• 検索結果がありません。

総括及び結論

ドキュメント内 untitled (ページ 31-35)

2.4 非臨床試験の概括評価

2.4.5 総括及び結論

薬理試験:塩酸モザバプタンの効力を裏付ける試験の結果,塩酸モザバプタンは V2-受容体に 対する拮抗薬であり,経口投与により自由水の排泄を増加し水利尿作用をもたらすことが明らか となった。塩酸モザバプタンは,電解質排泄を増加させることなく体内から過剰な水分を排泄す ることで,SIADH における低ナトリウム血症を是正するものと考えられた。なお,SIADH モデ ルで認められたように,血漿ナトリウム濃度の急激な上昇は CPM を来たすおそれがあることか ら,添付文書にて注意を喚起することとした。

薬物動態試験:非臨床試験における塩酸モザバプタンの薬物動態に関する試験結果は,臨床試 験における結果をサポートするのに充分なものであった。また,各動物種における薬物動態試験 の結果は,毒性試験に用いた動物種が塩酸モザバプタン及びその代謝物の安全性評価に適切な動 物種であったことを示唆していた。なお,ラットにおいて胎盤通過性及び乳汁移行性が確認され たことから,妊婦,産婦及び授乳婦への使用に関して添付文書に記載した。

代謝物について:塩酸モザバプタンには,16種類の代謝物が同定されている。このうち8つの代 謝物は,塩酸モザバプタンと同様に V2-受容体拮抗作用を示す活性代謝物であった。また,ヒト 及び動物における血漿中代謝物濃度推移を検討した結果,モザバプタンよりも高い推移を示す活 性代謝物が複数存在することが明らかとなった。以上の結果より,塩酸モザバプタン投与時の薬 理作用(水利尿作用)には,モザバプタンと共にこれらの活性代謝物が関与していると推定され た。そこで,ラット,イヌ及びヒト V2-受容体へのモザバプタンの親和性に対する代謝物の親和 性の比(活性比)とモザバプタンのAUC及びCmaxに対する代謝物の血漿中存在比を算出し,各

*:新薬承認情報提供時に置き換えた

活性代謝物の水利尿作用への関与について考察した(表 2.4-6)。

主要代謝物のうち,M1及びM2は,ヒトV2-受容体に対してモザバプタンよりも高い親和性を 示し,M3,M4及びM5はモザバプタンと同程度の親和性であった。また,ヒトでのAUCとCmax は,主要代謝物の中で V2-受容体に親和性を示す活性代謝物はすべてモザバプタンに比較して高 値を示した。各活性代謝物の水利尿作用への関与の程度を推測するために,活性比と血漿中存在 比(AUC及びCmax)を積算し相対力価を算出した結果,M1及びM2の相対力価が非常に高く,

次いでM3が高値を示した。したがって,ヒトにおける塩酸モザバプタンの水利尿作用には,主

にM1,M2及び M3が関与していると推察された。主要代謝物以外ではM14にモザバプタンよ

りもやや高い V2-受容体親和性が認められたが,血漿中存在比が低いことからヒトでの薬理作用 への寄与は少ないものと考えられた。

一方,ラット及びイヌにおいては,ヒトで高い相対力価を示したM1及びM2の相対力価は低 くなっており,ラット及びイヌでの薬理作用には,モザバプタンを含めた他の活性代謝物の寄与 も大きいと考えられた。すなわち,ラットではモザバプタン,M1,M4及びM5が,イヌではモ ザバプタン,M1,M2,M4及びM5が水利尿作用に関与すると推察された。

2.4 非臨床試験の概括評価 25

表 2.4-6 ヒト,ラット及びイヌにおける代謝物のV2-受容体拮抗活性比と血漿中存在比

一覧(Cmax及びAUC)

ヒト30 mga 雄ラット10 mg/kg 雄イヌ30 mg/kg

活性比 血漿中 存在比

相対

力価 活性比 血漿中 存在比

相対

力価 活性比 血漿中 存在比

相対 力価

Cmax

モザバプタン 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 M1 10.7 2.24 24.0 1.53 2.51 3.84 1.28 3.30 4.22 M2 5.01 4.63 23.2 0.10 1.19 0.12 0.11 5.48 0.60 M3 1.43 1.94 2.77 0.11 1.40 0.15 0.05 3.02 0.15 M4 0.42 2.51 1.05 0.36 5.02 1.81 0.40 5.35 2.14 M5 0.39 2.46 0.96 0.42 2.19 0.92 0.26 2.03 0.53 M6 0.00 34.2 0.00 0.00 2.04 0.00 0.00 6.00 0.00 主

要 代 謝 物

M7 0.00 9.73 0.00 0.00 5.94 0.00 0.00 0.26 0.00 M8 0.40 0.50 0.20 0.04 1.41 0.06 0.03 0.95 0.03 M9 0.00 0.78 0.00 0.00 0.38 0.00 0.00 0.10 0.00 M10 0.00 0.14 0.00 0.00 0.21 0.00 0.00 0.25 0.00

