本 論 文 は 、 昇 温 プ ロ グ ラ ム 制 御 機 能 を 備 え た 加 熱 炉 型 の 熱 分 解 装 置 を 用 い た 、 P y - G C / M S シ ス テ ム の 高 分 子 材 料 分 析 に お け る 応 用 分 野 を 広 げ る と 共 に 、 そ の 目 的 の た め に 必 要 と な る 関 連 装 置 の 開 発 に つ い て 述 べ た も の で あ る 。
第 一 章 で は 、 P y - G C / M S シ ス テ ム を 用 い た P y - G C / M S 法 と
T D - G C / M S 法 お よ び E G A 法 の 、 今 日 ま で の 発 展 の 経 緯 や 既 報 の
適 用 例 に つ い て 概 説 し 、 本 論 文 の 目 的 、 意 義 お よ び 構 成 に つ い て 述 べ た 。
第 二 章 で は 、 人 体 へ の 有 害 性 か ら 、 各 種 法 令 で 使 用 が 制 限 さ れ て い る 臭 素 系 難 燃 剤 の 中 で も 、 規 制 の 施 行 前 に 汎 用 的 に 使 用 さ れ て い た デ カ ブ ロ モ ジ フ ェ ニ ル エ ー テ ル ( D e B D E) を 測 定 対 象 と し 、 T D - G C / M S 法 の 応 用 分 野 を 拡 張 し た 。 D e B D E は 、 分 子 量 が 大 き い た め に 試 料 ガ ス の 通 過 経 路 を 高 温 に 保 つ こ と が 求 め ら れ る 一 方 、 熱 的 に 不 安 定 で あ り 、 過 剰 な 高 温 下 で は 、 容 易 に 分 解 す る た め 、 熱 に よ り 基 材 中 か ら 目 的 成 分 を 脱 着 す る
T D - G C / M S 法 に よ り 分 析 さ れ た 報 告 例 は な か っ た 。こ れ に 対 し 、
本 章 で は 、 分 析 条 件 を 最 適 化 す る こ と で 、 P y - G C / M S シ ス テ ム を 用 い た T D - G C / M S 法 に よ っ て 、 高 い 精 度 と 確 度 で D e B D E を 簡 便 に 定 量 分 析 す る こ と が 可 能 で あ る こ と を 示 し た 。 こ の 結 果
は 、 T D - G C / M S 法 が こ れ ま で 適 用 さ れ て い な か っ た 化 合 物 の 定
性 ・ 定 量 分 析 に お い て も 、 各 条 件 を 最 適 化 す る こ と に よ り 応 用 で き る 可 能 性 を 示 し て い る 。
第 三 章 で は 、 P y - G C / M S シ ス テ ム を 用 い た E G A 法 に お い て 、 試 料 か ら 生 成 し た 発 生 ガ ス 中 の 任 意 の 温 度 画 分 を 、 選 択 的 に 分 離 カ ラ ム へ 導 入 す る こ と が で き る 選 択 的 試 料 導 入 装 置 の 開 発 と そ の 応 用 例 に つ い て 述 べ た 。 本 章 で 開 発 さ れ た 選 択 的 試 料 導 入 装 置 で は 、発 生 ガ ス 成 分 が 通 過 す る 流 路 を 最 短 と す る と と も に 、
- 82 -
流 路 内 を 石 英 の 薄 膜 で コ ー テ ィ ン グ す る こ と で 不 活 性 化 し 、 さ ら に 、 流 路 全 体 を G C 注 入 口 の 熱 に よ り 十 分 加 熱 す る こ と が で き る 構 造 と し た 。 こ の 選 択 的 試 料 導 入 装 置 の 基 本 性 能 を 、 ア ミ ン 類 や フ ェ ノ ー ル 類 お よ び ア ル コ ー ル 類 等 の 高 極 性 化 合 物 の 他 に 、 高 沸 点 化 合 物 で あ る テ ト ラ コ ン タ ン ( C4 0H8 2) を 含 む 標 準 試 料 の 測 定 に よ り 評 価 し た と こ ろ 、 こ れ ら の 化 合 物 が 流 路 内 で 吸 着 し た り 凝 縮 し た り す る 問 題 が 生 じ な い こ と が 確 認 さ れ た 。
ま た 、 こ の 選 択 的 試 料 導 入 装 置 を 備 え た P y - G C / M S シ ス テ ム を 用 い 、 ア ル ミ ナ を 主 成 分 と す る セ ラ ミ ッ ク の 射 出 成 型 用 材 料 に 、 バ イ ン ダ ー と し て 含 ま れ る 有 機 化 合 物 の 分 析 に 応 用 し た と こ ろ 、 設 定 し た 温 度 画 分 ご と に 発 生 ガ ス 成 分 を 分 離 カ ラ ム に 導 入 し て 分 離 分 析 す る こ と が 可 能 で あ り 、 低 分 子 か ら 高 分 子 ま で の 複 数 の 有 機 化 合 物 が 混 合 し た 複 雑 な 組 成 を 、 明 確 に 解 析 す る こ と が 出 来 た 。 こ れ ら の 結 果 よ り 、 開 発 し た 選 択 的 試 料 導 入 装 置 に よ り 、 P y - G C / M S シ ス テ ム に よ る ハ ー ト カ ッ ト 分 析 が 可 能 と な っ た 。
