行動と精神活動の方向性に基づいた情報倫理教育の枠組みの構築として,現在の情報モラル 教育の分析を行い,人間の行動と精神活動の観点から情報倫理教育の枠組みの構築,検証を行 った。得られた成果は以下のとおりである。
第2章においては,情報教育に関する審議会の答申の中から情報モラルの概念が出来上がる までの過程について論じた。高等学校の教科情報の教科書を対象に教科書分析を行い,実際の 情報モラル教育がどのように行われているか明らかにした。この結果として,情報モラル教育 が児童生徒の理解を促進するために事例を中心として取り上げられているということが分か った。しかし,教員にとっては事例を中心とした内容は,授業を行う際にその事例の説明のみ に終始してしまう可能性があり,教育として身に付けさせるべき考え方を身に付けさせること ができない可能性がある。したがって,情報モラル教育の本質的な考え方について明らかにす る必要性が生じた。
第3章においては,情報モラルの語彙について着目し,道徳,倫理の観点から情報モラル教 育の本質について考察した。道徳,倫理,モラルの概念の包含関係を明らかにすることによっ て,人間の行動と精神活動の観点を得た。人間の行動の観点から人間の行動方向性について提 案し,情報モラルを情報道徳として捉えることができた。また,人間の精神活動の観点から人 間の精神活動方向性について提案し,情報モラルを情報倫理として捉えることができた。これ らの人間の行動と精神活動の観点を組み合わせて情報倫理教育の枠組みを構築した。
第4章では,この枠組みの有用性について検証した。単純機能コンテンツと多機能コンテン ツを題材として,情報倫理教育の枠組みの検証を行うことにより,20 年後や 30 年後の時代 が変わっても,今回提案した人間の行動と精神活動の観点に基づいた情報倫理教育の枠組みを 利用することにより,同一の視点から情報倫理教育を行うことが可能となった。さらに,情報 倫理教育の枠組みを用いて普段から学校教員に利用されている Web コンテンツと教科書を対 象として特徴の分析を行った。結果として,CECでは1場面1活動に区切ることにより学習 者の理解を容易にすることが目的とされており,単純化した事例である基本要素に着目してコ ンテンツが作られているということが分かった。高等学校普通教科情報の教科書においては,
情報利用環境が成熟した「高度情報社会」の段階において,学習者は身の回りにある情報を同 時に扱うことに慣れているため,複合化した事例を用いて学習した方が分かりやすく,将来を 見通して複合化事例を用いたコンテンツとして構成されていることが分かった。このように,
情報倫理教育の枠組みを利用することによって,情報モラル教育コンテンツ構築の考え方を調 べることができるようになった。
本論文では人間の行動と精神活動の方向性に基づいた情報倫理教育の枠組みを構築した。行 動と精神活動の観点に基づいた情報倫理教育の枠組みを利用することにより,同一の視点から 情報倫理教育を行うことが可能となった。今後の研究として,学校教育で利用されている情報 モラル教育コンテンツを情報倫理教育の設定につなげたい。
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