第 4 章 課題の習熟による行動パフォーマンスの変化が前頭部 θ
4.3. 結果
4.3.3. 主観的反応
主観的課題難易度の結果を,Figure 4.16,4.17,4.18,4.19に示す。1要因分散分析の結 果,主効果が有意であった(F (4, 36) = 34.84, p < .001, 𝜂𝑝2 = .79)。多重比較の結果,1回目 と2回目の得点が3回目より高かったが(ps < .001),2回目と3回目の得点に差はみられ なかった。また,各測定とRT,STの比較では,1回目の得点がRT,STより高かった(ps
< .001)。2回目の得点はRT,STともに差はみられなかった。3回目の得点はRTより低か
ったが(p < .05),ST とは差はみられなかった。また,RTより ST の得点が低かった(p
< .05)。
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Figure 4.4. 測定ごとの総課題実施時間の平均と標準誤差。エラーバーは
標準誤差を示す。
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Figure 4.5. 測定ごとの解答時間の平均と標準誤差。エラーバーは標準誤差を示す。
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Figure 4.6. 解答時間における1回目,Rule task,Skill taskの解答時間の平均と 標準誤差。エラーバーは標準誤差を示す。
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Figure 4.7. 解答時間における2回目,Rule task,Skill taskの解答時間の平均と 標準誤差。エラーバーは標準誤差を示す。
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Figure 4.8. 解答時間における3回目,Rule task,Skill taskの解答時間の平均と 標準誤差。エラーバーは標準誤差を示す。
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Figure 4.9. 測定ごとの正答率の平均と標準誤差。エラーバーは標準誤差を示す。
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Figure 4.10. 正答率における1回目,Rule task,Skill taskの解答時間の平均と 標準誤差。エラーバーは標準誤差を示す。
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Figure 4.11. 正答率における2回目,Rule task,Skill taskの解答時間の平均と 標準誤差。エラーバーは標準誤差を示す。
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Figure 4.12. 正答率における3回目,Rule task,Skill taskの解答時間の平均と 標準誤差。エラーバーは標準誤差を示す。
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Figure 4.13. 測定ごとのθパワーの平均と標準誤差。エラーバーは標準誤差を
示す。
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Figure 4.14. θパワーにおける1回目,RT,STの平均と標準誤差。
エラーバーは標準誤差を示す。
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Figure 4.15. θパワーにおける2回目,RT,STの平均と標準誤差。
エラーバーは標準誤差を示す。
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Figure 4.16. θパワーにおける3回目,RT,STの平均と標準誤差。
エラーバーは標準誤差を示す。
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Figure 4.17. 測定ごとの主観的課題難易度得点の平均と標準誤差。エラーバー
は標準誤差を示す。
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Figure 4.18. 主観的課題難易度得点における1回目,Rule task,Skill taskの 平均と標準誤差。エラーバーは標準誤差を示す。
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Figure 4.19. 主観的課題難易度得点における2回目,Rule task,Skill taskの 平均と標準誤差。エラーバーは標準誤差を示す。
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Figure 4.20. 主観的課題難易度得点における3回目,Rule task,Skill taskの 平均と標準誤差。エラーバーは標準誤差を示す。
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4.4. 考察
第4章では,単一の課題を習熟する過程における行動パフォーマンスの変化が前頭部θ 帯域に与える影響について検討を行った。そのため,第2章で作成した暗算課題の内,知 識ベースの課題であるKTを実験課題として,練習期間を含めた3回の測定を実施し,そ の習熟の過程における行動パフォーマンスの変化と前頭部θ帯域の活動を経時的に測定し た。
行動パフォーマンスについて,総課題実施時間および解答時間は,1回目,2回目,3回 目の順で短縮した。これらの結果は,実験課題として用いたKT の内容について,測定ご とに習熟していったことを示唆する。また,解答時間における各測定(1回目,2回目,3
回目)とRT, STの比較では,1回目の解答時間はRT,STより長かったが,2回目の解答
時間はRTと同程度になり,3回目の解答時間はRTより短かった。しかし,3回目の解答 時間においてもSTより短縮はしなかった。KTは知識ベース,RTはルールベース,STは スキルベースの特徴に基づいた課題であるため,実験参加者における認知制御は,知識ベ ースからルールベースへと移行し,ルールベースとスキルベースの中間あたりまで到達し たと考えられる。
