, ,
研究Ⅰでは 小学生・中学生における自己調整学習と自己効力感の因果的な関連性について 共分散構造分析及び重回帰分析により検討を行った。
まず,自己調整学習と自己効力感の小学生・中学生における因果的な関連性を共分散構造分 析及び重回帰分析により検討を行い得られた結果は,以下の3点にまとめられる。
( 1 )ジ マー マ ン・シャ ンク (2007)の 「自己調整 学習 →自己効力 感→従属変 数」という モ デルにあてはまる結果となったのは,小学生の従属変数が『テスト不安』の場合にお いてのみであった。
(2)松沼(2004)の「自己調整学習→自己効力感→テスト成績」,伊藤・神藤(2003)の,
「自己効力感,学習時の不安感→自己調整学習方略の使用→学習の持続性」のそれぞれ のモデルのあてはまりについては,小学生対象では,両研究で用いられた適性変数の うち従属変数が『テスト不安』の場合においてだけそれぞれのモデルへのあてはまり が よく , 松沼(2004) のモデルが 支持される 結果 に,また, 中学生対象 では,従属 変 数 が『 持 続性の欠 如』 の場合にお いてのみ, 伊藤・神藤 (2003) のモデ ルが促進さ れ る結果となり,両研究で検討されていた従属変数の『持続性の欠如』,『テスト成績』
の う ち 「 自 己 効 力 感 → 自 己 調 整 学 習 → 従 属 変 数 」 の モ デ ル が 促 進 さ れ る と は っ き り, と 確認 で きたのは ,従 属変数が『 持続性の欠 如』の場合 のみ で,松沼(2004) と伊 藤
( ) , 。
・神藤 2003 のモデルの検討をするには 十分なデータとはいえないものとなった
(3)独立変数としての『自己調整学習』または『自己効力感』が『テスト不安』,『MSE』,
『 持 続 性 の 欠 如』,『 テ ス ト 成 績 』 の そ れ ぞ れ に 影 響 を 及 ぼ す か ど う か に つ い て 検 討 した と ころ ,小 学 生の 場 合 ,自 己調 整 学習 は MSE や 学習 に 対す る 持 続性 ,テ ス ト成 績を , また ,自 己 効力 感 は MSE や テス ト 成績 を 高め るこ と ,さ ら に ,独 立変 数 とし て自己調整学習と自己効力感とを比べると,自己調整学習は学習に対する持続性とテ スト 成 績を ,自 己 効力 感 は MSE を より 高 める こ とが 示唆 さ れた 。 ま た, 中学 生 の場 合, 自 己調 整学 習 は MSE や , 学習 に対 す る持 続 性を 高め る こと , ま た, 自己 効 力感 はテ ス ト不 安を 軽 減さ せ た り MSE を 高 め たり す るこ と, さ らに , 独 立変 数と し て自 己調整学習と自己効力感とを比べると,自己調整学習は学習に対する持続性をより高 め, 自 己効 力感 は テス ト 不 安を 軽減 さ せた り MSE を より 高 めた り す るこ とが 示 唆さ れた。小学生及び中学生両方の場合においては,独立変数として自己調整学習と自己 効力感とを比べると,自己調整学習は共通して学習に対する持続性をより高め,自己 効力感は MSEをより高めることが示唆された。
研 究 Ⅱ で は 「 自 己 調 整 学 習 → 自 己 効 力 感 」 と い う 経 過 を 基 本 と し た モ デ ル の 構 成 及 び 介 入, を行い調査を行ったが,実験群と統制群に分けて自己調整学習の介入を行わなかったため,そ の変化が自己調整学習の影響によるものなのかどうかというには研究計画が不十分である。そ の点を補うために,ベースラインの考え方を適用し,介入前の調査は3回行いベースラインの 安 定 性 は 最 低 限 確 認 で き た と 思 わ れ る ( バ ー ロ ー ら 1988)。 し か し な が ら , 介 入 後 の 調 査 は 1回行っただけでデータの安定性という点で確認が不十分である。
以上のような理由から,ベースラインの考え方をあくまでも統計的検定の補助として調査デ ータの分析を行って結果をみた時に,自己調整学習の効果があったのではないかと示唆できる 点がある。介入前後得点に有意差が見られた自己効力感,MSE,復習方略についての介入前 の3つの調査時期の得点には安定性が見られ,他方,介入前後得点に有意差が見られなかった 学習の持続性を始めとする他の項目の介入前の3つの調査時期の得点には安定性が見られなか ったということから,自己効力感,MSE,復習方略については自己調整学習の効果があった と考えることができるのではないかいうことである。今後,介入後のデータの安定性をしっか り確認できるようにするためにも,自己調整学習をさらに進め,その効果を長期的にみる必要 がある。
本 研 究 Ⅰと Ⅱ によ り, 自 己調 整 学 習は ,自 己 効力 感 や MSE を 高 め るこ と , 自己 調整 学 習の 介入の初期の段階では,学習の持続性に対する効果はすぐには現れにくいのではないかという ことが示唆された。また,自己調整学習方略については,下位項目5つのうち復習方略1つだ けに有意な差が見られ,自己調整学習の介入により全てが促進されると考えていたのだが,少 なくとも復習方略だけには効果があったということができる。最適な勉強方法をマスターする には,生徒は今後も修正が必要である方略成分と同様に,成功の原因である方略成分を明らか にするための多くの努力が必要であり,しかも,どの方略も全部の生徒に有効なのではなく,
2 , 3 の 方 略 だ け が 最 初 の 取 り 組 み の 間 に よ く 実 行 さ れ る ( ジ マ ー マ ン , B . ら 2008)。 こ のようなことから,復習方略の場合,方略の実行が自己モニターされその結果がプラスに自己 評価され力を発揮したのかも知れない。
市 川 (1998) は ,日 本の 学校 教育の問題 点の1つと して 学び方の指 導にあまり 重点をおい て いないことを指摘している。このような問題点を克服する方法の1つの考え方として,自己調 整学習を進めることが考えられるのではないだろうか。そして,その自律的な学習を支えてい くために は 「 適応 的要請」を促していくことが重要になってくるとしている(中谷,, 2007)。 教師の支援により,自己調整学習を促進することで,生徒は学習の進歩は自分の責任だと考え るようになり,生徒の学習の基底にある自己モニタリング,目標設定,学習方略の調整のよう
, 。
な 自己調整過程における熟達へと生徒を成長させることができるのではないかと考えている
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謝 辞
本論文を執筆にあたり,ご指導・ご助言を頂いた平岡恭一先生をはじめ諸先生方、また調査
・ 実 験 に 協 力 し て 頂 い た 小 ・ 中 学 校 の 先 生 方 及 び 児 童 ・ 生 徒 の 皆 様 に 心 よ り 感 謝 申 し 上 げ ま す。