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線分析法による酸化チタン中の 鉛およびヒ素の同時定量

ドキュメント内 k131en.XDW (ページ 122-126)

雨 宮 敬 へ 鈴 木 助 治 * 渡 辺 四 男 也 * Simultaneous determination of lead and arsenic  in titanium dioxide powder by X‑ray fluorescence spectrometry  TAKASHI AMEMIYA  ,* SUKEJI SUZUKI* and YOHYA WATANABE* 

Simultaneous determination of microgram quantities of lead and arsenic in titanium dioxide powders used  as cosmetic materials were performed by X‑ray fluorescence spectrometry. 

The conditions for X‑ray fluorescence analysis were as follows ; target  Mo, secondary target  Mo,  voltage and ampere : 50kV‑55mA, fixed time : 300sec, range:  0 ‑20keV, path: air. 

Fifteen samples of titanium dioxide powder were analysed.  A large quantity of lead was contained in  the rage of 29.540.0ppmin  3 samples Arsenicwas not detected from any of the samples examined.  Keywords : titanium dioxide powder, lead, arsenic, simultanousdetermination, X‑ray fluorescence spectrometry 

緒 面

酸化チタンは化粧品原料として隠ぺい性,着色性など の優れた性質を有し1),おしろい,ファンデーション,

クリーム,アイシャドーなどに広く用いられている.酸 化チタンは天然鉱石を原料として製造されるため,原料 によっては,有害金属である鉛あるいはヒ素を含有する おそれが十分にあり,このことが製品の品質を大きく左 右することになる.従って,化粧品原料に用いる場合の 酸化チタンは化粧品原料基準2)によって鉛(50ppm以下) およぴヒ素(10ppm以下)の含量規制がなされ,それに 沿った品質管理が必要である.

現在,化粧品原料基準には,一般試験法として鉛はジ チゾン法,ヒ素はグートツァイト法が採用されている2)

しかし,この方法を酸化チタンに適用すると試験溶液の 調製など前処理に長時間かかること,あるいは可溶性チ タンが鉛の分析に障害を与えることなど改良すべき点が あり,迅速かっ精度のよい試験法の開発が望まれる.酸 化チタン中の重金属分析は,原子吸光法34)' ボルタン メトリー5),誘導結合プラズマ発光分析法61),ケイ光 X線法8)などにより鉛をはじめとして,その他の元素に ついても行われているが,ヒ素に関する報告はみられな

い.今回,著者らは,化粧品原料の品質評価の一環とし て酸化チタン中の鉛およびヒ素の同時定量を意図してケ イ光X線分析法の検討を行い 市販酸化チタン中の鉛お よびヒ素の含量調査を行ったので報告する.

実 験 方 法

1.試薬鉛およびヒ素標準液:市販品(和光純薬工 業製1,000ppm)を用いた.

2.装置および器具 ケイ光X線分析装置:エネル ギー分散型0600ウルトラトレースシステム(ケベック), 

X線発生部:9265型(理学電機工業), X線管球:モリブ デン対陰極(最大負荷電力2.7kW,フイリップス),二次 ターゲット:モリブデン,データ処理システム:ユニ ペツクシステム7000(ケベック),加圧成型器:前川試験 機M型(油圧手動式),ケイ光X線用試料ホルダー(ホル ダーと略記):アルミ製リング(直径25mm,厚さ5mm,理 学電機工業)

3.試 料 昭 和63年10月‑11月において市販品を購入 して試料とした.

4.測 定 用 ぺ レ ッ 卜 の 調 製 試 料2gを1050の乾燥 器中で1時間乾燥する.これをメノウ乳鉢に移して均一 にすり混ぜる.つぎに,加圧成型器のプレスヘッドに薬

*東京都立衛生研究所理化学部微量分析研究科 169  東京都新宿区百人町3‑24‑1 

*The Tokyo Metoropolitan Research Laboratory of Public Health  24‑1, Hyakunincho 3 chome, Shinjuku‑ku, Tokyo, 169 Japan 

112  Ann. Rep. Tokyo Metr. Res. Lab. P.H40,1988  Table  1.  Operating conditions 

Target 

Secondary target 

Voltage, Ampere (kV, m

ω

A)  Fixed tinI

Range (keV)  Path 

Mo  Mo  50‑55  300 

0‑20  Air 

包紙をしき,その上にホルダーを乗せ,さきの試料の全 量をホルダー内に表面がほぽたいらになるように充填す る.さらに,薬包紙で上から覆う.つぎに,加圧成型器 を用いて5トン

/cm

の圧力をかけて成型してペレットを 作成する.これをケイ光X線分析用試料とする.

