本研究ではB2型規則合金の規則化過程を速度論的に, かつ統 括的に明らかにすること, 特に規則化過程に及ぼす過剰空孔の 影響を明らかにすることを目的とし, 実験結果の解析に簡便に 適用できる a般的速度式を導出した. この速度式は, 規則化の 系過程に関する特定のモデルによらず, B2型規則合金における 般的な物理条件から導出した規則度Sの3次項まで含む非線 形速度方程式であり, 実験結果の解析に簡単にかつ直接的に適 用でき, - � �支的に成り立つという利点を持つ. さらに, この速 度式を空孔濃度の時間変化まで考慮した式に拡張し, 典型的な 82型規則合令の 'つであるFeCo合令の規則化過程の速度論的 解析に適用した.
4方, Fe Co合金の不規則領域から焼入れた後の等温規則化 に伴う格子定数変化をX線同折法で測定した. また, 規則領域 から焼入れた後の等速昇温規則化に伴う電気抵抗変化を直流四 端子法で測定した. さらに, 電気抵抗からその温度微係数α Rお
よび規則度のみによる電気抵抗の温度微係数ム α Rを求めた. こ れら格子定数, α Rおよびム α Rの実験結果を導出した速度式で 解析し, B 2型規則合金の規則化における一般的速度式および FeCo合金の等温規則化過程と昇温規則化過程に関して以下の 結論を得た.
104
-( I
) 一般的速度式(1) B
2型規則合金の 4般的速度式として次式を提唱した.dS/dt=1/2 . C..F(T)S{S� v e (T)2 - S2},
ただし, Sは規則度, Se(T)は平衡規則度 Cvは空孔濃度およ びF(T)はS, tを含まない温度Tの正の関数である.
( 2
)一般的速度式に含まれるF(T)を以下のように仮定すること により, 擬化学反応論より得られたTakagi-Oguchiの式および原子論的立場で導出されたVineyardの式と対応させて, 原 子振動数(ν)および活性化エネ ルギー(
ç
)との問
にそ
れぞ
れ次の 関 係 式を得た
.
(
A)T a k a
gi -
Og
uc
h iの
式との 対 応
F(T)=ν , (Tc/T)exp(-ç='
CTc/T).
原子振動数に対して
ν , =4ν ,
活 性化エネルギーに対して
ç=' =1/3+ç=.
105
-(B)Vineyardの式との対応
F (T) =ν , (Tc/T)2exp(- ç
m'Tc/T).
原子振動数に対して
ν , =49/4ν
フb孔の移動エネルギーに対して
tm' =7/42+t
m-( 11
)等温規則化過程( 1
)等温規則化過程に適用できる速度式として次式を得た.ただし
X=Xe/ [1+(α -l)exp !-t/τ -ß +ßexp(一γ(T)t! ]
,1 /τ =XeF(T)Cve(T),
α =X e/X 。=S e2/S 02,
F =XeF(T) lCve(Tq)-Cve(T)! /γ(T) .
( 2 )格子定数Pと規則度の2乗Xの聞の関係式として次式を得た.
p=
A+ BX
ー106
-ただし,
A=
2.84957xlO-10
ffi,B=
0.00322xlO-10
ffi.( 3 )合金の空孔の形成および移動エネルギーとしてつぎの値を 得た.
0 0 m m // // T1,u YEEd 'K 守K 1i ハY 9 3 1i
一一一一f m E E
(4 ) 合金の格子定数(規則度)は, 焼鈍時間の経過とともに2
段階で増加する
.
不規則状態か ら焼入れられたFeCo合金を等温 焼鈍により規 則化する場介 焼鈍の初期には焼入れによる過剰空孔を媒介に
した規則化が急速に進み(ステージ1 ) やがて過剰空孔は消 滅し , つぎに熱予衡濃度の空孔によって引き続き規則化が進行 する(ステー ジII) . このため格子定数(規則度)は焼鈍時間 の経過とと もに2段階で増加し, この2段階変化は低い焼鈍温度 ほど顕著に現われる.
( 5 )空孔濃度変化を合む木研究の速度式は, 実験結果をよく説 明し, 格子定数の2段階変化も合理的に解釈出来る. しかし,
今孔濃度変化を含まない速度式(
4- 2)は, 規則化が50 %程度進 行したのち すなわち過剰空孔が消滅したのちの規則化過程に
しか適用できない.
107
-( 111
)等速昇温規則化過程( 1 )等速昇温規則化過程に適用できる速度式として次式を得た.
dX/dT=11φ ・ CvF(T)X(Xe-X).
