• 検索結果がありません。

(1) 来館者の状況

2012 年度の来館者数は、36 万 3 千人と過去 2 番目に少ない人数であった。来館者の状況を 2011 年度と比 べると、有料/無料の別では有料が減少し、個人/団体の別では、個人・団体とも減少した。また、未就学 児/小学生・中学生/高校生・大学生/一般の別では、未就学児のみが増加している。月別でみると、4 月、

8 月、10 月、1 月が増加している。

琵琶湖博物館の来館者数は、開館以来、減少傾向にあったが、2005・2006 年度には、当館の広報経営戦力 に沿った活動の展開、開館 10 周年記念イベントや黄色のナマズの捕獲・展示などの話題性もあり増加に転じ た。しかし、2007 年度には再び減少し、それ以降、「あさ・ひる・ばん 博物館を楽しもう!」や 7・8 月実 施の「節電クールライフキャンペーン」などの取組みによる一時的な回復は見られたが、来館者数の減少傾 向が続いている。

これまでの減少の要因として、当館近隣での大型商業施設や類似施設の相次ぐオープンなどの外的要因が 考えられるが、開館後に蓄積された調査研究・収集品などの成果に基づく展示替えなど、県民にわかりやす く、タイムリーな情報発信の機会がなかったことも大きな要因と考えられる。

(2) 来館者アンケート

2012 年度は博物館リニューアルに関連する来館者・非来館者調査を行ったため、例年年 3 回実施してきた 来館者アンケート調査は年 2 回の実施となった。結果をみると、8 月については、例年に比べて、県内の家 族・親子連れの来館や、常設展示観覧、避暑・省エネを目的とする来館者が多かった。滋賀県が行う節電ク ールライフキャンペーン(県内文化施設の無料開放)の影響と見られる。来館のきっかけとなった情報源は、

例年と同じく、友人・知人、家族・親戚による口コミが多く、2012 年度より移動博物館を調査項目に加えた ところ、わずかではあるが回答があった。来館しての満足度は 85%を越え、「また来たい」が例年並みの 95%

程度、「観察会や体験学習、講座に参加したい」も例年並みの 35%程度の回答があり、来館者の博物館への期 待は高い。不満については、例年のように、駐車場、交通の便、道路案内、レストラン、昼食場所、休憩場 所に対するものが多く、博物館リニューアルの中での対応が期待される。

(3) 広報・戦略

「琵琶湖博物館 2012 年度広報計画」に基づき、タイムリーな広報、ターゲットに応じた広報、口コミを 促す働きかけ、を戦略として効果的な広報を展開した。広報用チラシ・ポスターの配布、ホームページによ る情報発信、広報担当職員による県内外小中学校訪問、ホテル・旅館・道の駅等にポスター・チラシの配布、

大型集客施設での企画展示・常設展示の紹介展示設置などを行ってきたほか、アンケート結果等で有効とさ れている「口コミ」による広報の拡大に向けて、新たな取り組みとして、ツイッターによる情報発信を行っ た。

また、新琵琶湖博物館創造ビジョン策定にあたりマーケット調査を実施した結果、琵琶湖博物館の認知度

については、県内では 7 割近くの人が琵琶湖博物館を認知しているのに対して、県外では琵琶湖博物館を知 らない人が 7 割であった。また、来館回数の経年変化では、「はじめて」が減少し、「4 回目以上」が増加し ていることから、今後さらなるリピーター対応が必要となり、また、ホームページで琵琶湖博物館を認知し た人が5%と低く、ホームページ等インターネットを活用した広報媒体の充実が必要であることがわかった。

新琵琶湖博物館創造ビジョンでは、大人の潜在利用者層、親子利用者層、観光客をターゲットとし、利用 者数向上に向けた取り組みを行うこととし、2013 年度に策定を予定している琵琶湖博物館広報戦略および新 琵琶湖博物館創造基本計画で効果的な広報にかかる戦略を策定する。

(4) 電子情報発信

最近の継続的な問題になっている端末機器群の運用が財政事情により困難になってきていること、発信情 報と双方向情報交換との連携が巧くいっていないことの 2 点については、今年度も大きく変わっていない。

しかし、2012 年度予算で 4 年ぶりの端末機器更新が認められ、年度後半にサーバーおよび端末機器の更新を 行った。

インターネットによる館外向けサービスとして、イベントや研究成果の情報発信、各種質問への対応や収 蔵品データベース、電子図鑑の維持管理を行った。また、ホームページの更新頻度を維持し、情報を迅速か つ効率的に発信できる体制を確保することにより、効果的な情報発信を行うことができた。

