総括 傾向
□ニューヨーク
都市中心部や産業地域に「立地」、オフィスビルや産業系施設が「前用途」で、1900 年前後に「建 設年」がまとまり、100 室前後の「客室数」で、ラグジュアリーの「価格帯」が大半を占め、「機能」
では、テナントや宴会、アスレチックをもち、「外壁」には庇や旗、時計が付加され、ルーフトッ プバー等の「増築」が特徴的だった。
□日本
「前用途」が個人住宅で、1900,1950 年前後や 1980 年代の「建設年」、50 室未満の「客室数」で、
安価な「価格帯」、「機能」ではギャラリーが、「外壁」操作では塗装が、特徴的だった。
総括 展望
日本の事例について、ニューヨークの事例と比較することで、その特徴についてまとめ、今後 の日本での建築ストックのホテルへの転用に対する展望とする。
※以下の表記内容: □展望 [ 分析の視点 ]
1) 日本特有の建築ストックに注目する[ 前用途・建設年 ]
建設年の新しい建築ストックが多く、歴史的価値のある建物が少ない傾向がある。ただ、その 中で前用途が個人住宅である「古民家」に限定すると、建設年が 1900 年前後のストックが多 く残り、活用も行われている。また、地方都市等で戦後の経済成長期に建設された銀行等の「公 共施設」にも注目したい。これら歴史的価値の高いストックのホテルとしての活用に期待したい。
2) 小規模を強みと考える[ 階数・客室数 ]
ホテル規模に関係する階数・客室数は、ニューヨークでは階数は様々だが 100 室前後の規模の ホテルが多く、周辺の新築ホテルと比べて比較的小規模だった。日本は建築ストックの階数が 低い傾向があり、さらに小さい50室未満の事例が大半を占めており、小規模な点に特徴がある。
この点を強みとし、東横イン等の宿泊特化型の大型ビジネスホテルチェーンのホテルや外資系 ラグジュアリーホテル等の大中規模のホテルと差別化した、客と従業員、客と客との親密な関 係を売りにしたホテルを計画することで、ホテルの商業的価値を高めることが可能であると考 えられる。
3) 建築ストックとホテル市場の特徴をつかみ価値を最大化する[ 価格帯・外壁・増築 ] 日本における建築ストックとそのホテルとしての活用法を、多数の観点から眺め、その特徴を 理解し、それらを強みとして建築的操作等を加えるなどすることで最大化し、ホテルとしての 価値を高めることで、現在のような低い価格帯ではなく、外資系ホテルと並ぶような商業的価 値を持ったホテルとすることが可能であると考えられる。
4) ライフスタイルホテルに学ぶ[ 立地・機能 ]
日本とニューヨークでは、共に、建築ストックやホテル市場、法制度など状況は異なるが、ア クセス重視の都市中心部でなく、下町や工業地域、地方都市に立地し、老舗ホテルや倉庫等の ストックを活用したホテルで、ラウンジ・飲食等の機能を宿泊客以外も利用できる、地域に開 かれた性格の「ライフスタイルホテル」に注目が集まっている。これは、日本では東京や京都 等の観光客の多い地域だけでなく、広島や兵庫などの地方都市で成功事例が確認でき、今まで 計画地として名が挙ることのなかった地方都市でも、建築ストックを活用したホテルを計画し 成果を得られる可能性があることがわかった。これらの事例は、地域活性化の一手法として参 考にしたい (NY-No.01,23/JP-No.01,35)。
1)
2)
3) 4)
古民家ステイ
豊岡 1925
ホテルカンラ京都 パークハイアット東京
ONOMICHI U2/HOTEL SYCLE 旧木村屋酒造場 EN
No.01
No.01
No.23
No.35 No.06
No.09
No.34
Wythe Hotel ACE HOTEL NEWYORK
Hostel64 Osaka No.04
宿泊サービス事情 ホテル業の市場規模 前用途の系統 / 建設年 / 転用年 分析対象事例データシート
(アメリカ / ニューヨーク / 日本)
宿泊サービス事情
ホテルに対する理解を深めるため、ここでは、その導入としてホテルを含む日本国内外で利用 可能な宿泊形態を、ホテルや旅館などの「宿泊施設」と近年注目を集める airbnb を始めとする