第 四 章 で は 、 従 来 の 加 熱 炉 型 熱 分 解 装 置 の 問 題 点 で あ っ た 死 空 間 の 影 響 を 最 小 限 に 留 め る た め の 新 し い 試 料 カ ッ プ の 開 発 を 行 い 、 P y - G C / M S 法 で 使 用 で き る 分 析 条 件 を 拡 張 し た 。
従 来 の 底 の あ る 円 筒 形 の 試 料 カ ッ プ は 、 そ の 内 部 が 袋 小 路 的 な 死 空 間 と な る た め に 、 測 定 条 件 に よ っ て は 低 沸 点 成 分 の ピ ー ク の 拡 が り や 、 反 応 性 に 富 む 熱 分 解 生 成 物 の 二 次 反 応 を 顕 著 に 引 き 起 こ す 原 因 と な っ た 。
そ こ で 本 章 で は 、 熱 分 解 生 成 物 の ピ ー ク 幅 の 広 が り と 二 次 分 解 を 最 小 に 抑 え る た め に 、 試 料 カ ッ プ の 底 部 に 小 通 気 孔 を も つ 試 料 カ ッ プ を 新 し く 開 発 し た 。 そ の 結 果 、 従 来 の 試 料 カ ッ プ で は 熱 分 解 生 成 物 の 二 次 反 応 や ピ ー ク 幅 の 広 が り な ど が 顕 著 に 起 き る キ ャ リ ヤ ー ガ ス 流 量 が 1 0 m L / m i n 程 度 の 低 い 条 件 に お い て
- 83 -
も 、 こ れ ら の 問 題 を か な り 軽 減 で き る こ と を 示 し た 。 こ の 結 果 は 、 開 発 し た フ ロ ー ス ル ー カ ッ プ は 、 P y - G C / M S 法 で 適 用 で き る 分 析 条 件 の 範 囲 を 広 げ 、 P y - G C / M S シ ス テ ム の 応 用 性 を 高 め た こ と を 示 し て い る 。
第 五 章 は 、 高 極 性 の 化 合 物 が 熱 分 解 生 成 物 の 主 成 分 と し て 生 成 す る こ と か ら 、 従 来 の P y - G C / M S 法 や 反 応 試 薬 を 添 加 し て
P y - G C / M S 測 定 を 行 う 反 応 熱 分 解 法 で は 、 精 度 の 高 い 測 定 が 困
難 で あ る た め 、 応 用 例 が 少 な い ポ リ ア ミ ド 樹 脂 を 分 析 す る た め の 新 し い シ ス テ ム の 開 発 に つ い て 述 べ た 。
新 し く 開 発 し た オ ン ラ イ ン マ イ ク ロ 反 応 サ ン プ ラ ー を 用 い た 分 析 法 で は 、 反 応 場 が 密 閉 系 で あ る た め 高 温 ・ 高 圧 の 条 件 下 で 反 応 を 行 う こ と が 可 能 で あ り 、 通 常 の P y - G C / M S 測 定 で は 観 測 が 困 難 な ナ イ ロ ン 6 . 6 の モ ノ マ ー 成 分 で あ る ア ジ ピ ン 酸 と ヘ キ サ メ チ レ ン ジ ア ミ ン の メ チ ル 誘 導 体 が 主 ピ ー ク と し て 明 瞭 に 観 測 さ れ た 。 ま た 、 観 測 さ れ た 2 つ の モ ノ マ ー 成 分 に 由 来 す る ピ ー ク の 面 積 比 は 、 5 回 の 繰 り 返 し 測 定 に お い て R S D 値 で 1 0 % 程 度 の 良 好 な 再 現 性 を 示 し た 。 こ の 結 果 は 、 開 発 し た オ ン ラ イ ン マ イ ク ロ 反 応 サ ン プ ラ ー と P y - G C / M S シ ス テ ム を 組 合 わ せ る こ と に よ り 、 従 来 の P y - G C / M S 法 や 反 応 熱 分 解 法 で は 、 高 い 精 度 で 分 析 す る こ と が 困 難 で あ っ た ポ リ ア ミ ド な ど の 高 分 子 材 料 の 精 密 分 析 が 可 能 と な っ た こ と を 示 し て い る 。
以 上 の 各 章 よ り 、 本 論 文 で 取 り あ げ た P y - G C / M S 法 や
T D - G C / M S 法 お よ び E G A 法 を 始 め と し た P y - G C / M S シ ス テ ム を
用 い た 分 析 法 は 、 こ れ ま で P y - G C / M S シ ス テ ム で は 困 難 と さ れ 分 析 事 例 の 報 告 が な か っ た 化 合 物 に お い て も 、 分 析 条 件 を 最 適 化 す る こ と に よ り 、 精 密 な 測 定 が 可 能 な 場 合 も あ り 、 同 シ ス テ ム の 応 用 範 囲 が 広 い こ と を 明 ら か に し た 。 ま た 、 こ れ ま で の シ ス テ ム で は 困 難 で あ っ た 分 析 法 や 、 様 々 な 弊 害 の た め に 適 応 が
- 84 -
困 難 で あ っ た 特 殊 な 分 析 条 件 下 に お け る 測 定 を 可 能 と す る た め の 関 連 装 置 を 開 発 す る こ と で 、 同 シ ス テ ム の 応 用 分 野 を さ ら に 広 げ 、 P y - G C / M S シ ス テ ム の 高 分 子 材 料 分 析 に お け る 有 用 性 を よ り 高 い も の と し た 。