5.試験操作 1 )定性

4の項で調製したペレットをTable 1に示した操作条 件に従って測定する.得られたケイ光X線スペクトルに つ い て , デ ー タ 処 理 シ ス テ ム を 用 い て PbLα線 : 10.550 keV, PbL 

s

線 12.211 keV, AsK  α線 : 10.542 keVおよびAsK

s

線 :11.722keVを解析して定 性を行う.

2 )定量

鉛およびヒ素を単独で含有する場合:鉛については定 性の項で用いた試料について,まず,測定時間として,

30秒間ケイ光X線分析を行い,得られたケイ光X線スペ クトルから使用したこ次ターゲットであるモリブデンか らのコンブトン散乱X線を内部標準としてケイ光 X線強 度を測定する.つぎに,

i

J.lJ定時間を300秒間としてケイ 光X線分析を行い, PbL 

s

線のX線強度を求める.つぎ に,さきに測定したモリブデンからの散乱X線に対する PbL 

s

線のX線強度比を求め,別に作成した検量線から 試料中の鉛含有量を求める.つぎに,ヒ素については,

AsK α線のX線強度比を求め,鉛と同様にヒ素の含有 量を求める.

鉛およびヒ素が共存する場合:PbLα線と AsKα線 とが重なるため,鉛は重なりのないPbL

s

線を用いて 分析を行う.得られた鉛のX線強度に係数(1.03)をかけ たものを見かけのヒ素のX線強度から差し引くことによ り,鉛の影響のないヒ素のX線強度を求め,さらに,内 部標準に対するX線強度比から検量線によりヒ素の含有 量を求める.

結果および考察

測定用ぺレット調製の検討試料中の鉛およびヒ素の 検出感度と精度の向上を目的としてつぎの方法を検討し

た.

1.加圧によるぺレッ卜調製 粉末試料においては,

しばしば,ホルダーに充填して加圧成型を行うが,成型 性をよくするため,ステリアン酸,でん粉などの有機物 をパインダーとして15‑20%加えて成型することが多 い9), しかし, Li‑Tong Jinら5)の報告によると酸化チタ ン中の鉛含有量は低値のものが多いことから,パイン ダーを加えると希釈率が大きくなり,検出感度の低下が 考えられるため,今回はパインダーを加えずに成型する

ことを

4

食言すした.すなわち あらかじめ重合およびヒ素を 検出しないことを確認した試料

2

gに両者をそれぞれ50

μ g加えて, 105 0, 1時間乾燥する.つぎに,プレス 圧 を し 2,3, 4, 5, 7, 10, 15, 20および30トン

/cm

と変化させて試料を調製して操作条件に従って測定 して,プレス圧とX線強度比の関係を検討した.その結 果,プレス圧3トン以下では成型が不十分であり, また,

15トン以上ではペレットがうすくなり,わずかの衝撃に よってホルダーから脱落あるいは破損しやすくなること が認められた.これに対して

‑10トンにおいては成 型後のペレットの強度も十分得られ,

x

線強度比も一定

で再現性がみられた.そこで,操作性がよいことからプ レス圧を5トンとした.成型操作の際,酸化チタンは微 粉末のため,試料がプレスヘッドに付着して操作が困難 であったが,越智ら10)が,試料とプレスヘッドの聞に 薬包紙あるいはマイラーをはさんで効果的に処理してい ることから,著者らも薬包紙を用いて操作することとし た.

2.試料の粒度 ケイ光X線分析においては,試料の ごく表面に近い部分のみを測定することから,定量分析 においては,試料の粒度がX線強度に大きな影響を及ぼ す.通常,粒度が200メッシュあるいはそれ以上に細か いときはX線強度に影響を与えないとされている9) 今 回用いた酸化チタンは,いずれも200メッシュ以上の微 粉末であったので,粒度の影響はみられなかった.

