7.1 本論文のまとめ
本論文では,ソーシャルメディアにおける位置情報付きの発言を解析することで,ユー ザ間の類似度を推定する手法を提案した.TwitterやFacebookなどソーシャルメディアに おいてはユーザの交友関係が大きな価値を生むため,ユーザ同士の関係や趣味などが似て いるユーザを発見する手法が重要である.本研究では,位置情報付きの発言から類似ユー ザを推定するGLoBES (Grouping Algorithm Based on Location of Micro-Blog Entries)を構 築し,実世界のユーザの行動パターンを反映した類似ユーザ推定手法を実現した.本論文
ではGLoBESを設計,実装し,評価を行った.GLoBESは,発言取得モジュール,発言解
析モジュール,クラスタリングモジュール,類似度計算モジュール,グループ情報取得モ ジュールによって構成される.ソーシャルメディアの発言を解析することで類似ユーザを 推定し,グループ情報として位置情報共有アプリケーションから利用可能にした.GLoBES は従来の類似ユーザ推定手法と異なり,GPSロガーなど特殊な機器を必要としないため,
既存のソーシャルネットワークにおける全世界のユーザ情報を活用することが可能である.
また,推定した類似ユーザ情報は再び既存のソーシャルネットワークに対して適用可能で あるという点でも有益である.
本研究の成果により,行動パターンや興味を持つ場所が似ているグループ情報がアプリ ケーションから利用可能になれば,グループの人数や属性に応じた情報提供や広告配信な ど,新たなサービスの可能性が生まれると考えられる.これはあらゆるユーザの位置情報 が取得でき,誰でもどこでもネットワークにつながるようになるであろう今後の社会にお いて,大きな利益をもたらすものである.
7.2 今後の課題
今後の課題としては,より適切な評価基準を定めること,より正確な類似ユーザ推定の ために必要なパラメータを検証すること,グループ情報を用いたアプリケーションの構築 の三つを挙げる.第一に,実世界の行動パターンや興味を持つ場所が似ていると定量的に 評価するためのより正確な基準を設定することが求められる.現状のアンケートや既存の ソーシャルグラフを用いた評価手法では,実際の行動パターンを反映した推定結果の評価 としては不十分な点も残されている.
第二に,より正確な類似ユーザ推定のために,解析に使用するパラメータの調整を行う ことが求められる.現在は発言の位置情報のみを使用し,3つの粒度のクラスタに分割し ている.改良案としては,発言の時間帯や発言内容など,より詳細なデータを用いて解析 を行うアプローチと,クラスタ粒度の分割数やそれぞれの重み付けについて適切な値を検 証するアプローチが考えられる.
最後に,GLoBESを用いて計算したグループ情報を実際に活用するアプリケーションを
作成することを課題として挙げる.背景となる位置情報取得機能付き端末とソーシャルメ ディアは今後ますます普及していくと考えられる.今後,グループ情報を用いたアプリケー ションを実際に作成し,将来の社会における位置情報技術の活用に対して貢献することを 目指している.
謝辞
本研究を進めるにあたり,御指導を賜りました,慶應義塾大学環境情報学部 教授 徳田 英 幸博士に深く感謝致します.また,貴重な御助言を頂きました慶應義塾大学環境情報学部 准教授 高汐 一紀博士,慶應義塾大学環境情報学部 専任講師 中澤 仁博士に感謝致します.
常日頃からご指導ご鞭撻を賜り,研究方針,論文執筆について大変多くの御助言を頂き ました,間 博人氏,斉藤 匡人氏,森 雅智氏,本多 倫夫氏,金澤 貴俊氏に,深く御礼申し 上げます.また,半学半教の精神でお互いを高めあった,徳田・村井・楠本・中村・高汐・
重近・バンミーター・植原・三次・中澤・武田合同研究プロジェクトの皆様に感謝致します.
そして,幾多の困難を共に乗り越えてきた星 北斗氏,天野 賢二氏をはじめ,同期として 励まし合ったDao Thanh Chung氏,中原 洋志氏,瀧本 拓哉氏,望月 剣氏,丹羽 亮太氏,
西 和也氏,堀川 哲郎氏,上田 真央氏,Nguyen Thuy Le氏,Vu Dinh Long氏に感謝と尊敬 の意を表します.
最後に,陰ながら今日まで支えてくれた両親に心から感謝と敬愛の意を表し,謝辞と致 します.
平成23年1月19日 蛭田 慎也
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