本稿では、三島村薩摩硫黄島において地域住民を 対象としたアンケート調査をおこない、ジオパーク やジオツーリズムに関する意識の把握にあたった。
ジオパークという言葉の認知度はその濃淡はある にしても9割ほどであり、地域の広報誌や新聞・テ レビで目にしたというものが多かった。また、ジオ パークがどういうものかについては漠然と知ってい る者が6割ほどと多く、確実に知っているという者 は2割ほどであった。ジオツーリズムという言葉に ついての認知は、漠然と聞いたことがあるという者 が3割で、確実に聞いたことがある者が2割ほどと ジオパークという言葉の認知と比べては低い結果と なった。ここでも聞いたことがある者は主に地域の 広報誌や新聞・テレビでという回答が多かった。ま た三島村がジオパーク認定を目指していることへの 認知は約6割となった。
また、これらの結果の相関分析から、ジオパーク という言葉に対しての認知が高い者は、ジオパーク とはどういうものか知っており、ジオツーリズムに 対しての言葉の認知も高く、三島村がジオパーク認 定を目指していることも認知しているという傾向が みられた。ジオパークに対する興味については、ど ちらでもないと答える者が多く、興味があると示し た者は少数にとどまった。
ジオパークやジオツーリズムによる地域の活性化 については、肯定的な者が7割近くに達した。これ に関しては、相関分析の結果から『「ジオパーク」と いう名前を掲げることで観光客がいままでより興味 を示してくれる。』、『今までの観光スポットに「大地 の恵み」という視点が加わることで、観光地として 魅力が増す。』、「観光資源の保全と利用を同時におこ なっていくので、持続的に地域の魅力を活用でき る。」、「過疎や離島地域での観光の仕組みとして有効 である。」といった肯定的な意識が影響していること が示唆される。
また、ここでいう地域資源の再発見に関してはジ オストーリーの構築や普及の場面にも大きな役割を 果たす。ジオストーリーとは、「大地の遺産」を軸と して自然環境と人間環境の相互関係を明確にする物 語である。3.2.1.の地域資源に対する住民の地域資源 に対する意識において、「観光としての見どころとな る資源」と「「大地の恵み」を感じられる資源」の回 答に差異があったが、ジオストーリーの構築と普及 をとおして、現在は観光資源としての認識はなされ
ていない「大地の恵み」と認識されている対象を観 光資源へと活かしていく可能性や、その逆に「大地 の恵み」として認識されていない観光資源を、「大地 の恵み」と関連づけて活かしていく可能性を引き出 す工夫が求められる(図26)。
図 26 ジオパーク構想の推進と住民意識の醸成モデル
注:筆者作成.
また、自由記述結果からは、ジオパークを目指す にあたってゴミや交通の問題、施設の整備の課題が あるとする意識の存在がわかった。そして地域の課 題として住民の間で意識の相違が存在する事実が明 らかになった。
こういった三島村の住民意識の現状から、ジオパ ーク構想の推進過程において、地域住民の意識醸成 を図るには、①ジオパークの意義や目指す地域像を 明確に住民の間に普及させることが重要であるため、
その点に傾注した推進体制づくりが求められること、
②地域において地域住民によるジオパーク活動につ ながるような主体的な活動が地域に根付いているこ とが重要になることが挙げられる。合わせて、③地 域住民による主体的な活動を根づかせるには、地域 資源への気付き・再発見を促すことが有効であり、
④当該地域の資源をもとから熟知しており、専門職 員として活躍できる人材が存在することは、ジオパ ーク推進の過程においてとくに不可欠であると言え る。住民の地域資源への再発見に関して、それを促 す役割を果たすものとしてジオストーリーが注目さ れる。ジオストーリーは住民へのジオパークの意義 の普及を促す役割をもつことから、その構築過程は
慎重な議論の蓄積が求められる。
5. おわりに
GGN に基づくジオパークの仕組みは日本国内に は2008年に導入され、これからさらに定着化してい くと思われる。そのために、日 本におけるジオパークの在り方 に関する議論が蓄積され、今後 ジオパークが、衰退した地域の 活性化を支える仕組みとして高 い認知度を獲得できるかの試金 石にある。ここで明らかになっ たジオパーク推進過程の課題を 克服することがジオパーク認定 地の増加にもつながるであろう。
そして、国内の事例の蓄積やジ オパーク地域同士のネットワー クが充実していくことにより、
日本におけるジオパークの役割 がさらに高まっていくことが期 待される。
三島村は、2015年3月に、日 本ジオパーク認定の申請をおこなうことを発表した
2)。今後、ジオパーク推進過程に住民意識の現状と 変容にどのような影響があるのかという点を含め、
さらに経年的変化を把握していくところに、本研究 の意義をさらに深めていく余地がある。記して今後 の課題としたい。
付記
鹿児島県三島村役場の日高郷土村長(当時)、大山 秀人氏、大岩根尚氏、同村役場硫黄島出張所の樋渡 俊一氏、アンケート調査にご協力いただいた薩摩硫 黄島の住民各位に厚くお礼申し上げる。
本研究をすすめるにあたり、科学研究費補助金・
若手研究(B)「担い手のライフヒストリーからみたジ オパークの観光化プロセスに関する研究」(課題番
号:25870520)を使用した。また、本稿の骨子は、日
本地理学会2014年春季大会において発表した。
注
1)三島村ホームページ
http://mishimamura.com/category/summary/(2013 年 8 月26日閲覧)において薩摩硫黄島の見どころと して挙げられていたもの23の場所(物)に「魚介 類」「畜産物」「郷土料理」を加えた。
2) 南日本新聞2014年3月21日掲載記事による。
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