第5章では、アプセットタイミングを;0
:
3s、0sおよび0.4sに変化させたときの圧接入力の変化と真の圧接入力、みかけの圧接入力などについて検討を行ない、そ のときのそれぞれの寄りしろとの関係を調べた。その結果、アプセットタイミン グが;0
:
3sおよび 0sのとき、アプセット変形入力の増加に伴い、引張強さも増大 し 、アプセット変形入力が約200J/s以上で完全継手が得られることが示された。しかし 、アプセットタイミングが 0.4sでは、アプセット変形入力が小さく完全継 手は得られない。アプセットタイミングが0sのときには減速域に相乗効果が得ら れるので、アプセット寄りしろの増大によりアプセット変形入力は大きくなる。ア プセットタイミングが;0
:
3sのとき、ターミナルピークトルク発生前にアプセット 圧力を負荷すると相乗効果が得られないが 、摩擦圧力が増加したことになり、摩 擦過程においてアプセット変形入力が増大して、完全継手が得られる。摩擦停止 後にアプセット圧力が設定値に到達する場合、摩擦停止以後のアプセット圧力の 増加分はアプセット変形入力に変換されず、アプセット変形入力が低くなり、完 全継手は得られないことを明らかにした。次いで、アプセットタイミングが;0:
3sおよび0sのとき、アプセット寄りしろが約3mm以上で完全継手が得られ 、アプ セットタイミングが0.4sのとき、摩擦停止後の寄りしろはほとんど 発生しないの で、アプセット寄りしろで継手の評価はできないことを示した。
第6章では、引張試験、曲げ試験、ねじり試験、疲労試験、およびシャルピ衝撃 試験を行ない、圧接入力および寄りしろと継手強度の関係について検討し 、良好 な継手を作製するために最低必要とされるそれぞれの最小限界アプセット変形入 力と最小限界アプセット寄りしろを明らかにした。曲げ試験の結果、みかけの曲げ 強さはアプセット変形入力が約500J/s以上、アプセット寄りしろが約6mm以上
で母材の曲げ強さをやや下回る約450MPaの値で安定する。良好な継手の得られ るアプセット変形入力の領域において、アプセット変形入力が小さく軟化域が広 い継手では、曲げ試験中、圧接部にき裂は生じ難いが、アプセット変形入力が大き く軟化域が狭い継手では 、軟化域と母材境界でき裂が生じ る傾向にあることを明 らかにした。ねじり試験の結果、アプセット変形入力が約500J/s以上、アプセッ
ト寄りしろが約5mm以上でねじり強さは母材値(298MPa)より小さい約170MPa
の値で安定することを明らかにした。疲労試験の結果、継手の疲労強さは引張強 さに比べ、界面の接合状態や軟化状態に影響されやすいことが示された。すなわ ち、界面の接合が良好で軟化領域が広い継手では、軟化領域で応力が分散されて 疲労強さは大きくなるが 、界面の接合が良好でも軟化領域が狭い継手や、軟化領 域が広くても界面の接合状態がやや劣る継手は、応力が接合界面に集中するため
{ 110 {
疲労強さが若干小さくなる。そして、疲労試験から求めた疲労限度で継手性能を 判断すると、引張試験同様、アプセット変形入力およびアプセット寄りしろがあ る値以上の場合に良好な継手が作製できることを明らかにした。シャルピ衝撃試 験の結果、アプセット変形入力が約300J/s以上、アプセット寄りしろが約3.5mm
以上で母材とほぼ同等の破断面を示し 、母材強度と同等、もしくはそれを上回る 継手が作製できることを明らかにした。
第7章では、S15CK炭素鋼、SUS304オーステナイト系ステンレス鋼、5056ア
ルミニウム合金、7075アルミニウム合金および AZ31マグネシウム合金の最小限 界アプセット変形入力、最小限界アプセット寄りしろおよび最小限界全寄りしろ を求め、6061アルミニウム合金との比較検討を行なった。その結果、最小限界ア プセット変形入力は 、圧接が容易な材料ほど 小さくなる傾向を示すことが明らか となった。
第8章は総論であり、本研究の総括を行なっている。
従来、摩擦圧接法で作成された継手に対する適切な非破壊検査は困難であり、継 手の品質保証あるいは継手強度を評価する一般的な手法が無かった。これに対し て本研究では、6061アルミニウム合金摩擦圧接継手において、一般性のあるアプ セット変形入力およびアプセット寄りしろで継手性能を評価し得ることを明らか にした。次いで 、S15CK炭素鋼、SUS304オーステナイト系ステンレス鋼、5056
アルミニウム合金、7075アルミニウム合金および AZ31マグネシウム合金の最小 限界変形入力および最小限界寄りしろを求め、6061アルミニウム合金と同様、ア プセット変形入力で継手性能を評価し得ることを示した。
8.2 今後の研究と課題