M11 0.00 未測定 0.00 0.00 − 0.00 0.00 − 0.00

M12 0.00 未測定 0.00 0.00 0.57 0.00 0.00 0.40 0.00 M13 0.00 2.22 0.00 0.00 0.12 0.00 0.00 0.14 0.00 M14 2.31 0.57 1.32 0.15 − − 0.25 0.31 0.08 M15 0.12 0.76 0.09 0.01 0.60 0.01 0.01 0.81 0.01 そ

の 他 の 代 謝 物

M16 0.00 未測定 0.00 未測定 0.31 − 未測定 0.37

AUC

モザバプタン 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 M1 10.7 3.56 38.1 1.53 3.12 4.77 1.28 2.46 3.15 M2 5.01 15.1 75.7 0.10 1.54 0.15 0.11 5.11 0.56 M3 1.43 5.26 7.52 0.11 2.27 0.25 0.05 2.55 0.13 M4 0.42 10.7 4.49 0.36 9.27 3.34 0.40 5.04 2.02 M5 0.39 4.96 1.93 0.42 2.49 1.05 0.26 1.48 0.38 M6 0.00 177 0.00 0.00 2.12 0.00 0.00 4.65 0.00 主

要 代 謝 物

M7 0.00 82.8 0.00 0.00 11.7 0.00 0.00 0.27 0.00 M8 0.40 0.35 0.14 0.04 1.25 0.05 0.03 0.53 0.02 M9 0.00 4.05 0.00 0.00 0.72 0.00 0.00 0.10 0.00 M10 0.00 0.11 0.00 0.00 0.35 0.00 0.00 0.18 0.00

M11 0.00 未測定 0.00 0.00 − 0.00 0.00 − 0.00

M12 0.00 未測定 0.00 0.00 0.51 0.00 0.00 0.28 0.00 M13 0.00 6.11 0.00 0.00 0.20 0.00 0.00 0.10 0.00

M14 2.31 − − 0.15 − − 0.25 0.10 0.03

M15 0.12 0.79 0.09 0.01 0.65 0.01 0.01 0.56 0.01 そ

の 他 の 代 謝 物

M16 0.00 未測定 0.00 未測定 − − 未測定 − −

活性比:モザバプタンを1.00としたときの各代謝物のV2-受容体拮抗作用の強度(モル比)。

活性比=(モザバプタンのV2-受容体に対するKi値)/(各代謝物のV2-受容体に対するKi値)

血漿中存在比:モザバプタンを1.00としたときの各代謝物の血中での存在比(モル比)。

血漿中存在比=(各代謝物のAUC又はCmax)/(モザバプタンのAUC又はCmax 相対力価:モザバプタンを1.00とした時の各代謝物の水利尿作用への寄与の割合。

相対力価=活性比×血漿中存在比

a:塩酸モザバプタン30 mg11回朝食後10日間反復投与試験(129-H*-003試験)のデータを基に作成。

#:推定値,−:測定(算出)できなかった。

<資料番号5.3.3.1-02:129-H*-003試験,4.2.2.4-10,4.2.2.4-12,5.3.2.3-01より作成,V2-受容体に対する活性比は 2.6.2-5を基に作成>

*:新薬承認情報提供時に置き換えた

毒性試験:ラットに塩酸モザバプタンを単回経口投与した結果,概略の致死量は,雄で1000〜

1500 mg/kg,雌では500〜1000 mg/kgであった。一方,イヌでは雌雄とも2000 mg/kgを越える量 であった。

ラットにおける塩酸モザバプタンの 13 週間毒性試験では,肝細胞に脂肪滴の増加が 30 mg/kg 以上の雄と最高用量100 mg/kgの雌で認められた。100 mg/kgではコレステロール,リン脂質,α 2,3-及びβ-グロブリン,アルカリホスファターゼの増加,並びに肝臓の胆管上皮細胞及び腎臓の 近位尿細管上皮細胞にミエリン様構造物が認められた。更に,腎臓では重量増加及び集合管上皮 細胞にPAS陽性顆粒もみられた。以上のことから,本試験における無毒性量は,雄では10 mg/kg,

雌では30 mg/kgと判断した。

イヌにおける塩酸モザバプタンの 13 週間毒性試験では,75 mg/kg 以上で嘔吐が,最高用量

200 µg/kgでは流涎,体重及び摂餌量の減少が認められた。更に,コレステロール,リン脂質の増

加及び肝細胞間の胆汁栓が75 mg/kg以上で,アルカリホスファターゼ,トリグリセライドの増加,

限局性の肝細胞壊死が200 mg/kg で認められた。モザバプタンの有糸分裂阻止作用に関連した変 化としては,最高用量 200 mg/kg で白血球数の減少,骨髄顆粒球系細胞比率の低下,皮膚の菲薄 化,リンパ系及び生殖器系臓器の萎縮性変化が認められた。その他,75 mg/kg以上で種々の臓器 にミエリン様構造物が確認された。以上のことから,本試験における無毒性量は雌雄とも20 mg/kg と判断した。