近年の情報通信環境の多様化に伴い、さまざまな媒体が用いられるようになってきている。そのため、博 物館諸事業にかかる情報発信も、博物館独自のシステムを利用したインターネットサイトだけではなく、新 たな媒体の利用を考慮しながら戦略的に運営することが求められている。

(5) 施設整備

これまでに必要な修繕、更新を行ってきたものの、建築後 15 年以上が経過し、設備機器の多くが耐用年 数の末期をむかえている。また C 展示室 2 階の天窓より雨漏りが発生し、防水処理の再施工を行ったが、外 装においても修繕を検討すべき時期を迎えた箇所が散在してきており、建物全般にわたって注視していく必 要がある。

(6) 来館者サービスの向上

当館の来館者はリピーターの方の利用が多いことから、2004 年 4 月より 1 年間に何回でも観覧できる年間 観覧券(年間パスポート)の販売を開始し、2012 年度では 243 人(対前年 27 人減)に購入があり、延べ 1,120 回の来館があった。さらに 2009 年 11 月から行っている年間観覧券購入時に常設展示観覧招待券を1枚進呈 するサービスも継続しており、顧客の定着化を図りつつ、新規顧客開拓への呼び水になるものとして、両制 度とも引き続き取り組んでいきたい。

また、関西元気文化圏推進協議会が主催する「関西文化の日」事業への参加を行い、11 月 17・18 の両日、

常設展示観覧料を無料とする取り組みを実施し 3,701 人の来館があった。

(7) 国際交流活動

当館は、国立民族学博物館とともに、国際協力機構(JICA)からの委託研修事業「博物館学集中コース」

を実施し、今年度は計7カ国 10 名の研修員の指導を行った。

また、当館では、この研修の実施以外にも、海外からのさまざまな団体による視察や研修を受け入れてお り、今年度は 38 件に対応した。さらに今年度は、フランス国立自然史博物館との協定を更新するとともに、

来年度開催される湖南省友好提携 30 周年記念事業の一環として実施する湖南省の博物館との交流連携の構 築に向けての準備を行った。

(8) ミュージアム活性化推進事業

文化庁の助成事業である、平成 24 年度文化芸術振興費補助金(文化遺産を活かした観光振興・地域活性 化事業)の助成を受け、滋賀県ミュージアム活性化推進委員会の加盟館として、博物館および文化財を観光 資源として活用するため、琵琶湖体験クルーズ「琵琶湖はおいしい面白い」を開催した。体験クルーズでは 琵琶湖に浮かぶ沖島に上陸し、琵琶湖の魚を食べ、漁師の指導により地曳き網体験を行うとともに、沖島の 文化に触れることができた。連続講座「琵琶湖 自然と文化」は全 5 回開催し、異なる分野の方々にご講演を いただき、滋賀県の魅力ある文化を多角的な視点で見つめる機会とした。この他、海外からの利用を促進す る目的で、滋賀の文化遺産を紹介した外国語版PRビデオを製作するとともに、草津水生植物公園みずの森 と協力して、烏丸半島を紹介した外国語版リーフレットを作成した。こうした機会を契機に、滋賀の魅力を 多くの施設や機関と協力して発信することができたと考えている。

(9)新琵琶湖博物館創造

琵琶湖博物館は、「湖と人間」の新しい共存関係を築くことを目的に平成 8 年に開館した。以来、環境学習 の拠点として、展示・交流活動を通じて、琵琶湖の価値を再発見し、琵琶湖や地域に関心をもつ人づくり・

地域づくりに努め、着実に成果をあげてきた。

この間、新たな環境課題が顕在化し、また、暮らしと環境に対する県民の考え方が多様化し、地域での取 り組みも活発化している。しかしながら当館で進展した調査・研究、蓄積した知見、収集された多くの資料 や標本を伝える大規模な展示更新が行われていない。

県政の課題や高度化・複雑化した情報をわかりやすく知りたい、体験・交流の機会を求める県民のニーズ に応え、琵琶湖博物館が拠点施設として次の時代に向けて「湖と人間」のこれからのかかわりを問い続けて いくために、展示と交流の情報発信力を高めるとともに、次世代を担う人材を育成する交流機能を充実する 必要がある。

こうしたことから、開館 20 周年にあたる 2016 年を目途に、展示交流空間の再構築を行うため、2012 年度 に新琵琶湖博物館創造準備室を立ち上げ、2013 年 3 月にリニューアルの方向性を示す「新琵琶湖博物館創造 ビジョン」を策定した。

関連したドキュメント