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習慣的な浴槽入浴と健康状態との関連

ドキュメント内 浴槽入浴と日本人の健康状態との関連 (ページ 31-55)

―横断研究

本章では、筆者が参考論文として公表した横断研究の内容を解説する。

1.目的

本研究では、日常的な浴槽入浴が、日本人に特徴的な生活習慣である点に着目 し、主観的健康感、睡眠による休養、ストレスレベルとの関連を調べる横断研究 を実施することで、健康状態への影響を検討することを目的とした。

2.方法

(1)デザイン

2011年12月に郵送法で行われた静岡県県民健康調査(横断・質問紙調査)を

用いた。対象は5,000人の20歳以上の静岡県民(男女2,500人づつ)で、層化 2段ランダム抽出で選出した。対象市町村は、熱海市、伊東市、河津町、下田市、

伊豆市、伊豆の国市、碧南市、三島市、裾野市、御殿場市、小山町、長泉町、清 水町、沼津市、富士市、富士宮市、静岡市、焼津市、藤枝市、吉田市、島田市、

牧之原市、御前崎市、菊川市、掛川市、袋井市、磐田市、浜松市、湖西市である。

(2)観察項目

性、年齢、生活行動として、浴槽入浴頻度(夏、冬における1週間当たりの日 数)、温泉施設利用頻度(夏、冬における1月あたりの回数)、1日当たりの緑茶 消費量、1週間当たりの運動頻度、睡眠時間、栄養バランスへの配慮、現在の喫

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煙状況を尋ねた。温泉施設訪問に関しては、温泉施設の滞在期間、施設が静岡県 内かどうかなどは尋ねていない。

健康指標には、主観的健康感、睡眠による休養、ストレスを用いた。

1)主観的健康感

主観的健康感は、前章の介入研究ではVASスケールを用いて質問を行ったが、

本研究では5件法(健康である・まあまあ健康・ふつう・あまり健康でない・健 康でない)で評価した。

2)睡眠による休養

疫学的研究によって短い睡眠時間や不眠は、メタボリックシンドローム、高血 圧、糖耐能障害、心血管疾患を発症する危険性を高めることが示されており 49)

50)、そのほか多々の疾患による死亡率を高めることも知られている 51)。また、睡 眠による休養感の欠如は、抑うつの度合いの強さと関連することが示されてい る 52)。睡眠による休養の質問では 4 件法(充分とれている・まあまあとれてい る・あまりとれていない・まったくとれていない)を用いた。

3)ストレス

ストレスは血圧や心拍の増加 53)、内臓脂肪の蓄積 54)、インスリン抵抗性の増 大 55)と関連することが知られており、主観的な低ストレスレベルは動脈硬化性 疾患の低発生率 56)と関与することが知られている。ストレスの質問には 4 件法

(まったくなかった・あまりなかった・多少あった・大いにあった)を用いた。

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(3)解析方法

健康関連自己評価を従属変数に、生活行動を独立変数としたロジスティック 解析(単回帰・多変量)を実施し、オッズ比と 95%信頼区間を算出した。観察 項目はそれぞれ次のように2群に分類した。データ分析には、SPSS19.0Jを用い た。

1)従属変数

① 主観的健康感:

「健康である・まあまあ健康」、

「ふつう・あまり健康でない・健康でない」

② 睡眠による休養:

「充分とれている・まあまあとれている」、

「あまりとれていない・まったくとれていない」

③ ストレス:

「まったくなかった・あまりなかった」、

「多少あった・大いにあった」

2)独立変数

① 浴槽入浴頻度:

「毎日浴槽入浴実施(夏も冬も週7日)」(以下浴槽入浴群)、

「毎日は浴槽入浴をしない(夏あるいは冬いずれかが週6日以下)」

② 温泉施設利用頻度

「月1回以上利用(夏も冬も)」(以下温泉施設利用群)

「月1回未満利用(夏あるいは冬いずれかが月1回未満)」

③ 1日あたり緑茶飲量:

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「1リットル以上/日」(以下緑茶多飲群)

「1リットル未満/日」

④ 栄養バランス:

「配慮している」(以下栄養バランス群)

「配慮していない」

⑤ 運動習慣:

「週1回以上」(以下運動習慣群)

「週1回未満」

⑥ 睡眠時間:

「7時間以上/日」(以下睡眠群)

「7時間未満/日」

⑦ 喫煙:

「喫煙している」(以下喫煙群)