「宿泊マッチングサービス」に大別しまとめる。
宿泊施設
■ホテル
日単位で宿泊費を設け、主に旅行者やビジネス出張者など短期滞在者が利用する宿泊施設。
■旅館
日本独自の宿泊施設。ホテルと異なり、料理の配膳や布団敷きなど独自のサービスを行う。
■簡易宿泊所
ホテルと異なり、トイレやシャワーなどの水廻り設備や2段ベッドなどを使い一室を複数の宿 泊者で共有する安価な宿泊施設。ホステルやゲストハウス、カプセルホテルがこれにあたる。
□ホステル
□ゲストハウス
□カプセルホテル
■一棟貸しの宿
戸建て住宅などを一棟丸ごと貸し出す宿泊施設。上記の宿泊施設と異なり、施設内に従業員が 在中せず、自宅と同じように料理や湯沸かしなどを宿泊者が行う。
□古民家
■宿泊マッチングサービス
□air bnb [http://airbnb.jp]:192 カ国、有料
「暮らすように旅をしよう」
世界3万5千都市で、アパートや一軒家、B&B などを比較的安価に借りたり、サイトを通じて 貸し出すことができる。有名建築家が設計した家やセレブの家、世界遺産、乗り物、城といっ た個性的な物件も登録されている。
□Couch Surfing [https://www.couchsurfing.com/]:200 ヶ国、無料
「無料で世界の人々と交流できることが最大の魅力!」
□Mind My House [http://www.mindmyhouse.com/]:31 ヶ国、無料 ( 手伝い )
「ハウスシッティングしながらローカルライフを体験できる。」
※ハウスシッティング…主人の留守の間、ペットや植物などの面倒を見る。
□Workaway [http://www.workaway.info/]:130 ヶ国、無料 ( 手伝い )
「1 日数時間のボランティアを通して、国際交流ができる。」
□Worm Showers [http://www.warmshowers.org/]:15 ヶ国、無料
「自転車旅行者必見!自転車乗り同士の助け合いサービス。」
□WWOOF [http://www.wwoofjapan.com/]:60 ヶ国、無料 ( 手伝い )
「海外で、日本で、オーガニックな農業体験。」
□University Rooms [http://www.universityrooms.com/]:17 ヶ国、有料
「世界の優秀な学生気分を味わえる学生寮滞在。」
□Staycation [http://www.staycation.jp/]:2 ヶ国、有料
「日本発、別荘シェアリングで憧れの別荘体験。」
< 参考 >
BRUTUS 2015.8.15 「わざわざいきたくなるホテル」̲p51-70
ホテル旅館ホステルゲストハウスカプセルホテル一棟貸し
ホテル業の市場規模
国内のホテル業の市場規模を把握するため、総売上高と軒数 / 客室数についてまとめる。
総売上高
国内主要ホテル (21 社 )、平成25年7月〜平成26年度6月決算の売上高合計額は、9,216 億円。これに、中小ホテルやビジネス系ホテルなどの売り上げを勘案するとホテル業界全体で は2兆円超の市場規模と言われる。ちなみに、日本には官公庁による公式なホテル事業の売上 高数値の集計が存在しない。
※国内主要ホテル 21 社 ̲西武ホールディングス、リゾートトラスト、東京急行電鉄、ホテルオークラ、京王電鉄、ニュー・
オータニ、阪急阪神ホールディングス、藤田観光、帝国ホテル、ロイヤルホテル、共立メンテナンス、パレスホテル、日本ビュー ホテル、京都ホテル、アメイズ、アゴーラ・ホスピタリティー・グループ、ホテル、ニューグランド、ホテルニューアカオ、
熊本ホテルキャッスル、鴨川グランドホテル、丸ノ内ホテル
軒数 / 客室数
国内の宿泊施設 (2000 年〜2010 年 ) の軒数 / 客室数を、ホテルと旅館に分けて示した(下図)。
2000 年以降の 10 年間、軒数では、ホテルが微増傾向にあるのに対し、旅館は減少傾向にある。
