLで40×40µm2のサイズにしたビームをDAC内の粉末試料に照 射する.そこから得られる粉末試料からの回折パターンをCCDカメラで読み込む.DACはガスメ ンブレンで外部操作できるようになっており,冷凍機が稼働している状態であっても加圧が可能であ る.さらに,DACが設置されている冷凍機ごと動かす事で,ルビー蛍光を測定するラマン分光装置 とも接続できる.

サンプリング

粉末試料のDACへのサンプリングでは,KxFe2ySe2同様,試料の空気反応性が高いため,全ての 作業をグローブボックス内で行った.試料は乳鉢で粒径がおおよそ5 µmとなるように細かく砕いた.

圧力媒体としてはDaphne7373オイルを用いた.Daphneオイルはこの試料の高圧下での電気抵抗測定 に用いられており,Daphneオイルと試料が反応して超伝導が壊れる事がないのは確認されている.試 料を顕微鏡で見ながら,ピンダイスの針などを用いてメンブレンDACにローディングした.DACは 350µmキュレットのアンビルを用い,ガスケットはホールサイズが125µm,キュレット面に当たる

4.4 実験条件 65

厚さが47µmのレニウム製の物を用いた.DACには試料と共にルビーボールを導入し,圧力測定のモ ニターとした.

粉末X線回折測定

BL10XUビームラインで,試料を入れたDACを設置した後,CCDの前に検出器を設置してDACを

動かして透過光が強い部分に固定し,サンプルチャンバーの中央にX線が照射されるように設置した.

正確な格子定数を算出するために,正確な入射X線のエネルギーとCCD-試料間の距離を求めるため に,標準試料のCeO2を用いてキャリブレーションを行った.DACにNIST製の標準試料CeO2を入 れてビームラインにセットし,CCDの位置を変えた2ヶ所でXRDパターンを測定した.図4.5のよ うに,CCDの位置はモーター制御で正確な距離を動かす事ができるため,1枚目のXRDパターンと2 枚目のXRDパターンで距離がいくら離れていたかさえ分かれば,正確なCCD-試料間の距離とX線の 波長が算出できる.

図4.5 (a) CeO2を用いたCCD-試料間の距離とX線の波長の補正方法.(b) CCD-試料間がおお よそ300 mmのときのXRDパターン.(c) (b)よりも+100 mmずらしたパターン.

4.4.2 高圧下 X 線発光分光・吸収分光測定

サンプリング

試料は反応性が高いため,全ての作業をグローブボックス内で行った.試料はすでに粉末なため,

50µmくらいの物を選び,顕微鏡で見ながら針などを用いてDACに導入した.DACは300 µmキュ

レットのアンビルを用い,ガスケットはホールサイズが100 µmのBe製の物を用い,これにはガス ケットカバーを取り付けた.DACには試料と共に圧力媒体のDaphne7373オイルとルビーボールを導 入した.

測定

高圧下X線発光分光測定は,同じビームラインで行ったため,光学系や加圧方法は前章とほぼ同じで ある.ここでの実験は低温で行ったため,ダイアモンドアンビルセルを設置しているクライオスタット を使用する程度の違いである.クライオスタットを使用する際は,DACの部分を真空引きするために,

カプトン膜の貼り付けてある窓をつける.温度はDAC側面に熱電対を付けてモニターしている.ビー ムラインの冷却限界の20 Kで実験を行った.

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