「喫煙していない」

(4)倫理的配慮

調査票は静岡県庁によって集められ、分析用データは個人情報と連結不可能 な形で我々に提供されているので、倫理的な問題はないと判断した。

27 3. 結果

回答者2,779人(回収率55.6%)のうち、男性は1,283人(46.2%)、女性は

(53.8%)であった。年齢分布は、20–29歳は、212 人(7.6%)、30–39 歳は350人 (12.6%)、 40–49 歳は382 (13.7%)、50–59 歳は493人 (17.7%)、60–69 歳は 685 人(24.6%)、 70 歳は657人 (23.6%)であった。回答者中「毎日浴槽入浴す る者」は 1,363 人(53.3%)、「月に1回以上温泉施設利用をする者」は 670 人

(25.2%)、「1日1リットル以上緑茶を飲む者」は509人(19.1%)、「栄養バラン スに配慮している者」は1,157人(41.8%) 、「週に1回以上運動する者」は1,144 人(42.5%)、「1日7時間以上睡眠をとる者」は795人(29.1%)、「喫煙している 者」は484人(17.6%)であった(表9)。

28 表9.回答者の特性と独立変数のグループ

n (%) n (%)

1,283 (46.2)

1,496 (53.8)

年齢

20-29 212 (7.6)

30-39 350 (12.6)

40-49 382 (13.7)

50-59 493 (17.7)

60-69 685 (24.6)

70歳以上 657 (23.6)

独立変数 該当 非該当

毎日浴槽入浴 1,363 (53.3) 1,194 (46.7) 月1回以上温泉施設利用 670 (25.2) 1,987 (74.8) 緑茶飲量1リットル以上/日 509 (19.1) 2,159 (80.9) 食事の栄養バランス配慮 1,157 (41.8) 1,613 (58.2) 運動習慣1回以上/週 1,144 (42.5) 1,545 (57.5) 睡眠7時間以上/日 795 (29.1) 1,937 (70.9) 喫煙している 484 (17.6) 2,270 (82.4) 欠損値は除外した

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「主観的健康感」に関しては、47.8% (N=1,323)が「良い」と回答し、52.2%

(N=1,442)が「乏しい」と回答した。「主観的健康感が良い状態」は、「浴槽入

浴群(単変量:OR=1.18, 95%CI 1.01-1.22,多変量:OR=1.21, 95%CI 1.03-1.43)」、「温泉施設利用群(単変量:OR=1.45, 95%CI 1.21-1.73,多変量:

OR=1.35, 95%CI 1.12-1.63)」、「緑茶多飲群(単変量:OR=1.21, 95%CI 1. 00-1.47,多変量:OR=1.04, 95%CI 1.04-1.61)」、「栄養バランス配慮群(単変 量:OR=1.27, 95%CI 1.09-1.48,多変量:OR=1.23, 95%CI 1.04-1.46)」、「運 動習慣群(単変量:OR=1.64, 95%CI 1.41-1.91,多変量:OR=1.57, 95%CI 1.33-1.87)」、「睡眠群(単変量:OR=1.19, 95%CI 1.00-1.40,多変量:

OR=1.03, 95%CI 1.03-1.50)」で単回帰・多変量ともに有意に高いオッズ比を 示した。また「喫煙群」では、有意な差は認められなかった (表10)。

30 表10. 主観的健康感と生活行動の関連

主観的健康感     単変量 多変量

良くない 良い オッズ比 (95%信頼区間) オッズ比 (95%信頼区間)

全体 1,442 (52.2) 1,323 (47.8) -

-性

669 (52.3) 609 (47.7) 0.99 (0.85-1.15) 0.99 (0.82-1.16)

773 (52.0) 714 (48.0) reference reference

年齢

20-59歳 740 (51.6) 694 (48.4) 1.05 (0.90-1.22) 1.24 (1.09-1.48) 60歳以上 702 (52.7) 629 (47.3) reference reference

浴槽入浴

毎日 671 (49.4) 686 (50.6) 1.18(1.01-1.38) 1.21(1.03-1.43)

週6日以下 637 (53.7) 550 (46.3) reference reference

温泉施設利用

月1回以上 302 (45.2) 366 (54.8) 1.45 (1.21-1.73) 1.35(1.12-1.63) 月1回未満 1,077 (54.4) 901 (45.6) reference reference

緑茶

緑茶多飲(1リットル以上/日) 244 (48.1) 263 (51.9) 1.21 (1.00-1.47) 1.29(1.04-1.61) 非緑茶多飲(1リットル未満/日) 1,138 (53.0) 1,010 (47.0) reference reference

栄養バランス

配慮している 562 (48.7) 591 (51.3) 1.27(1.09-1.48) 1.23 (1.04-1.46) 配慮していない 877 (54.7) 727 (45.3) reference reference