ただし,
dCv/dT=-11φ - N
dP2ν 1 Cv-Cv(T)!
exp(-Em/RT),
F (T) =ν exp(-Em/RT).
( 2 )電気抵抗の温度微係数αRおよび αRからフォノン散乱と磁 気的散乱の項を除いたム αRと規則度の2乗Xとの聞につぎの関 係式を得た.
αR=a(1-g2X)+3b(1-g3X)T2
ー(glρ。+g2aT+g3bT3)dX/dT.
ム αR αR-(a+3bT2)
=-(g2a+3g3 bT2)X-(gl
P0十g2aT+g3bT3)dX/dT.
ただし, a,b,gl,g2,g3は定数である.
(3 )焼入れ速度φで温度T から焼入れた試料の空孔濃度C とQ
- 108
-規則度の2乗Xは次式で近似される.
Cv= Cv(T Q)exp{ (N dp2 ν/φ)k(TQ)},
X=XoXQI
[XQ+(X o-XQ)exp{ (X 。 νCv/φ)k(TQ)}].
ただし,
k(T Q)=(RT Q2 IEm)exp(-Em/ Q
I� m RT Q)' XO=Xe(T), XQ=Xe(TQ).
(4
)等速昇温規則化過程では, 規則度の2 段階変化は現われなし】
773以kの規則領域から焼入れた場合 焼入れ温度の平衡先
孔濃度の98.5%程度が過剰ZE孔として凍結される. 焼入れたの ち一定速度 で昇温した場合, 凍結された過剰空孔は650K付近 から急激に減少し , _ EL最小値を示し たのち増-加に転じ
800 K付近で平衡空孔濃度に達する . これに伴い規 則度も 650 K付近から急激に増加し, 焼入れ温度が高い程急激である.
また, 800 K付近で -旦 、子衡値より大きくなり その後は焼入 れ温度に関係なく平衡値で推移する. α Rやム α Rの変化はその 初期段階で(8 00Kまで)過剰空孔の影響を大きく受けるが, そ れに続く平衡空孔濃度変化と連続的であり, その結果, 規 則度 の2段階変化は生じない.
- 109
-(5
)電気抵抗の残留抵抗およびフォ ノン散乱と俄気的散乱の各 項に規則度の影響を考慮したα Rやム αRに関する本研究の速度 式は, 規則化に伴うα Rやム αRの変化の実験結果をよく再現し た. また, 焼入れ直後の規則度と空孔濃度の初期値を合理的に 見積もることにより, 規則化に伴うαRやム αRの動的挙動および規則化に及ぼす過剰空孔の役割を合理的に説明できる.
(6
) フォ ノン散乱による電気抵抗は, 規則化に伴い規則度の2 乗に比例した影響を受け, その比例定数は7.0xl0-5K-lであ る.( 7
)磁気的散乱による電気抵抗は, 規則化の影響をほとんど受 けない.(8
)合金の残留抵抗率は, 規則度の2乗に比例して減少し, そ の比例定数は0.03である.AU ----a
謝 辞
本論文は, 著者が九州大学 大学院 総合理工学研究科 材料開 発工学専攻 金属材料物性学講座において, 平成8年度文部省同 内研究員として留学中 沖 憲典教授の御指導のも とにそれま で行った研究をまとめたものである . '(中教授の長年にわた る御 教授 と御鞭捷に心か ら感謝致します. また 沖研究室のスタ ッ
フである桑野範之助教授の有益な御教示 板倉 賢助手のコンピ ュータに関する助言, 波多 聴助手の御協力に厚くお礼申し上げ ます.
本研究の遂行の過程で は, 多くの方々にお世話になり ました .
特に , 昭和4 8年度文部省国内研究員として九州大学工学部鉄 鋼冶金学科に留学した際, 本 研究の基礎を築いて下さり, その 後も数々の適切な助r jと御指導を戴いた江口 鉄男先生, 文献 や実験についての御教示を戴いた工学部材料工学科の友清 芳二 助教授に深く感謝致します. また, 本論文作成にあたり, 種々 の御指導を賜わった九州大学歯学部太田 道雄教授および総合理 工学研究科の森永健次教授に厚くお礼申し上げます.
留学にあたり御尽えj 戴いた都城高専 江藤校長, また, 公私に わたり御援助戴いた都城高専応用物理 平原教授 森茂助教授 お よび a般物理立山技官, 木下事務官に心から感謝いたします.
本論文は, 仁記の}f々をはじめと する多くの方の御協力 と御 支援によって完成したものであることを特記 し 重ねて厚く御 礼申し上げます.
、11成9年 7月
111
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