共 存 元 素 の 影 響 神 田 ら3)は,酸化チタン中の不純物 を発光分光分析で調査して,カリウム,カルシウム,ア ルミニウム,マンガン,マグネシウム,鉄および亜鉛の 存在を報告している.著者らもケイ光X線分析でほぼ同 様の結果を得た.そこで,鉛およびヒ素に対する前記7 元素の影響について検討を行った.すなわち,鉛および

ヒ素を検出しない試料2gに両者をそれぞれ20μg添加 する.さらに, 7元素を200および1,000μgの濃度段階 で添加し,試料調製後,操作条件に従って測定した.そ の結果,いずれの元素も鉛およびヒ素のX線強度比に影

東 京 衛 研 年 報 40,1989  113  響を与えなかった.つぎに,鉛およびヒ素の相互の影響

についても検討するため, 20μgに対して,それぞれ一 方を200および1,000μg添加したところ,いずれの濃度 段階においても相互の影響は認められなかった.

鉛およびヒ素の同定 ケイ光X線強度は

P

線より α線 の方が強く,定量分析には,通常, α線の X線強度を測 定する9) しかし, Fig.1に示すように鉛およびヒ素の PbLα線(10.550keV)とAsKα線(10.542keV)は非常 に近接しているため,両者が共存する試料では, α線を 用いて定量することは不可能である.一方, PbL 

s

線 (12.211 keV)とAsK

s

線(11.722 keV)とは検出電位が 十分離れており, PbL 

s

線はPbLα線に比してX線強度 が若干低値を示すものの,ほぽ等しいことから,鉛の定 量分析には L

s

線を用いた. しかし,ヒ素においては,

AsK 

s

線のX線強度はAsKα線の約1/4と感度が低 いため,ヒ素の定量分析にはAsKα線を用いることと

10 

一 ‑ . 一 ー .

Pb 5ppm 

• As 5ppm 

‑ 一 一 :As 5ppm 

ー 一 一 一

Pb 5ppm 

12  KEV  Fig.1.  X‑Ray spectra of PbLαline, AsK α 

li and (PbLα+AsK α) line 

した.そこで,両者が共存する場合は,鉛の重なりのな いPbL

s

線のX線 強 度 を 測 定 し , こ の 強 度 に 係 数 (1.03)をかけてPbLα線の強度に換算し,これを見か けのAsKα線より差しヲ│くことにより,鉛の影響のな いAsKα線のX線強度を求めた11.12)

検量線l 鉛および、ヒ素を検出しない試料2gに両標準 液よりそれぞれ10,20, 60, 80, 100, 200および300

μgを添加し,測定用ペレットの調製および試験操作の 項に従って測定した.その結果,両者とも良好な直線性 が得られた.

添加回収率および検出限界鉛およびヒ素を検出しな い試料2gに両者をそれぞれ20,100, 200μg 添加し,

測定用ペレットの調製および試験操作に従って各濃度段 階においてペレットを3個調製して測定を行い,平均回 収率および変動係数を求めた.その結果を Table 2に 示 す . 鉛 の 平 均 回 収 率 は95.3‑100.7%, 変 動 係 数 は 2.2‑4.1%,ヒ素の平均回収率は96.9‑97.7%,変動係数 は2.9‑3.2%と良好な結果が得られた.つぎに,本法に おける鉛およびヒ素の検出限界(S/N=3 )を求めた.

その結果,いずれも 3ppmであった.

市販品の分析結果市販品の酸化チタン15検体につい て本法を適用して鉛およびヒ素の含有量を測定した.そ の結果をTable3に示す.鉛にiついては, 15検体中13検 体から検出された.そのうち,高値を示したものは,

40.0, 30.0, 29.5ppmの3検体であった.ーまた,鉛の 平均含有量は14.0ppmであり,この結果は他の報告5)と ほぼ同様の傾向を示した.ヒ素については,いずれの試 キヰからも検:出されなかった.

今回の調査において,鉛およぴヒ素は化粧品原料基準 の規制値を越えたものは認められなかった.本法は酸化 チタン中の鉛およびヒ素の同時定量法として簡便かつ実 用的な手段であり,酸化亜鉛や酸化カルシウムなど他の 粉末の化粧品原料に応用可能と考える.

Table  2.  Recoveries of lead and arsenic for titanium dioxide powder* 

Sample  Lead  Arsenic  Added 

Sample  weight 

(μg)  Recovery  C.V.  Recovery  C.V.  ( g)  (%)  (% )  (% )  (% )  Titanium dioxide  2  20  100.7  2.2  97.7  2.9  powder  100  95.3  4.1  98.0  3.2  200  97.3  3.0  96.9  3.2 

*N= 3 

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