塩酸モザバプタンのin vitro 及びin vivo 遺伝毒性試験の結果,有糸分裂阻止あるいは染色体不 分離に起因すると考えられる染色体の数的異常,並びに小核あるいは優性致死が誘発された。し かし,染色体の構造異常及び遺伝子変異は誘発されなかった。染色体不分離は塩酸モザバプタン が微小管蛋白の動態を可逆的に抑制することによって引き起こされており,閾値のある毒性作用 であった。また,ヒト末梢血リンパ球培養細胞においては,塩酸モザバプタンは1 µg/mL以上で 有糸分裂を阻止したが,0.5 µg/mL以下では有糸分裂阻止作用を示さなかった。主要代謝物及びそ の光学異性体で阻止作用を示すものもあったが,その程度は塩酸モザバプタン及びその光学異性 体より弱かった。

マウスのがん原性試験では,最高用量100 mg/kgの雄で肝細胞腺腫(良性)の発生率が軽度な がら増加した。ただし,この良性腫瘍は,使用した B6C3F1系マウス,特に雄で好発し,またそ の発生率の変動も大きいことが知られている16。本試験において,雌マウスでは肝細胞腺腫の発 生率の増加はみられず,肝細胞腺腫の早期化及び前腫瘍性病変の発生頻度にも変化は雄マウスで 認められなかったことから,ヒトへの外挿を考慮する所見ではないと考えられた17。雄マウスの 100 mg/kgの曝露量(投与26週時Cmax: < 50 ng/mL)はモザバプタンの有糸分裂阻止作用の閾値 よりも,明らかに低値であり,遺伝子変異,染色体構造異常及び DNA 損傷の誘発作用もみられ ないことから,遺伝毒性との関連はないと推察された。ラットにおけるがん原性試験では,いず れの臓器についても腫瘍発生率の増加はみられなかった。

ラットの妊娠前及び妊娠初期投与試験では,親動物毒性として 100 mg/kgの雌雄で流涎,体重 増加抑制及び摂餌量の減少,雄で肝臓の大型化及び黄色調がみられたが,雌雄の受授胎能及び胚・

胎児発生に影響はみられなかった。ラットにおける器官形成期投与試験では,母動物毒性として

2.4 非臨床試験の概括評価 27

30 mg/kg以上で摂餌量の減少が,100 mg/kg以上で投与初期の体重減少が,200 mg/kgで膣出血が 認められた。発生毒性として 200 mg/kgで着床後死亡の増加,体重低下,奇形及び変異の増加,

骨化遅延がみられた。ウサギにおける器官形成期投与試験では,母動物毒性として40 mg/kgで流 産及び切迫屠殺例,体重及び摂餌量の減少が認められ,発生毒性として20 mg/kg以上で軽度な胎 児死亡の増加がみられたが,塩酸モザバプタンの催奇形性は認められなかった。ラットにおける 周産期及び授乳期投与試験では,母動物毒性として30 mg/kg以上で体重増加抑制及び摂餌量の減 少がみられ,発生毒性として 100 mg/kgの雌雄で体重増加抑制が認められたが,形態,生存性,

発育分化,反射機能,学習能力及び生殖能力に影響は認められなかった。

なお,生殖発生毒性として,ラットにおいて催奇形作用が200 mg/kgで認められ,ウサギにお いて胚致死作用が20 mg/kg以上で認められていることから,妊婦又は妊娠している可能性のある 婦人を禁忌とし,また,妊婦,産婦,授乳婦への使用に関して添付文書に記載した。

抗原性試験,代謝物及び光学異性体の毒性試験では,特記すべき所見は認められなかった。 

以上の結果から,塩酸モザバプタンは異所性ADH産生腫瘍によるSIADHにおける低ナトリウ ム血症の改善が期待できる。また,塩酸モザバプタンの一般薬理試験及び毒性試験(単回及び反 復投与毒性,遺伝毒性,生殖発生毒性)において認められた作用は,いずれも臨床推奨用量30 mg に比べて高い用量で発現していた。更に,ヒトへの外挿性の低い腫瘍以外にはがん原性試験にお いて腫瘍発生率増加はみられなかったこと及び抗原性はみられなかったことより,今回,申請す る用法及び用量での異所性ADH産生腫瘍によるSIADH患者に対する臨床使用のための安全性は 確保されているものと考えられた。

ドキュメント内 untitled (ページ 31-35)

関連したドキュメント