運動習慣

週1回以上 515 (45.1) 626 (54.9) 1.64(1.41-1.91) 1.57(1.33-1.87)

週1回未満 882 (57.4) 654 (42.6) reference reference

睡眠

7時間以上/日 388 (49.1) 402 (50.9) 1.19 (1.00-1-40) 1.24 (1.03-1.50) 7時間未満/日 1,029 (53.3) 900 (46.7) reference reference

喫煙

喫煙している 246 (50.8) 238 (49.2) 1.08(0.88-1.30) 1.16(0.92-1.48)

喫煙していない 1,190 (52.6) 1,074 (47.4) reference reference

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「睡眠による十分な休養」が取れたと回答した者は、82.2% (N=2,239)であっ た。単回帰・多変量ともに「睡眠による十分な休養」と有意に高いオッズ比を示 したのは「運動習慣群(単変量:OR=1.64, 95%CI 1.41-1.91,多変量OR=1.79, 95%CI 1.41-2.27)」、「睡眠群(単変量:OR=5.63, 95%CI 4.03-7.87,多変量OR=5.06, 95%CI 3.54-7.24)」であった。単変量では、「浴槽入浴群(単変量:OR=1.23, 95%CI 1.01-1.50)」、「栄養バランス配慮群(単変量:OR=1.27, 95%CI 1.09-1.48)」で、

「睡眠による十分な休養」と有意に高いオッズ比が認められた(表8)。

逆に、「年齢が若い群(単変量:OR=0.51, 95%CI 0.41-0.62,多変量OR=0.61, 95%CI 0. 48-0.78)」、「喫煙群(単変量:OR=0.66, 95%CI 0.52-0.84,多変量 OR=0.65, 95%CI 0. 49-0.86)」では、「睡眠による十分な休養」が有意に低いオ ッズ比を示した(表11)。

32 表11. 睡眠による休養と生活行動の関連

睡眠による休養     単変量 多変量

とれていない とれている オッズ比 (95%信頼区間) オッズ比 (95%信頼区間)

全体 485 (17.8) 2,239 (82.2) -

-性

210 (16.7) 1,044 (83.3) 1.14 (0.94-1.39) 1.24 (0.98-1.56)

275 (18.7) 1,195 (81.3) reference reference

年齢

20-59歳 318 (22.4) 1,101 (77.6) 0.51 (0.41-0.62) 0.61 (0.48-0.78) 60歳以上 167 (12.8) 1,138 (87.2) reference reference

浴槽入浴

毎日 226 (16.8) 1123 (83.2) 1.23(1.01-1.50) 1.19(0.96-1.48)

週6日以下 233 (19.8) 944 (80.2) reference reference

温泉施設利用

月1回以上 106 (15.9) 559 (84.1) 1.21 (0.95-1.53) 1.12 (0.86-1.45) 月1回未満 365 (18.6) 1595 (81.4) reference reference

緑茶

緑茶多飲(1リットル以上/日) 86 (17.2) 414 (82.8) 1.21 (0.83-1.39) 0.93 (0.69-1.25) 非緑茶多飲(1リットル未満/日) 386 (18.2) 1730 (81.8) reference reference

栄養バランス

配慮している 180 (15.8) 956 (84.2) 1.27(1.09-1.48) 1.05 (0.83-1.33) 配慮していない 304 (19.3) 1,275 (80.7) reference reference

運動習慣

週1回以上 140 (12.3) 994 (87.7) 1.64(1.41-1.91) 1.79 (1.41-2.27) 週1回未満 337 (21.9) 1,201 (78.1) reference reference

睡眠

7時間以上/日 40 (5.1) 750 (94.9) 5.63 (4.03-7.87) 5.06(3.54-7.24)

7時間未満/日 445 (23.1) 1,482 (76.9) reference reference

喫煙

喫煙している 111 (23.2) 368 (76.8) 0.66(0.52-0.84) 0.65 (0.49-0.86) 喫煙していない 370 (16.7) 1,851 (83.3) reference reference

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「ストレス」に関しては、36.5% (N=998)が「少ない」と回答した。単変量解 析・多変量解析ともに「低ストレス」と有意に高いオッズ比を示したのは、

「男性(単変量:OR=1.62, 95%CI 1.39-1.90,多変量OR=1.62, 95%CI 1.53-1.95)」、「浴槽入浴群(単変量:OR=1.33, 95%CI 1.13-1.57,多変量OR=1.35, 95%CI 1.13-1.61)」、「運動習慣群(単変量:OR=1.64, 95%CI 1.41-1.91,多変 量OR=1.55, 95%CI 1.29-2.17)」、「睡眠群(単変量:OR=1.91, 95%CI 1.61-2.26,多変量OR=1.79, 95%CI 1.48-2.18)」であった。「栄養バランス配慮群

