結果③: 良い意見文の指標になりうる言語的特徴(伊集院ほか 2017 )
結果
作文の異なり語数,内容語数,中級後半レベルの語彙数,上級前半レベルの語彙数,
漢字使用率,総文字数
・大学
1
年生としての日本語力が想定されている・作文課題が「インターネット時代における新聞」をテーマにした論述型の意見文である
・上級後半語は,
30
編中24
編で出現数がゼロ➡上級後半語はアカデミックな文章においても出現しにくい?
➡留学生への日本語教育では,大学入学までに中級後半から上級前半レベルまでの 語彙を確実に定着させ,入学後には各自の専門に応じて必要な語彙を習得していく のが良いのではないか。
一方で,初級前半語,初級後半語,上級後半語,和語,外来語,総文数とは相関なし。
良い意見文の指標となりうる言語的特徴
結果文体について言えそうなこと(※分析途上の数値)
•
文末も文中も,文体の統一ができないと点数が下がる要因になりうる。•
特に日本語教員による指摘が多い。例:「文体に統一性がない。」「話し言葉が混在する。」「アカデミックな文体としては,ふさ わしくない「ぐしゃぐしゃ」「バリバリ使える」などがある。」
※上位群の文中不統一の例:
だ・である体の中での「けれども」「そういうわけで」「パッとみて」「見れる」などの使用
☝文体統一をどの程度厳しく判断するか
普通体基調 丁寧体基調 総計 文末統一 文中統一
上位群 9 1 10 10 7
中位群 5 5 10 6 4
下位群 6 4 10 5 0
合計 20 10 30 13 11
分類 文体
構成面について言えそうなこと(※分析途上の数値)
頭尾型 中尾型 尾型 分散型 頭型 合計 上位群 5 2 2 1 0 10 中位群 4 2 4 0 0 10 下位群 3 3 1 2 1 10 合計 12 7 7 3 1 30
※頭:第一段落 尾:最終段落 中:頭と尾以外
伊集院・高橋(2012)の分類参照
構成・内容面について言えそうなこと(※分析途上の数値)
頭尾型 中尾型 尾型 分散型 頭型
上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 合計
a.
新聞必要論4 4 1 0 1 2 0 1 0 0 0 2 0 0 1 16
b.
ネット支持論1 0 0 0 1 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 4
c.
新聞・ネット両立論0 0 0 0 0 0 2 1 0 0 0 0 0 0 0 3
d.
複数論(a→c ) 0 0 1 1 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 3
e.
その他0 0 1 1 0 0 0 1 0 1 0 0 0 0 0 4
合計
5 4 3 2 2 3 2 4 1 1 0 2 0 0 1 30
典型例
上位群の例
評価が分かれる例
参考文献
• 伊集院郁子・高橋圭子(2004)「文末のモダリティに見られる"Writer/Reader visibility"-中国人学習者と日本語 母語話者の意見文の比較-」『日本語教育』123号 pp.86-95
• 伊集院郁子・高橋圭子(2010) 「日本語の意見文に用いられる文末のモダリティ―日本・中国・韓国語母語話者 の比較―」『東京外国語大学留学生日本語教育センター論集』36号 pp.12-27
• 伊集院・高橋(2012) 「日本・韓国・台湾の大学生による日本語意見文の構造的特徴-『主張』に着目して-」
『東京外国語大学国際日本研究センター日本語・日本学研究』Vol.2 pp.1-16
• 伊集院郁子・盧妵鉉(2015)「日韓の意見文に見られるタイトルと文章構造の特徴-日本語母語話者と韓国語 母語話者と韓国人日本語学習者の比較-」『社会言語科学』18巻1号 pp.147-161
• 伊集院郁子・李在鎬・野口裕之・小森和子・奥切恵(2017)「IRT系モデルとReadabilityによる日本語作文の定量 的分析―大学教員による評価とコンピュータによる自動評価の比較―」『2017年度日本語教育学会秋季大会予 稿集』 pp.214-219
• 伊集院郁子・李在鎬・小森和子・野口裕之(2018)「意見文に対する評価コメントの計量的分析―コレスポンデン ス分析に基づく考察―」『2018年度日本語教育学会秋季大会予稿集』 pp.324-329
• 李貞旼(2008)『韓日新聞社説における「主張のストラテジー」の対照研究』ひつじ書房
• 木戸光子(1992)「文の機能に基づく新聞投書の文章構造」『表現研究』55号 pp.9-19
参考文献
• 佐々木泰子(2001)「課題に基づく意見の述べ方-日本人大学生の場合・日本語学習者の場合-」『日本語教育のた めのアジア諸言語の対訳作文データの収集とコーパスの構築』平成11年度~12年度科学研究費補助金基盤研究(B)
(2)研究成果報告書(課題番号11691041)pp.219-230
• 杉田くに子(1995)「日英対照レトリック-文章の流れはいかに分節されるか-」『アメリカカナダ大学連合日本研究セ ンター紀要』18号 pp.35-50
• 高橋圭子・伊集院郁子(2006)「疑問文に見られる“Writer/Reader visibility”-中国人学習者と日本語母語話者の意見 文の比較-」『日本語教育』130号 pp.80-89
• 田中真理・坪根由香里(2011)「第二言語としての日本語小論文におけるgood writing評価―そのプロセスと決定要因」
『社会言語科学』14巻1号,pp.210-222
• 田中真理・長阪朱美(2009)「ライティング評価の一致はなぜ難しいか:人間の介在するアセスメント」『社会言語科学』
12巻1号 pp.108-121
• 田中真理・初鹿野阿れ・坪根由香里(1998)「第二言語としての日本語における作文評価-『いい』作文の決定要因
-」『日本語教育』99号 pp.60-71
• 田中真理・初鹿野阿れ・坪根由香里(1998)「第二言語としての日本語における作文評価基準:日本語教師と一般日本 人の比較」『日本語教育』96号 pp.1-12.
• 長谷川哲子(2008)『誤用とその問題点の分析に基づいた日本語アカデミックライティング教材の開発』平成18年度~
19年度科学研究費補助金(基盤研究(C))研究成果報告書(課題番号18520415)
• 深澤のぞみ(1994)「科学技術論文作成を目指した作文指導―専門教員と日本語教師の視点の違いを中心に―」『日 本語教育』84号 pp.27-39