今後、種々の材料の接合に摩擦圧接が適用されることが予想され 、摩擦圧接継 手の非破壊検査に代わる評価法が求められると共に 、異なる摩擦圧接機で容易に 摩擦圧接条件を設定する要望が高くなると考えられる。また、本研究では同種摩 擦圧接継手に限定した。摩擦圧接の特徴である異種金属間の圧接では、同種摩擦 圧接継手と継手接合部の生成過程が異なると考えられ 、本研究の圧接入力だけで は解明できない部分も多く、今後の課題であると考えている。
こうした種々の問題に対し 、本研究で確立したアプセット変形入力による摩擦 圧接継手の評価法および圧接条件の選定法は、摩擦圧接における基礎的技術の一 つとして、この種の業界に貴重な知見を提供すると共に、多大の貢献をし得るも のと自負している。
{ 111 {
謝辞
本論文の作成にあたり、懇切なご 指導とご 教唆を賜りました慶応義塾大学理工 学部 菅 泰雄教授に深い敬意と深甚なる謝意を表します。また、本論文をご査読の 上、貴重なご教示を賜りました慶應義塾大学理工学部 久納 孝彦教授、三井 公之 教授、宗宮 詮教授に心から感謝を申し上げます。
本研究の遂行に当たり、終始多大のご教示、ご指導を賜りました元 大阪府立大 学総合科学部 小川 恒一教授に謹んで深甚なる謝意を申し上げます。また、実験上 のご 協力と示唆に富むご 討議を賜りました摂南大学工学部 山本 義秋教授、黒澤 敏朗教授、大阪工業大学短期大学部 辻野 良二教授、大阪産業大学短期大学部 大 植 義夫助教授、大阪産業大学工学部 川井 五作助教授に厚くお礼を申し上げます。
また、本研究を始める機会、本研究遂行中多大のご 支援と研究促進へのご 配慮 を賜りました大阪産業大学工学部 櫻井 惠三教授、足立 勝重教授、吉川 晃講師に 心からお礼を申し上げます。
実験および実験データの整理に当たっては、大阪工業大学 共同研究センター 越 智 秀特別研究員、大阪府立大学総合科学部 山口 博講師にご協力をいただきまし た。心より厚くお礼を申し上げます。
{ 113 {
発表論文
1. 本研究に関連した発表論文1)澤井 猛、小川 恒一、越智 秀、山本 義秋、古川 宏之、菅 泰雄、\5056アルミ
ニウム合金摩擦圧接継手性能の熱入力による評価, (第1報)圧接継手の引張強
さの検討"、軽金属溶接Vol. 38、No.2、pp.66{76、(2000).
2)澤井 猛、小川 恒一、山口 博、越智 秀、山本 義秋、菅 泰雄\6061アルミニ
ウム合金摩擦圧接における継手性能に及ぼす入熱の影響"、軽金属 Vol. 50、 No.10、pp.505{512、(2000).
3)澤井 猛、小川 恒一、山口 博、越智 秀、山本 義秋、菅 泰雄、\5056アルミニ
ウム合金摩擦圧接継手性能の熱入力による評価(第2報) 熱入力に及ぼす母材
直径の影響"、軽金属溶接Vol. 39、pp.133{141、(2001).
4)越智 秀、澤井 猛、山本 義秋、栗田 昌幸、小川 恒一、菅 泰雄、\6061アル
ミニウム合金摩擦圧接継手の引張強さおよび疲労強度の評価"、材料Vol. 50、 No.9、pp.961{967、(2001).
5) Ochi,H., Sawai,T., Yamamoto,Y., Kurita,M., Ogawa,K. and Suga,Y., \Eval-uation of Tensile Strength and Fatigue Strength of 6061 Aluminum Alloy Friction Welded Joint" Materials Science Research International Vol.8, No.3, pp.156{161, (2002).
6)澤井 猛、小川 恒一、山口 博、越智 秀、山本 義秋、菅 泰雄、\S15CK炭素
鋼同種摩擦圧接継手強度の入熱による評価"、溶接学会論文集 Vol. 19、No.4、 pp.581{590、(2001).
7)澤井 猛、山本 義秋、越智 秀、小川 恒一、辻野良二、菅 泰雄、\SUS304ス
テンレス鋼摩擦圧接継手の引張強さおよび疲労強さの評価"、高温学会誌Vol.
27 、No.6、pp.320{325、(2001).
8)澤井 猛、小川 恒一、山口 博、越智 秀、山本 義秋、菅 泰雄、\6061アルミ
ニウム合金の摩擦圧接における入熱と母材直径の関係"、軽金属 Vol. 52、 No.1、pp.581{590、(2002).
9)澤井 猛、小川 恒一、山口 博、越智 秀、山本 義秋、菅 泰雄、\6061アルミニ
ウム合金の摩擦圧接継手の静的強度とアプセット変形入熱およびアプセット 寄りしろの関係"、高温学会誌Vol.28、No.6 、pp.336{343、(2002).
10) 澤井 猛、小川 恒一、山口 博、越智 秀、山本 義秋、菅 泰雄、\6061アルミ
ニウム合金の摩擦圧接の入熱、継手強度に及ぼすアプセットタイミングの影
{ 115 {