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本研究では,モルタル外壁木造住宅を対象とした,外付鋼板耐震補強壁の耐震性能を実大耐震 壁水平耐力試験と有限要素解析の両面から評価した。これにより得られた知見は以下の通りで ある。

1)標準試験体(A1)では,圧縮強度 Fc = 4.0N/mm2のモルタルを用いた場合でも,壁基準耐力 9.61kN/m,壁基準剛性 1648kN/rad/m となり,開発工法は低強度のモルタルに対しても十分な 耐震性能を有することを確認した。また,木架構,モルタル,鋼板それぞれの間での相対変 位を観測した結果,モルタル-鋼板間のずれは木架構-モルタル間,木架構-鋼板間のずれと比 較して小さく,ドリルビスはモルタルの層で大きく変形しており,モルタルと鋼板はほとん ど一体的に挙動することが確認された。

2)コーナービス有り標準試験体(A0)では,コーナービス打設により鋼板の水平耐力への寄与分 が増え,壁基準耐力換算で約 11%耐力の増加が確認された。

3)モルタル無試験体(A4)では,壁基準耐力 3.20kN/m,,壁基準剛性 587kN/rad/m となり,モル タルの劣化や損傷が著しく耐震要素として機能せず,鋼板のみが耐力を負担する場合でも,

一定の耐震性能を有していることを確認した。また,最大耐力が張力場上のビス接合部の鋼 板の端あき破断により決定されたため,ビス接合部の端距離を改良することで,鋼板の耐力 と靱性が向上する可能性を確認した。,

4)小開口付モルタル無試験体(A5)では,小開口(φ150mm)による耐力と剛性への影響は無いこと が確認できた。

5)有限要素解析により標準試験体(A1 モデル)の性能評価を行った。モルタルと鋼板を一体とし た弾性線材と既往柱脚引抜試験●)を元にモデル化したトリリニア弾塑性せん断ばねを用いて 解析モデルを構築した。実験結果と比較すると初期剛性は概ね一致したが,変形角 0.3%以 降では実験より解析結果が高い耐力を示した。また,ビス接合部の耐力を一様に 80%低減さ せた弾塑性せん断ばねを用いて解析を行った結果,初期剛性と最大耐力で実験結果と良好な 近似が得られた。

6)動的陽解法による準静的解析により,モルタル無試験体(A4 モデル)の性能評価を行った。ビ ス接合部の耐力を一様に 40%低減させた弾塑性せん断ばねを用いて解析を行った結果,変形 角 3.7%までの剛性と耐力で良好な近似が得られた。

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7)標準試験体の解析モデル(A1 モデル)を用いて,耐震壁の高さを 3100mm とした場合の影響を 評価した。標準試験体の崩壊形はモルタルと鋼板のロッキング変形によるビス接合部のせん 断降伏であるため,高さの違いによる影響はほとんどないことが確認した。

8)標準試験体の解析モデル(A1 モデル)を用いて,耐震壁の壁幅を 1820mm とした場合の影響を 評価した。壁幅の増大によりモルタル鋼板材のロッキング変形への抵抗力が増大し,壁幅 910mm の場合と比較して,変形角 1.0%時で約 20%耐力が増大することを確認した。

9)モルタル無試験体の解析モデル(A4 モデル)を用いて,開口位置による耐力への影響の検討を 行った。小開口,中央に位置する開口,端部に位置する開口,いずれの場合でも加力方向性 側の上部の開口が最も最大耐力が小さくなることを明らかにした。

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謝辞

本修士論文は,筆者が首都大学東京大学院都市環境科学研究科建築学域博士前期課程在学中 に構造力学講座高木研究室において行った研究をまとめたものです。本研究を遂行し学位論文 をまとめるにあたり,多くのご支援とご指導を賜りました。

本研究に関して終始御指導御鞭撻を頂きました高木次郎准教授に心より感謝いたします。高 木先生には研究内容だけでなく,日々の姿勢や,社会人としての心得など多くのことを御教授頂 きました。ありがとうございました。また,本研究における議論・検討にあたって,御教示なら びに御激励を賜りました遠藤俊貴博士に深謝いたします。

日本鉄板株式会社様には,研究を通して多くの御協力を頂きました。特に営業総括部技術企画 グループ湯本様,船戸様,金杉様,梶本様,長見様には定期的に勉強会の機会を設けていただき,

多くの貴重な御意見を頂きました。心より感謝いたします。

生活共同組合・消費者住宅センター様には,実耐震補強の際に多くの御協力を頂きました。特 に建築事業部藤田様,ハウスアドバイザー谷口様,磯積様には補強工事中に多くの貴重な御意見 を頂きました。

最後になりますが,高木研究室の皆様には,実耐震補強対象建物の実測調査や実験等でご協力 いただきました。また,大津達郎君,堀口泰次郎君,田中里奈さんとは共同で研究を進め,多く の刺激を得ることができました。心より感謝しております。ありがとうございました。

2017 年 2 月 3 日 大向智之

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