(単変量:OR=1.18, 95%CI 1.01-1.38)」では、単変量のみ有意に高いオッズ 比を示した。

逆に、「年齢が若い群(単変量:OR=0.49, 95%CI 0.42-0.58,多変量OR=0.54, 95%CI 0.45-0.65)」では、有意に低いオッズ比を示した(表12)。

34 表12. ストレスレベルと生活行動の関連

ストレス     単変量 多変量

ストレス有 ストレスフリー オッズ比 (95%信頼区間) オッズ比 (95%信頼区間)

全体 1,736 (63.5) 998 (36.5) -

-性

720 (57.4) 534 (42.6) 1.62 (1.39-1.90) 1.62 (1.35-1.95)

1,016 (68.6) 464 (31.4) reference reference

年齢

20-59歳 1,016 (71.2) 410 (28.8) 0.49 (0.42-0.58) 0.54 (0.45-0.65) 60歳以上 720 (55.0) 588 (45.0) reference reference

浴槽入浴

毎日 827 (60.9) 531 (39.1) 1.33(1.13-1.57) 1.35(1.13-1.61)

週6日以下 793 (67.4) 383 (32.6) reference reference

温泉施設利用

月1回以上 408 (61.5) 255 (38.5) 1.14 (0.95-1.36) 1.02 (0.83-1.25) 月1回未満 1273 (64.6) 699 (35.4) reference reference

緑茶

緑茶多飲(1リットル以上/日) 305 (60.5) 199 (39.5) 1.19 (0.97-1.45) 0.98 (0.78-1.24) 非緑茶多飲(1リットル未満/日) 1371 (64.6) 752 (35.4) reference reference

栄養バランス

配慮している 697 (61.2) 442 (38.8) 1.18(1.01-1.38) 0.98 (0.81-1.12) 配慮していない 1,032 (65.1) 554 (34.9) reference reference

運動習慣

週1回以上 648 (57.0) 489 (43.0) 1.64(1.41-1.91) 1.55(1.29-2.17)

週1回未満 1,063 (68.8) 481 (31.2) reference reference

睡眠

7時間以上/日 417 (52.7) 375 (47.3) 1.91 (1.61-2.26) 1.79 (1.48-2.18) 7時間未満/日 1,312 (67.9) 619 (32.1) reference reference

喫煙

喫煙している 313 (65.6) 164 (34.4) 0.90(0.73-1.10) 0.85(0.67-1.09)

喫煙していない 1,410 (63.1) 825 (36.9) reference reference

35 4.考察

食事、運動、睡眠、飲酒、喫煙などの生活習慣関連因子は、健康状態やその後 の生存率と関連する知見が得られている1)2)3)4)。本研究ではこれらの習慣に加え、

「浴槽入浴習慣」の健康状態への寄与を調べるために、健康関連自己評価との関 連を検討した。

「毎日の浴槽入浴」と「主観的健康感」、「睡眠による休養」、「ストレスレベ ル」との関係を検討した。関係を検討したロジスティック回帰分析では単回帰 分析のほか、「温泉施設利用習慣」、「緑茶多飲習慣」、「食事(栄養バランスへ の配慮)」、「運動習慣」、「睡眠時間(7時間以上)」を一括投入した多変量解析 も実施した。

「毎日の浴槽入浴」が「良好な主観的健康感」、「睡眠による十分な休養」、「低 ストレス状態」と関連することが示唆された。「良好な主観的健康感」、「低スト レス状態」については多変量解析でも有意なオッズ比が得られたことは、「食事

(栄養バランスへの配慮)」、「運動習慣」、「睡眠時間(7時間以上)」などの要因 と独立した形でも、「毎日の浴槽入浴」が、自己評価に影響を与えていると考え られる。こうした結果はHayasakaらの示した、浴槽入浴頻度の高い者は、主観 的健康感が高い、睡眠の質が良いとする結果を支持するものである37)

毎日の浴槽入浴が「良好な主観的健康感」をもたらした理由については、入 浴の最も顕著な効果である温熱作用の影響を推察している12)13)14)15)

「睡眠による十分な休養」もまた、浴槽入浴の持つ温熱作用が関与している 可能性がある。入眠は末梢体温と深部体温の差が小さくなる時に生じることが

ドキュメント内 浴槽入浴と日本人の健康状態との関連 (ページ 31-55)

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