5.1 本論文のまとめ
本論文は、筆者の業務経験を元に最もプリミティブな問題である「情報の整理」に ついての筆者の見解および、その見解を元に作成した統合型の情報整理システムの構 築について述べると共に、実際にシステムを運用した試用実績と評価実験について述 べた。
第1章では、システムを構築するに至った背景と目的について述べた。現代のコン ピューター環境において情報の整理が困難なのは情報の量の増大だけでなく、「情報 の規格化」と「ポケットひとつの法則」の崩壊が原因であり、このふたつを達成でき ない限り情報の整理は困難だというのが筆者の見解であった。
第
2
章では、コンピューターデスクトップ環境での情報の整理についての研究の推 移と、本研究と関連すると思われる先行研究について述べた。そこでは情報の整理に ついてひとつのコンセプトが「銀の弾丸」となるのではなく、様々な要素の統合が必 要であるというのが、現在の見解であり、その見解と筆者の見解である「情報の規格 化」と「ポケットひとつの法則」を元にシステム構築のための8
つの指標を設け、シ ステムの位置づけを明確にした。第
3
章では、以上の見解を元に構築した統合型の情報整理システムの構築とシステ ムの詳細について述べた。第
4
章では、作成したシステムを試用した実績と評価実験について述べた。システ ム稼働期間中の本システムの利用状況と実験、そしてアンケートと聞き取り調査の分 析から以下の考察を得た。① 情報の収集から整理までをサポートし、様々な観点を元に情報の整理を行うこと を可能にした本システムは有効に機能していたと考えられる。特に情報を色別に 管理することを可能にし、チャートを用いて情報へのアクセスを可能にした機能
57
は有効であったと言える。
② 情報の収集、整理だけにとどまらず、過去に調べた内容の列挙および、カードに よる情報の配置は登録時に気付かなかった周辺情報との関連を想起させるため 有効であったと考えられる。
③ 単なる個人での情報収集、整理にとどまらず、情報を共有する機能を提供したこ とは有効であったと考えられる。共有機能によって被験者は個人での情報収集の 範囲外の情報を閲覧することができるようになるだけでなく、楽しみながらシス テムを利用できるようになった。
④ インターネットから自由にアクセスできるサービスとして提供したことは有効 であったと考えられる。インターネットからアクセスできることによりシステム の利便性が増す他、学校で調べて登録した内容を、学校にいなくても就職活動に 役立てることができるなど場所や用途に限定されない使い方ができるようにな った。
以上のように、情報の収集から整理、関連情報の閲覧、更にはユーザー間での情 報の共有を統合的にサポートした本システムは有効に機能していたと考えること ができる。ただし、現状では用途のほとんどが
URL
に限定される他、ブラウザか らのブックマーク登録機能が提供されていないため、RSS
を使用しない利用者には 弱冠操作性に問題があり、グループ機能としてもグループウェアとして必要なメー ルやチャットなどの他、リアルタイムでユーザーがやりとりをする仕組みが提供さ れていないなど今後の課題とすべき問題も多く見つかることとなった。58
5.2 今後の課題と展望
5.2.1 今後の課題
サーバーでの一括管理によるブックマーク管理システムとしての「ポケットひとつ の法則」は保たれているが、ファイルの扱いには難があり、ダウンロードを行う今の 形式では、「規格化」だけでなく「ポケットひとつの法則」も崩れる要因となってい る。その為、ローカルにあるファイルとサーバー上にあるファイルの「位置」を意識 させない真の意味での透過的な仕組みの構築が急務である。ただし、現状の
Flash
を用いた方法のみではこの仕組みを達成することが困難なため、何らかの代替措置が 必要と思われる。また、先述したように現状ではグループウェアとしても肝心なメールやチャットを 行うことができない。メールが管理から外れていることは「情報の整理」の点から言 っても大きな欠陥であるとも考えられる。現代においてメールは重要な「情報」であ り整理が求められるもののひとつである。メール機能の実装と共に、被験者からも要 望が上がった「カードを用いたインタラクティブなコミュニケーション」が今後のシ ステムに必要であると考えられる。
5.2.2 今後の展望
本システムは、創発プロセスのうち、
2
つ目に当たる「関連する情報の収集とセグ メント生成」に特化した仕組みであり、後の「構造化と理解、解決」更には「文書化」などをサポートするシステムとの連携は特に有効と考えられる。現在のところ分散協 調型
KJ
法支援ツールであるkusanagi[20]
との連携は達成しており、PowerPoint
へ の出力も可能となっている。管理した情報を如何に構造化し、表現するかはこれから の大きな課題となっている。(
※17)
59
注釈
※
1
『「超」整理法』P.87
※
2
『「超」整理法』P.7
著書の中で野口は「整理とは、内容や重要度を考慮して分類し、秩序付けること であり、整頓とは、形式的に片付けて見た目を綺麗にすることである。」として いる。
※
3
『「超」整理法』P.212
※
4 CHI 1998, ACM Press,p.43
Bookmarks are used to share Web resources with third parties. A group of users working on the same project will mail each other bookmarks in order to collaborate. Users share bookmark based on individual expertise.