正答率については,1回目より2回目,3回目の正答率が上昇したが,2回目と3回目の 正答率には差がみられなかった。また,各測定とRT,ST の比較では,1 回目の正答率は RT,STより低かったが,2回目以降は差がみられなくなった。SRKモデルにおいて,ルー ルベースとスキルベースの認知制御は成功を保証されているルールを保持していることを 前提としているため,これらの認知制御では感覚入力から動作までの時間は異なるが,と もに正しい行動を実行できるはずである。第4章では,上述の解答時間の結果から,2回 目の測定時には認知制御がルールベースに移行していたと考えられるため,2 回目以降の 測定において正答率が9割を超えていたことは成功を保証されたルールを獲得していたこ
107 とを意味すると考えられる。
主観的課題難易度については,1回目では,“非常に難しかった”から“かなり難しかっ た”の間で評価されていたが,2回,3回目では,“簡単だった”から“かなり簡単だった”
の間まで評価が下がった。この結果は,1回目の測定時にはKTの内容を難しく感じたが,
2回目と3回目の測定時には1回目の測定時と比較して簡単に感じたことを意味する。ま た,各測定とRT,ST の比較について,1回では課題の内容をRT, STより難しく評価し ていたが,2回目ではRT, STと同程度の評価となり,3回目ではRTより簡単に評価して いた。したがって,実験参加者は,3回目の測定時にはKTの課題難易度をSTと同程度に 感じていたと考えられる。一方で,測定内(1回目,2回目,3回目)の評価では2回目と 3回目の評価に差がみられなかったことと,前述した正答率の結果が2回目以降は9割を 超えていたことを考慮すると,行動の遂行に関するルールを獲得した場合,課題に対する 主観的な難易度の評価はルールベースとスキルベースの間であまり変化しない可能性もあ る。この点については,今後検討する必要があるだろう。
前頭部θ帯域の活動については,1回目,2回目,3回目の順でθパワーが減少した。こ の結果は,前述の行動パフォーマンスの結果と照らし合わせて解釈すると,前頭部θ帯域 の活動が SRK モデルのフレームワークと一致して増減していくことを示唆する可能性が ある。具体的には,1回目の測定時は,実験参加者は,KTの内容に不慣れであったことか ら,知識ベースの認知制御を必要としたために前頭部θ帯域の活動が増大したが,2 回目 の測定時には,練習によりKT の内容に関するルールを獲得したため,ルールベースの認 知制御に移行したことで前頭部θ帯域の活動が減少したと考えられる。そして,3 回目の 測定時では,さらに練習を重ねたことによりルールベースの認知制御がスキルベースの認 知制御に近づいた,つまり認知制御が意識的なものから無意識的なものに近づいたことで 前頭部θ帯域の活動がより減少したと考えられる。ただし,2 回目と3回目のθパワーの 減少は有意傾向である点には留意する必要はある。この解釈は,エラー検出とモニタリン グによるACCの活動の増大(Banich, 2009; Milham et al., 2002)と練習によるACCの活動
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の減少(Milhan et al., 2003)と一致する。また,前頭部θ帯域と練習の効果を検討した研究
においても,本研究と同様に練習に伴う前頭部θ帯域の活動の減少が報告されており
(Jaquess, Lo, Oh, Lu, Ginsberg, Tan, Lohse, Miller, Hatfield & Gentili, 2018; Pathania et al., 2019), これらの知見は,本研究の結果を強く支持すると考えられる。
以上のことから,課題の習熟に伴い行動パフォーマンスが上昇すると,前頭部θ帯域の 活動は減少していくことが示唆された。
本研究の意義は,こうした行動パフォーマンスの変化と前頭部θ帯域の関係をSRKモデ ルのフレームワークに基づいて検討したことにある。SRKモデルのフレームワークは,行 動のパフォーマンスに応じて感覚入力から実際の動作までの認知プロセスが知識ベース,
ルールベース,スキルベースの順で短縮するという人間における認知制御の自動化を段階 的に表している。本研究の結果は,こうした段階的な認知制御の自動化の過程で脳活動が どのように関連しているかを示す一助になると考えられる。
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4.5. 結論
第4章では,課題の習熟による行動パフォーマンスの変化が前頭部θ帯域の活動に与え る影響について,SRK モデルに基づいた検討を行うため,男性 10 名を対象として実験を 行った。そのため,第2章で作成したSRKモデルの認知制御レベルに基づいた暗算課題の 内,知識ベースの課題であるKTを実験課題として,練習期間を含めた3回の経時的な測 定を実施して検討を行った。また,第4章では,主観的課題難易度についても調査を行っ た。
その結果,KTのパフォーマンスについて,総解答時間,解答時間は,1回目,2回目,
3回目の順で上昇していくことが示された。正答率は,1回目より2回目,3回目において 上昇し,2回目と3回目の間に差はみられなかった。各測定とRT,ST との比較において は,解答時間では,1回目の解答時間がRTより長かったが,2回目ではRTと同程度とな り,3回目ではRTより短縮した。正答率では,1回目の正答率がRT,STより低かったが,
2回目以降は差がみられなくなった。また,前頭部θ帯域の活動は,1回目,2回目,3回 目の順で減少していくことが示された。さらに,主観的課題難易度については,1回を2回 目,3回目より難しく評価していたことが示されたが,2回目と3回目の間に差はみられな かった。RT,ST との比較では,1回目の課題難易度を RT, ST より難しく評価していた が,2回目ではRTと同程度に評価し,3回目ではRTより簡単であると評価していた。
これらの結果をSRKモデルの認知制御レベルに基づいて解釈すると,実権参加者の認知 制御は,知識ベースからルールベースへと移行し,最終的にはルールベースとスキルベー スの中間あたりまで移行していたと考えられる。また,前頭部θ帯域の活動は,行動パフ ォーマンスが上昇するにつれて減少していくことが示された。これらの結果は,練習を重 ねるにつれて実験課題に対する認知制御の必要性が低下したことで,前頭部θ帯域の活動 も低下することを示唆すると考えられる。