第四章 実証研究の調査設計と調査結果
第三節 考察
コーズの写真の印刷広告とブランドの写真の印刷広告を見せた2つのグループの間 に、t検定でいずれも有意な差が見られなかったという結果を受け、その理由の検討
を中心に考察していく。
第一項
Lafferty and Edmondson (2009)の研究との比較
今回の実証研究とLafferty and Edmondson (2009)の実験の条件を比較し、表4-
2のようにまとめている。
表4-2 Lafferty and Edmondson (2009)と本研究の実験条件の比較 Lafferty and Edmondson (2009) 本研究
●被験者
職業 非学生 学生
人数 495人 112人
●実験刺激物
キャンペーン 1998年にアメリカで実際に行われ たキャンペーン
最近日本で実際に行っている キャンペーン
印刷広告
コーズ:実際に使われたもの ブランド:実験のために作ったもの
全部実験のために作ったもの
印刷広告の内容 写真、コピー、ロゴ 写真、コピー、ロゴ
●実験対象の製品・ブランド
カテゴリー 食品(ビスケット類) 食品(チョコレート)
価格 低額 低額
ブランドの親しみ度 親しみ度が高い 親しみ度が高い
●実験対象のコーズ
支援対象 野生の熊 発展途上国の子供
種類 地球の生態保護 途上国への支援、子供関連
地域 全世界 発展途上国
コーズの親しみ度 親しみ度が低い 親しみ度が低い
コーズの重要度 重要度低い 重要度が高い
本研究におけるコーズ及びブランド・製品の選択はLafferty and Edmondson (2009) の研究を参考しているため、表4-2でわかるように、支援先コーズの種類と重要度 以外は、あまり差がなかった。そして、支援先コーズの重要度に関して、ブランドへ の親しみ度はコーズの重要度よりも消費者に影響を与える(Lafferty, 2009)ので、コ ーズの重要度の差は研究結果に影響を与えていないであろう。
一方、Lafferty and Edmondson (2009)の研究の被験者は非学生であるのに対し、本 研究の被験者は全部大学生である。消費者のデモグラフィック要因が CRM への態度 と購買意図に影響を与える(Webb & Mohr, 1998、Youn & Kim, 2008)ので、被験者 の職業は研究結果に影響する要因の一つだと考えられる。
第二項 他の要因の可能性
1. コーズ側の要素
まず、支援先コーズの地域性が考えられる。消費者は、全国範囲のコーズよりも消 費者の地元範囲のコーズに対して、好意的である(Ross, Patterson & Stutts, 1992、 Grau & Folse)。森永製菓「1チョコ for 1スマイルプロジェクト」は発展途上国のた めのコーズを支援しているので、消費者の態度に影響しにくかったと考えられる。
また、コーズの対象も要因として考えられる。Youn & Kim (2008)は特定少数の人 のためのコーズより、大衆のためのコーズの方が消費者の共感が得られると指摘して いる。本研究での支援先コーズの対象は発展途上国の子供であったため、消費者の共 感を得づらく、影響が見られない理由だとも考えられる。
2.消費者側の要素
Ross, Patterson & Stutts (1992)は、男性よりも、女性の方が CRMキャンペーンに 影響されやすいと指摘している。本研究の被験者は男性83名、女性29名で、全体の 被験者の人数から見て、女性の比率が低かったことも研究の結果に影響した一つの要 因だと考えられる。
3.その他
本研究で、コーズの写真とブランドの写真の2通りの印刷広告を作ったが、その刺 激は消費者にとって不十分であった可能性があることも理由の一つとして考えられる。
続いて、調査項目の不備が挙げられる。本研究の調査表は Lafferty and Edmondson
(2009)の研究に基づいて、著者自身で作成したものだが、消費者の態度と購買意図を
測定するための尺度としてふさわしいものでなかった可能性がある。他の先行研究で 用いられた尺度も参考にし、より緻密な調査票を作成し、調査を行う必要性があった とも考えられる。
また、本研究のサンプル数が 112 名と、やや少なかったことも要因の一つとして考 えられる。
終章 むすび
本稿では、近年高い関心を集めているコーズ・リレーテッド・マーケティング(CRM) が消費者行動に与える影響について、その起源から定義、位置づけ、そして消費者に 受け入れられる背景を述べ、CRMと消費者行動に関する先行研究とCRM広告に関す る先行研究のレビューを踏まえた上で、CRM広告の視覚要素の効果に関する実験を行 うという手順で進めてきた。本章では、本研究のインプリケーションと本研究の限界 と今後の課題について述べる。