両者を併せた宿泊施設全体で見ると軒数は減少傾向にあるといえる。続いて、客室数では、軒 数同様ホテルが増加傾向、旅館は減少傾向にあることがわかる。2009 年には、ホテルの総客 室数が旅館のそれを上回り、旅館の減少に注目せざるを得ない状況に入ったといえる。
<参考>
国土交通省 官公庁 [http://www.mlit.go.jp/common/000226408.pdf]
よくわかるホテル業界 ̲p12-22 ホテル業界最新事情 業界動向 SEARCH.COM [http://gyokai-search.com/]
1000千室 950
622 638 649 664 681 698 722 756 781 798 802
950 934 915 898 871 850 843 823 808 792 764
800 1000
622 638
400 600
200
0
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
ホテル 旅館
宿泊施設 ( ホテル・旅館 ) の軒数推移 [2000 年〜2010 年 ]
宿泊施設 ( ホテル・旅館 ) の客室数推移 [2000 年〜2010 年 ]
70,000 (軒)
64,831 63,388 61,583
59,754 58,003
55,567 54,107
52,295 50,846 48,966
46,906 50,000
60,000
30,000 40,000
8,220 8,363 8,518 8,686 8,811 8,990 9,180 9,442 9,603 9,688 9,629
10,000 20,000
0
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
ホテル 旅館
ホテルコンバージョン
異なる用途を持つ建物からホテルへと用途転用されたもの。転用後用途であるホテルは、前頁 で示した宿泊施設のことをいう。以下、ホテルコンバージョンをさらに細かく分類する際に必 要となる「前用途の系統/建設年/転用年」についてまとめる。
前用途の系統
建築物の用途を、使用方法だけでなく、特にその建築的あるいは物理的特性(構造/設備・環境)
に注目し、「公共系 / 産業系 / 商業系 / 居住系 / 医療・福祉系」の計5系統に分類整理しまとめた。
■公共系
□庁舎 □図書館 □銀行
□教育施設_小学校/中学校/高校/大学
□展示施設_美術館/博物館/水族館 [ 小中高校を除き、基本的に土足で過ごす。]
■産業系
□工場 □倉庫 □発電所 [ あああ ]
■商業系(商業/業務/芸能)
□商業施設
□事務所
□劇場 [ あああ ]
■居住系
□住宅_独立住宅/集合住宅
□宿泊施設_ホテル/旅館/寮 [「キッチン、浴室、ベッド」を持つ。]
■医療・福祉系
□医療施設_病院/診療所/歯科医院/子ども病院/精神病院/ホスピス/サナトリウム
□福祉施設_高齢者福祉施設/保育所 [「キッチン、浴室、ベッド」を持つ。]
<参考>コンパクト設計資料集成/世界のコンバージョン建築Ⅰ・Ⅱ 建設年
日本で言えば、戦前と戦後、高度経済成長期など建設年代によって、多く建設された建物種別・
構造種別などの傾向がそれぞれ異なる。
「建物種別」_住宅、工場、倉庫、オフィスビルなど。
「構造種別」_木造、煉瓦造、RC 造、S 造など。
転用年
コンバージョンを支援する法制度が実施されると、そこを境に事例数が増加する傾向が国内外 ともに確認されており、転用年はその影響を反映したものとなる。海外では、1991 年に合意 された「スイス チューリッヒ ノード地区」でのコンバージョンによる再開発計画や 1995 年か ら始まった「アメリカ ニューヨーク ローワーマンハッタン地区」での税制優遇政策に代表さ れるように、1990 年代に入ってからコンバージョン誘導策が実施され始める。それから少し 遅れて、日本では、2000 年代に入ってから、国土交通省や地方自治体がコンバージョンの優 遇政策を進めるようになった。日本における先進的な事例であるアイビースクエアのように 2000 年代以前の事例も存在するがそれ以外の事例は、コンバージョンの優遇政策の始まった 2000 年代以降に開業している。