8.1 本研究の成果
植物は室内空気汚染物を分解し,空気を浄化する能力を有している.NASA が初めて観葉植物の空気浄化能力を発表して15年が過ぎた.しかしながら,こ れまでに空気浄化能力を評価する適当な指標が示されていなかった.本研究は,
植物固有な空気浄化能力を定量的に評価する指標を導出することを目的として 行った.本来の研究目的とその目的を達成する過程で得られた成果を以下に示 す.
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植物の空気浄化過程をガスセンサを用いることにより連続測定可能 にした.
植物の浄化システムの応答が一次遅れ系であることを明らかにした.
これにより,Wolverton らの初期濃度依存性を排除し,植物固有な 空気浄化能力を定量的に評価する指標を提案した.さらに,種類や 大きさの異なる植物においてもその応答が一次遅れ系であることを
確認した.また,様々な汚染物に対する応答も一次遅れ系であるこ とを確認し,提案指標の妥当性を示した.
土壌の種類,温度,照度が浄化能力に与える影響を明らかにした.
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10 種類の代表的な観葉植物のホルムアルデヒド除去能力を明らか にした.
サイズの異なるポトスの浄化特性を測定し,ホルムアルデヒドに対 する除去能力は総葉面積が大きい程高く,若い葉は単位面積当たり の除去能力が高いことを明らかにした.
分子量の大きいトルエン,キシレンは小さいホルムアルデヒドに比 べ除去に時間が掛かることを明らかにした.
活性炭鉢植物のトルエン,キシレンに対する除去効果が非常に高い ことを明らかにした.
提案した評価法は,これまで用いられていた汚染濃度に依存する評価法と異 なり,植物固有な浄化能力を評価可能にするもので,能力評価のための測定回 数を飛躍的に減らすことができる.空気浄化ダイナミクスの線形領域ではある が,本評価法の提案により浄化能力評価に一つの指針を与えることができた.
本評価法がこの分野における研究の加速に貢献し,人々の健康増進やシックハ ウス症候群など室内空気汚染による症状改善の一助となれば幸いである.
8.2 検討事項と今後の課題
本節では,これまで記載した内容以外の検討事項と今後の課題について述べ る.
6.2節で評価した 10種類の観葉植物鉢のホルムアルデヒド除去能力と二酸化 炭素吸収能力の関係を調べた結果を図8.1に示す.二酸化炭素吸収能力(tw)は,
チャンバー内の濃度500ppmの場合において植物設置により250ppmまで減少 する時間を表している.ホルムアルデヒド除去能力と二酸化炭素吸収能力には 非常に強い相関があり,相関係数は0.88であることが明らかとなった.
本論文ではチャンバー内での基礎実験についてのみ言及してきたが,これま で実際の労働環境に植物を設置してその効果を調べている.ここではオフィス ビルの一角にある憩い空間に植物を設置した応用事例について述べる.図 8.2 に部屋のレイアウトを示す.A~Cが植物の設置箇所で,ベンジャミンとポトス,
スパティフィラム,アレカヤシが植えられている.測定は,TVOC センサ(新 コスモス電機製,XP-339V)とニオイセンサ(新コスモス電機製,XP-329)を 用いて計測した. 測定結果を図8.3に示す.TVOCに対しては74%,ニオイに 対しては 68%という高い除去率を示した.チャンバー内の実験では,汚染物の 注入は 1 回のみであるが,実環境においては連続的に汚染物が放出される.こ のような環境においても植物は高い浄化能力を持っていることを確認した.
0 10 20 0
2 4 6 8
Carbon dioxide (t
w)
F o rm a ldehyde ( ) T
r = 0.88
図8.1 ホルムアルデヒド除去能力と二酸化炭素吸収能力の関係
Bench Bench
Bench Desk
TV
Rack
B2
C B4
A A
A
B3 B3
B1
Table
5.53 m
6.76 m
Area : 37.4 m2 Capacity : 100.5 m3
Entrance
Bench Bench
Bench Desk
TV
Rack
B2
C B4
A A
A
B3 B3
B1
Table
5.53 m
6.76 m
Area : 37.4 m2 Capacity : 100.5 m3
Entrance
図8.2 憩いの空間のレイアウト
0 100 200 300 400 500
TVOC Odor
Removal rate
TVOC : 74.32 % Odor : 68.48 % setting
TVOC
Odor
Aug.20 10am
Aug.20 4pm
Aug.21 10am
Aug.22 4pm
Aug.23 4pm 0
100 200 300 400 500
TVOC Odor
Removal rate
TVOC : 74.32 % Odor : 68.48 % setting
TVOC
Odor
Aug.20 10am
Aug.20 4pm
Aug.21 10am
Aug.22 4pm
Aug.23 4pm 0
100 200 300 400 500
TVOC Odor
Removal rate
TVOC : 74.32 % Odor : 68.48 % setting
TVOC
Odor
Aug.20 10am
Aug.20 4pm
Aug.21 10am
Aug.22 4pm
Aug.23 4pm 0
100 200 300 400 500
TVOC Odor
Removal rate
TVOC : 74.32 % Odor : 68.48 % setting
TVOC
Odor
Aug.20 10am
Aug.20 4pm
Aug.21 10am
Aug.22 4pm
Aug.23 4pm
Instrument reading
図8.3 植物設置による除去効果
今後の目標として,植物の空気浄化作用を利用した最適な室内空間設計が挙 げられる.実環境における応用事例について前述したが,空気浄化のために設 置すべき植物鉢の種類や鉢数を明確に示すに至っていない.これらを示すこと は,植物による空気浄化作用の一般社会への応用・浸透を促進するものである.
本評価法で導出した植物の浄化能力は,植物に固有なもので実環境においても 変らないため室内空間設計に適用可能である.実環境においては,連続的に汚 染物が発生し,さらに温度や湿度,風などの影響により室内濃度が変化する.
このため,導出した植物の浄化能力を適用し室内空間設計を行うためには,変 化する環境による汚染物発生量の同定が課題である.今後も,本評価法を用い た室内空間設計の実現を目指し検討を重ねることが必要である.