6-1 結論
本研究では、加振レーダ計測の移動計測システムを作製し、複数のレーダ波形をマイグレ ーション処理した後、鉄筋断面イメージから振動変位推定を行う手法を提案し、振動変位の 計測位置、スキャン方向等の最適化を行った。また、これまで、1本のRC供試体に対して、
鉄筋腐食中の波形ベースの振動変位推しか議論していなかったが、より現実に近いメッシ ュ状のRC供試体に対して、イメージングベースの振動変位推定を行い、腐食によるイメー ジの違いについて議論した。
第1章は序論であり、RC構造物中の鉄筋腐食評価における加振レーダ計測の利点、現状 の問題点にふれ、研究目的を述べた。
第2章では加振レーダ法の原理について述べ、加振レーダ法によりRC構造物内の鉄筋の みを振動させることで、その振動変位の計測が行えることできることを確認した。また、マ イグレーション処理の原理について述べ、イメージングベースの鉄筋振動変位推定につい て述べた。
第 3 章では実験的に RC 構造物内の鉄筋の振動変位の計測を行うために構築した計測シ ステムや、システム内に用いられている機器、またイメージングベースの振動変位推定を行 なうための移動計測システムの構築について述べた。
第 4 章では加振レーダ計測の移動計測をし、得られたレーダプロファイルからイメージ ングベースの振動変位推定の方法を述べた上で、比誘電率によるイメージングの影響を考 察した。その後、イメージングをする際の移動計測のスキャン方向において鉄筋に対して直 交する方向、平行する方向を比較し、実際のRC構造物に近いメッシュ状に配筋された供試 体における計測箇所の評価を行なった。
第 5 章ではメッシュ状に配筋された供試体で電食実験を行い、積算電流に応じて電食段 階を分けた後、移動計測を行なった。各電食段階後でイメージングベースの振動変位を算出 した後、波形ベースの振動変位推定と比べイメージングベースの振動変位推定でより高精 度に鉄筋腐食評価できる可能性を示唆した。
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本研究により、波形ベースの振動変位推定と比べ高精度に振動変位推定できる可能性が示 唆できた。また、移動計測において、鉄筋中央部を鉄筋に直交するようにスキャンするほ うがばらつきの少ない振動変位推定が可能となることも示した。また、実構造物に近い供 試体で電食実験を行い、腐食により複雑にドップラ成分が発生し、波形ベースの振動変位 推定では精度が悪化する可能性があることも示した。一方、イメージングベースの振動変 位推定ではそれらの影響が抑圧されることで、精度よく鉄筋腐食評価できる可能性を示唆 した。
6-2 今後の課題
加振レーダ計測の改善
本論文で使用したシステムを用いた場合、かぶり5.5 cmまではマイグレーションをした 後に鉄筋イメージができることがわかったが、ドップラ成分のイメージング画像ではSN比 の低下が見られ、5.5cm以上のかぶりの場合イメージングできなくなる可能性がある。
実際の構造物ではかぶりが5 cm程度かそれより深いものが多いとされている。そのため、
励磁コイルの巻数を増やし、流すことのできる電流を増やすことで加振力を強くし、より深 くまで電磁力が伝わるよう改良する必要がある。
マイグレーション処理時の比誘電率の関係
マイグレーション処理時に比誘電率を計測ごとに設定をしているが、実際の供試体では 深さによって比誘電率が変化するため、深さによって比誘電率を変えてマイグレーション 処理をすることでより高精度にイメージングを行なうことができる。そのため、供試体の深 さと比誘電率の変化を調べマイグレーション処理に適用する必要がある。
移動計測の2次元化
現在の計測では1次元で行い、2次元の断面イメージングで振動変位を算出している。縦、
横2次元の移動計測をし、3次元のマイグレーション処理をすることで鉄筋振動変位をより 詳しく算出できる。そのための、移動計測システムの改良、マイグレーション処理のアルゴ リズムの改良を行なう必要がある。
計測時間の短縮
現在の移動計測では、1計測に3分ほど時間がかかり、50点の移動計測だと 2時間ほど の時間を必要とする。これを改善するためパルスドップラ計測の開発をすることで時間短 縮ができると考えられる。
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参考文献
1) 三輪空司,栗田伸幸,碓氷淳:励磁コイルを用いた加振ドップラレーダによるコンクリ ート内振動体の選択的イメージング,コンクリート工学年次論文集, Vol. 38, No.1, pp.2073-2078, 2016.7
2) 三輪空司,本多秀聡,小澤満津雄,栗田伸幸:鉄筋腐食評価のための加振RCレーダ法 による鉄筋振動変位計測,コンクリート工学年次論文集, Vol. 39, pp. 1777-1782, 2017.7
3) 佐藤源之:地中レーダによる地下イメージング, 電子情報通信学会論文誌C, Vol. J85-C, No.7, pp.520–530, 2002.7.
謝辞
本研究を行うにあたり基礎から応用にわたる丁寧なご指導、ご協力を賜りました群馬大 学理工学府電子情報部門、三輪 空司 准教授に心より感謝申し上げます。
本研究を行なうにあたり懇切丁寧なご指導、ご協力を賜りました群馬大学理工学府電子 情報部門、本島 邦行教授、山越 芳樹教授に深く感謝申し上げます。
本研究を進める上で、供試体の打設にご協力いただきました群馬大学理工学府環境創生 理工学部門、小澤 満津雄 准教授、及び、鹿島建設、技術研究所 親本俊憲 氏に心よ り感謝申し上げます。
本研究を進める上で、計測システム作成にあたり貴重なご意見を賜りました群馬大学、
遠坂 俊昭 客員教授に心より感謝申し上げます。