※
5 URL
だけを入力して「get
」ボタンをクリックすることでタイトルを自動的に取得することもできる。これは実験後に被験者の意見を反映して追加された機 能である。
※
6
今のところ、最初のタグ以外は殆ど活用できていないのがひとつの懸念材料で ある。被験者からグループの伝言板に寄せられた意見に、「はてなブックマーク のようにタグクラウド形式にしてはどうか」という意見もあった。※
7
ファイルはサーバー上にアップロードされる。※
8 RSS
については「付録1:RSS
について」を参照※
9
この方法も階層を作る必要があるため好ましくないと考えられる。RSS
サイトの登録も
Folksonomy
形式にすることも考えている。※
10
この場合、検索用のタグにはデフォルトで、フォルダの名称が使用されるよ うになっている。例えば「知識科学」というフォルダの下の「情報デザイン」と いうフォルダにカテゴライズされたサイトから得たカードには、デフォルトで「知識科学,情報デザイン」というタグが付いている。
※
11
ブログ検索機能で取得した情報にはデフォルトで検索条件と同じタグが付与 されることになっているので、過去に登録した情報もこの機能で発見できるよう になっている。※
12
コメント機能は被験者の要望により拡張された。拡張前は、1
情報につき1
60
つしかコメントが付けられず、専ら個人使用に限定されていた。
※
13
このグループのチャート画面の様子は「付録2
:グループのチャート」を参 照のこと※
14
聞き取り調査の際に、「生活が変わった」という表現をしている被験者もいた。今まではニュースを確認するときには
yahoo
ニュースを主に見ていたのが、RSS
でニュースなどを収集するほか、管理機能も充実しており、すぐに振り返ること ができるので主に本システムを使用することになったということだった。※
15
聞き取り調査の内容はIC
レコーダーに記録し、後の分析に用いた。聞き取り 調査に使用した統計画面については「付録3
:統計画面」参照のこと※
16
システムを立ち上げる際に、「杉山研究室グループ」というグループを作成し、試しに杉山研究室の過去の修士論文を閲覧できる「杉山研究室論文マップ」を作 成していた。サーバー上に置いておいてもなかなか閲覧されない為、こうすれば アクセスしやすくなると考えたからである。この被験者はそのマップから取得し たファイル
(PDF)
をファイルとは気付かずに使用していた為、統計上に表れる「フ ァイル」がどうしても思い出せなかったようだった。杉山研究室のマップは「付 録4
:杉山研究室論文マップ」を参照のこと。※
17 kusanagi
との連係については、「付録5:kusanagi
との連係」参照のこと。61
参考文献
[1]
野口悠紀雄:「超」整理法,
中公新書,1993 [2]
梅棹忠夫:知的生産の技術,
中公新書,1969
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[5] Scott Fertig; Eric Freeman;David Gelenter, “Finding and reminding reconsidered”, ACM SIGCHI Bulletin, 28(1), 66-69, 1996
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[7] David K. Gifford; Pierre Jouvelot; Mark Sheldon; James O'Toole, Semantic file systems, In 13th ACM Symposium on Operating Systems Principles, October,1991
[8] Scott Fertig; Eric Freeman; David Gelernter; , Lifestreams: An Alternative to the Desktop Metaphor, Proceedings of ACM SIGCHI96 Human Factors in Computing Systems, 1996
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[11] David Abrams; Ron Baecker; Mark Chignell, Information archiving with bookmarks: Personal web space construction and organisation, In Proc. CHI 1998, ACM Press,41-48, 1998
[12] Jun Rekimoto , Time-Machine Computing: A Time-centfic Approach for the Information Environment, ACM UIST' 99,1999
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62
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:http://del.icio.us/
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[20]
板坂元:考える技術・書く技術,
講談社現代新書,1973
[21]
由井薗隆也;西村真一;宗森純;杉山公造,大画面共同作業インターフェースを持つ発想支援グループウェア